姫と執事の話
3
寝返りをうつたびにする、衣ずれの音が妙気になって、書類の最後の一枚は、思ったよりも時間がかかった。
だがそれも、時間稼ぎの役にはたたない。
一度、音を発てないように伸びをしてから、後ろを振り返る。
リーシャは、すやすやと寝息をたてていて、それに合わせて、布団が上下している。
静か過ぎるこの空間では、その微かな寝息さえも聞こえてきそうだった。
ほんの少し出てしまった肩に布団を掛け直してやりながら、ため息をつく。
「姫。俺のこと、信用しすぎですよ」
この状況に喜んでいいのか、かなしんでいいのか、それすらも、よく分からなかった。
ただ、目の前の寝顔が幸せそうなのを見ると、ひどく、安心感を覚えた。
明日は完全に寝不足だな、と苦笑しながら、リーシャの髪を微かに撫でて、本を取るために背を向けた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!