小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結 45 「…!」 「うわああぁぁー、ごめんなさいっ!」 紫陽が主夜の指をそっとつかんだ。 ふわっと温かい気が手に流れる。 主夜の指の傷が消えるのと同時に、紫陽の指に同じ形の傷が現れ、すぐに消える。 「大丈夫か?」 主夜が紫陽の顔をのぞき込んだ。 「?」 「具合が悪くならないか?」 陰陽の術者を癒した後の紫陽が倒れたことは、記憶に新しい。 「ああ、あの時は、僕が思っていたよりずっと深い傷だったので、具合が悪くなってしまったんです。いつもは、何でもないんです」 「だが、お前も痛いだろう」 主夜が紫陽の手をつかみ、消えてしまった傷をいたわるように口に含もうとすると、 パシッ! 恐ろしい速さでウサギが跳んできて、主夜の手を小さな足で払いのけ、また紫陽の頭に戻る。 主夜はムッとしてウサギを睨みつけた。 ウサギも負けずに、オニキスの瞳で主夜を見返す。 「あああ〜…。ぷーちゃん、やめてください〜」 紫陽が情けない声を出す。 紫陽の話を要約すると、 昨夜、紫陽の胸からポンと出てきたウサギは、まったく紫陽の言うことを聞かず、ウサギと呼ぶと怒って暴れ出したのだそうだ。 何度頼んでも紫陽の胸に戻ることはせず、昨夜は紫陽の布団の中で一緒に眠ったのだという。 「とても暖かかったです」 紫陽は楽しそうに笑った。 プープーと鳴くので、ためしにぷーちゃんと呼ぶと、ウサギは嬉しそうにしたのだそうだ。 今朝、目を覚ますとやはりウサギは隣に寝ていた。 それどころか、紫陽の頭の上に乗ったまま、どこへでもついてくるという。 「僕は、朝にシャワーを浴びるんですけど…」 そこへもついてきて、一緒にシャワーを浴び、おまけにドライヤーで毛を乾かせと、どうやってだか知らないが要求したそうだ。 主夜は思わずウサギを睨みつけた。 俺はまだ紫陽とシャワーを浴びたことがないのに、なぜお前が…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |