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小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
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「なに、主夜ってばやっと自分の気持ちに気がついたんだ。どうりで、最近様子が変だと思ったよ」

黎は笑いを収めて、真面目な顔で主夜の瞳をのぞき込んだ。

「恋愛って、思ってた以上に難しいものだったでしょ」
「ああ、難しい。片方が思っているだけではどうにもならない」

「そうだよねえ。でも、僕だってここに漕ぎつけるまでに400年かかったんだよ。主夜なんかまだ半年にもならないじゃないか。何年かかっても、押して押して紫陽ちゃんをモノにするんだ。がんばれ!」

「黎が俺を励ますことなど、この世の終わりにもないと思っていたが…。ありがとう」

主夜の微笑みに、黎は眩しそうに目を細めた。



〜〜〜〜〜〜〜



「主夜さまぁ…」
朝、紫陽がいつも通りの時間に書庫にやってきて、困った顔で主夜を見上げた。

礼儀正しい紫陽にしては珍しく、朝の挨拶も忘れるくらい困っているらしい。

「どうした」

走ってきたのだろうか、紫陽の頬がバラ色に上気している。

その頬にキスしようと体を屈めて、紫陽が来ているトレーナーのフードの中に何か入っているのに気付く。

よく見ると、手のひらに乗ってしまうほどの小さなウサギだ。

真っ白いふわふわの毛。
ピンと立った大きな耳。
オニキスのように光っている黒い瞳。

頭の上、耳と耳の間に、なぜかピンク色の小花を乗せている。

「?」
主夜が見つめていると、ウサギはぴょんと紫陽の頭の上に乗った。

「あの…」
紫陽がウサギを頭の上に乗せたまま話しだした。

「昨夜、教えていただいた術の復讐をしていたら…」

紫陽はあの気を失ったキス以来、何かをつかんだようで次々と術をマスターしている。

神を飛ばすことも結界を張ることもできるようになった。

「胸のところから、ぴょんって出てきて、戻らなくなってしまったんです…」

「このウサギがか?」

主夜が手を伸ばしてウサギに触ろうとするのと、
紫陽の

「あっ!ウサギって言っちゃ駄目っ!」
という言葉と、

かぷっと音がして主夜の指に痛みが走るのとがほぼ同じだった。

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あきゅろす。
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