小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
46
心なしか、ウサギの鼻が得意げにひくひくと動く。
「こいつ…」
主夜が憎々しげにつぶやいたとき、紫陽の腹が盛大な音をたてた。
見下ろすと、真っ赤になって俯いている。
「腹が減っているのか?」
「朝ごはんをぷーちゃんに取られてしまったので…」
「お前は朝食を取り返しもせず、ぼーっと見ていたのか」
「あの…ぷーちゃんが食べているとき、ものすごく怖いんです。目がキッと吊り上がって…」
紫陽が自分の目じりを指で上げて見せる。
「しかも、すごく早いんです」
あ然として朝食を取られるままになっている紫陽の姿が目に浮かび、笑いそうになった。
「わかった。台所に行って、麻に食べるものを出してもらえ。その…それは置いていったほうがいい」
「ぷー!!」
ウサギの口から激しい鳴き声が出た。
それ、と呼ばれたのが気に入らないらしい。
「…ぷーとやら、ここへ残ってくれ。話がある」
言葉が通じるのか?と思いながら直接話しかけると、ぷーが少し考える仕草をした後に、紫陽の頭からテーブルへと飛び降りた。
「ぷーちゃん。主夜さまと仲良くしてね。解った?」
紫陽がそう言うと、ぷーは気に入らなそうにふいと横を向く。
「大丈夫だ、心配するな。早く行って、朝食を摂ってくるといい」
「はい」
紫陽が書庫から出て行ってしまうと、主夜はぷーの正面に座りしばらく考え込んだ。
ぷーはじっと主夜を見つめている。
前に一度、気で動物を作り出し、それで下妖と戦っている者を見たことがある。
だが、ぷーが紫陽の気でできたものだとしたら、言うことを聞かないというのはあり得ない。
気でできたものに自分の意思があるなど、論外だ。
そして、体温。
気でできたものが温かいわけがない。
加えて食事だ。
これも、気でできたものが食べるわけがない。
「ぷーとやら、お前、龍だな?」
呼びかけられて、ぷーが少し首を傾げた。
「500年前に、鬼界の玉の中に棲む鬼とともに妖と戦った、珠の中に棲む龍。そうだろう?」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!