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火結(禮晶)完
拾陸
聖が暗い気持ちのまま小屋に戻ると、火結は囲炉裏の中へ粗朶を投げ込みながら何かの汁物を作っている所だった。
風味付けに酒でも使ったのか、少し甘ったるい匂いがする。
第一声を何にするか散々迷った挙句、
「………気分悪くて寝ているんじゃなかったのか」
「別に何していようが俺の勝手だろう。」
返す言葉も無く、聖は汁物が入った鍋を覗きこんだ。
どうやら、鶏肉を酒で煮込んでいるらしい。
「……さっき山鳥が仕掛けておいた罠に掛っていたんだ。」
「あ、鶏じゃないのか。」
「こんな山奥に鶏がいるか。第一、毎朝うるさくて敵わん。」
狐とかの番をするのも面倒臭い…などとぶつくさ言いつつ火結は鍋を火から下ろした。出来上がったらしい。
器を取りに立った聖を見て火結は少し目を丸くした。
「気が利く様になったな。」
「ふん、人間は学習する生き物だからな。」
「……まぁそうだが、汁物を注ぐのに平皿持って来る辺りはまだまだ学習とやらが足りていない証拠だろう。」
「………。」
頭を抱える聖に火結はやれやれ、と椀を二つ持って来た。
冬の訪れが近付いてめっきり寒くなって来た今日この頃に、温かな鳥肉の汁はとても滋味深い代物である。
しばらく火結も聖も黙々と食べる事に集中していたのだがやがて火結の方からぽつり、と
「……過去に何があったか、師匠達から聞いて来たのか?」
「……………うん。」
「そうか。」
黙り込んでしまった火結の瞳に囲炉裏の火が映っている。
元々紅い瞳に、更に囲炉裏の火の朱色が映えて綺麗だなと聖は思ったのだが、今それを口に出したらもっと気まずい雰囲気になりかねない気がしたので言えなかった。
「あのさ、火結。」
「何だ?」
「…………。さっきは考えなしに聞いちゃって、ごめん。」
本当に言いたかった事とは少しずれていたが、取り敢えず聖は発端となってしまった事について謝った。


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あきゅろす。
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