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F
「着きましたよ」
シンにそう言われてジープを降りる。
そのまま彼の後について行くと、山の正体が分かった。
「あっ――」
俺は思わず息を呑んだ。
それは無数の象牙。
大小さまざまな象牙を積み上げたものだったのだ。
俺は慌ててシンを見た。
シンはそこに居合わせた人たちと何やら現地語で話していたが、ひとしきり話し終わると俺のほうを振り向いてこう言った。
「これはすべて密猟者に殺された象たちの牙です。先日この国の政府が押収したものをここに集めてあるのです」
「これが、全部?」
高く塔のように積み上げられた象牙を呆然と見上げる。その膨大な数に俺は言葉を失った。
「実際に密猟されているのはおそらくこの数倍の数でしょう。どんなに厳しくパトロールして密猟者を捕まえても、次の日にはまた新しい密猟者が現れます。我々のしていることは単なる徒労でしかないのかもしれません」
それでも……とシンは言葉をつなぐ。
「我々はこれからも密猟者と戦います。そして、その犯罪の根底になっているものたちとも――」
俺ははっとしてシンを見つめた。
彼は言外にこう言いたいのではないだろうか。
『たとえ密猟しても、それを買うものがいなければ何にもならない。それを欲しがるものがいるからこそ、密猟はなくならないのだ。そして密猟による犠牲は減らないのだ』と。
黙っている俺に、シンは穏やかな顔を向ける。
「これから、ここでこの象牙を焼くのです」
「え?」
「密猟者への見せしめに。そして、象たちへの鎮魂を込めて」
シンの言葉が終わらないうちに、数人の男が象牙の塔にガソリンをまいて勢いよく火を放った。火はあっという間に燃え広がり、象牙の塔を包み込んだ。
ゴウゴウとものすごい音を立てて象牙の塔が燃えている。
ゴォウゴォウゴォウ……。
その音は、まるで慟哭のようだ。
あの物言わぬ動物が、そしてこの大地が、はげしく慟哭している。
「……」
俺はよろよろと象牙の塔に近づいた。
そして夢中でシャッターを切った。
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