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紅い彼。





翼に保健室まで連れて来てもらい、



「迷子のおとどけーっ」


「おう天羽か、迷子って光?」


「……」


「また迷子になってたのか。昔っからおまえの方向音痴には困ったもんだ」


「光のほーこーおんちー!ぬははっ」


「うるさーいっ初めてなんだからしかたないでしょっ」



「おまえら…なんか似てるな。お子様なところが」



「琥太にぃのばかーっ」



「星月先生のだらだらのじじーっ」


「あーうるさいうるさい。悪かった悪かった。これから、俺は仕事だ。帰んなさい。」



「ぬーん。まぁ俺は用事あるからっ!じゃーぬーん!!」



「翼ありがとねーっ」



「ぬははっどーいたしましてっ」

「光、おまえもまた迷子になると厄介だから今日はおとなしく寮に帰んなさい。」


「厄介ってなんだよー…仕方ない!帰ってあげるからちゃんと仕事するんだよ琥太にぃ!」


「はいはい」



と、いうわけでIN自室。

暇。

寝転がっても眠くないし、
宿題も与えられてないからやることもない。



ふと部屋の隅に目をやると立て掛けてある深緑のアコースティックギター。



「………あ、チューニングあわせなきゃか」



久しぶりに引いてみたがチューニングがあってなく不快音しか出てこなかった。



チューニングを合わせもう一度。


-----♪



いつかの自分がいつかの友達のために作曲したメロディー。

聞かせてあげることはできなかった名もない曲。



次第に涙が込み上げて来るのがわかり弦を弾くのをやめた。



「あああっダメダメっ!!中にいるからセンチメンタルになるんだ!!やっぱり外いこっ」



ギターをハードケースにしまい、部屋をとびたした。



「…もうあの曲はひかない…」



ドンっっ!!



寮を出てすぐのところで誰かと勢いよくぶつかった。



「ぐぇっ!!あたたたっ」


豪快にしりもちをついたあたしにぶつかった相手が手をさしのべてきた。



「ごめん…怪我、なかった??」



紅い髪と瞳、どこか紳士的な雰囲気の男の子だった。



「あ、大丈夫デス。……って、こっちこそごめんなさいっっ」


「いや、僕も大丈夫」



とつぶやくと立ち上がらせてくれた。



「……月子じゃなかった………」


ボソッとつぶやいた



「へ?」


「月子だと思ったのにな………」



相当残念だったようで、顔は暗い。急いで走って来たようで汗をかいていた。



「…………すみません。」


「なんで君が謝るの?」


「だって…とっても残念そうだったから」


「ああ…僕の勘違いだから、気を悪くしたなら謝るよ。」


「いや、大丈夫デス。」


「…………さっきの音色。」


「??」


「ギターの音色は君が??」


「……まぁそうだけど」


「あの音色はきらいじゃないよ。何か思い入れがあるのか…優しく切なく、でも透き通っていたんだ。」


「………」


「できたら、また聞かせてよね!きらいじゃないなんて言ったけど好きだよ僕、あの曲」


「………はぁ」



じゃ、といって紅い彼は走りさって行った。


紅い彼が沈みかけた夕日にとけてしまいそうなくらい空は紅かった。





い彼。
(不思議な人だ…)
 
 
 
 



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