[携帯モード] [URL送信]

小話
修道士ガイ ヴァン視点
※酷いパラレルです。性格改変甚だしいです
修道士ガイ(小話)と修道士ガイ続き(拍手ログ)キリリク(公爵)を読まれてないと意味不明だと思われます



神を信じるかと問われれば即座に否と答えるだろう。
仮にも神に仕える身で、それは不遜な考えだと承知はしている。
だが、それ程までに私の育った環境は劣悪なものであった。
乳幼児の死亡率は実に八割にのぼり、女たちは生まれた赤子に乳を差し出すよりも、男相手に股を開く。そんな環境下で育った子どもが成人するのはほんの一握り。
10ガルドで命を奪う者、奪われる者が集う街。その過酷な環境の中で私は生き延びてきた。
生きるためならばどのような事でも手に染めてきた。
その手の才覚には長けていたようで、同じような境遇の孤児を集め、様々な「仕事」をこなしてきた。
だが、厄介なものに目をつけられてしまった私は、生まれ育った街を早急に去れねばならなくなった。
適当に見繕った遺体を焼き、仲間すら欺き、一人街を出た私が偶然たどり着いたのがこの場所であった。

漁業でなんとか成り立っている小さく貧しい町では、仕事などたかがしれている。
早急にこのまちを立ち去ろうとした時に、嵐に遭遇し一晩身を寄せる場所として教会を選んだ。
ただそれだけであった。
司祭のペールギュント様は保守でありながらも革新な考えも取り入れた為、双方からどちらつかずと思われたのか
かなり優秀な方であるのに、このような辺鄙な場所に追いやられる事となった。
嵐で一晩身体を休ませて欲しい、と乞う私に穏やかに微笑み、温かい茶と小さなクッキーを差出してくれた。
ふと見上げた先にあったステンドグラスに描かれた天使の姿に目を奪われる。
金糸に輝き、バラ色の頬にあどけない笑顔。一点の曇りも無い存在。
そのような綺麗なものは私の側には存在しなかった。だからこそ惹きつけられたのかもしれない。
今にして思えば、聖母に目もくれずに、彼に似た天使にだけ心を奪われたのだ。
私の生い立ちに耳を傾けてくれた司祭様はこの地で暮らす事を勧めてくれた。
あの天使と離れたくない私は、少しばかりこの地で身体を休めるのも悪くないと思いそれを了承した。

貧しい土地の中で、受けれいれるだけの孤児などを受け入れているため、教会の暮らし向きはけっして明るくはなかった。
そのような中、司祭様が難しい顔で私に
「お前に世話を頼みたい子がいるのだ」と告げられた。
戦争に巻き込まれ記憶を喪失した子供で、酷く怯えているそうだ。
年の頃の近い私にならば心を開くかも知れぬと思われたようだ。
ガイラルディアという花の名前をもつ少年。
初めて司祭様の部屋で対峙した時の事を今でも鮮明に覚えている。
あのステンドグラスの天使がそのまま具現化して立っていたからだ。
酷く怯えた様子だったが、差し出した手におずおずと触れると、ゆっくりと、そうゆっくりと私に微笑んでみせた。
なんと綺麗な存在なのだろう。
穢れなきその笑顔に、私は強くこの少年を守ってやろうと誓ったのだ。
夜が怖いと怯える彼を抱きしめて眠りについた。
「何があろうともお前を守ってやる」
眠りにつく前に彼に言って聞かせた言葉だ。
そう、こんなにも綺麗なものを汚させはしない。何があろうとも守ってやると誓ったのだ。

教会の寄付だけでは、養育にまで手が回らない事はわかっていた。
彼は年頃の少年からすれば、かなり痩せているし背も低い。栄養が行き届かないせいだ。
だが、陽を受けて輝く金色の髪も、白い肌も、薔薇色の頬と唇も、そのあたりの貴族の子息よりも貴族らしい容姿をしていた。
そのせいで、下心をもった者が司祭様にガイラルディアを養子に、と持ちかけてくる事も絶えはしなかった。
その度に断りを入れていたが、意趣返しで教会の寄付を減らしたため、益々暮らしぶりは困窮していった。
私も秘密裏に仕事を再開する事とした。
そのため司祭様へ幾許かの金銭も渡す事ができた。
その「仕事」の最中に、あの事件は起こったのだ。

彼は無理やり下俗させられたうえ勝手に養子縁組を組まされ、遠い場所へと連れ去られていったのだ。
さすがの司祭様も、王家筋の公爵家相手では彼を守り通すことが適わなかったのだ。
何も言わず拳を握りしめる私に司祭様が穏やかに
「ヴァンデスデルカ、お前の信じた道を歩みなさい」と仰ってくださった。
何があろうとも守ると誓ったのだ。
その足で私はバチカルへと向かった。

******

バチカルに到着してすぐに、ファブレ公爵について調べあげた。
調べれば調べる程に、ガイラルディアを下俗させる程の篤志家とは到底思えぬ男だいう事が判明した。
城のそばの屋敷で、ガイラルディアがどのような辱めをうけているのかと考えるだけで、怒りに目がくらむ。
だが、私は助けねばならぬのだ。浅慮はガイラルディアのためにならぬ。
力をつけねばならない。何があってもだ。
何を犠牲にしても、どのような手段を講じようとも、いくら手を血で汚そうとも、ガイラルディアを守る。
この世界でたった一つの綺麗なものを、私が守るのだ。

そうして緻密にたてた計画は完璧だった。
誤算はただ一つ。目の前に立つ男がガイラルディアに寄せる思い。
戯れなのだろうと、見た目のよい少年を金持ちが遊びで手を付けているだけ、だと見縊っていた。
だが、翡翠の双眸に宿るのは深い執着。
この瞳は何処かでみた覚えのある、と生命を危険に瀕しながら、そのような事を考えていると、久方にみるガイラルディアが真っ青になりながらも公爵にすがりついている。
泣かなくていい。
「約束しただろう、守ってやると」
そう。約束を果たしにきただけなのだ。私の命がつきようとも、お前は哀しまなくて良いのだ。
泣いて懇願するガイラルディアを一瞥すると、血のような赤い髪の男の双眸は益々冷ややかに、視線の刃で私の息の根を止めようとするように、激しい怒りを向けている。
だが、そこに王の妹である奥方の仲裁がはいった。
一度は剣を収めた公爵であったが、私の命を奪うことを諦めるはずもなく、わざと隙を作り逃亡を教唆する。
公爵のガイラルディアに向ける感情を思えば、当然の事であった。
追っ手がかかったが、なんとかそれを振り切り逃げ延びる事がかなった。
公爵の気性を考えると、ガイラルディアを連れ去ってもこのように追っ手を差し向けてくるだろう。
あの豪奢な檻から彼を助け出し、追手に怯えることなく幸せに暮らせるようにしなければならない。
決意を新たに私は動く。
ガイラルディアを守るために。


*********


白昼堂々、私は公爵家に押し入り、譜歌をうたい皆を眠りへと誘う。
驚きに目を見開き、それからゆっくりを表情を緩ませて幸せそうに笑顔をむけてくる。
駆け寄り、二年前より青年らしくなった身体を抱きしめる。
腕に、守るべきものが戻ってきた。
あのぬくもりをもう一度手に入れた瞬間、私はようやく己の気持ちに気づく。

自分に言い聞かせるように、何度も何度も口にした。
お前を守る、と。
綺麗なものを守る、そう自分に言い聞かせ。そう自分に大義名分を与えて。
ああ、違う。手の中に戻ってきたぬくもりを一瞬足りとも離したくはない。
汚れきった身体を持ちながら、彼を汚すとわかっていながら、それを誰よりも忌避していたというのに。
あの赤い髪の男と対峙した時に、ガイラルディアを深く執着する双眸に覚えがあると思ったはずだ。
あれは鏡にうつる私の双眸だ。
誰にも触れさせず、ずっとこのまま腕の中に閉じ込めておきたい、と願う心のまま。
「目を抉れ」と命じたあの男もそれに気づいていたのだろう。
「生きて…いて……よか…っ」
震える語尾は最後は嗚咽へと変わる。
「守る、と言ったはずだ」
身の内にすまう獣性を押し殺し、優しい兄の顔をしてなだめる。


フリリクに続く予定です


これは修道士ガイの拍手文を書いた後におーとりさんに捧げたものです。
あまりのひどさに絶句しましたが…ちょっとだけ手直したのですが。
ちょっとレベルじゃ足りてないくらいの文章のひどさは自覚しています。
がーっと萌えが先走ってしまったので、本当にお見苦しい限りで…。
おーとりさんからいただたフリリクで続きを書く予定です。頑張ります


小話2TOPに戻る
TOPに戻る



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!