Novelpage top
C'est la vie
「ヒカル!!!」
名を呼ぶハルキの声。





ハルキ達が住んでいる町に軍隊が押し寄せてきた。
この町では、政府への反対が多くあり、政府への無駄な対抗を防ぐため、数週間に1回、政府軍が町を監視し、服従しているかどうかを確認する日がある。



ある日、俺はこの町へきて、絵を描こうと思った。
その時。

…ドドドドドドド。

馬の跫が聞こえてきた。
政府軍の馬がこちらに来たのだ。

「…!!」

隣町からきた、何も知らないユノが向かい先の家に自分で作ったお菓子を送るため、道を横切ろうとしていた。

「ユノ!!!」

バンッ!
一緒に住んでいたヒカルがユノを庇い、ヒカルが政府軍の馬にひかれた。
そのときの俺もユノのように知らなかったため、何もしてあげることができなかった。


「ヒカル!!!!ヒカル!!」
ヒカルと同居しているハルキが必死にヒカルを揺さぶりながらヒカルの名を呼び続ける。

「……そうだ!しっかりしろ!!!」
やっと我に返ることができた俺も、ハルキと同じように叫ぶ。

ふと、ヒカルの瞳がうっすらと開き、
「……ユノ……は…無事……か……?」
と掠れた声で言った。
「……大丈夫だぞ」
とハルキは口をする。

すると、ヒカルはよかったと微笑み、さらに
「僕……の故…郷……桜が……綺…麗な……んだ」
「まだ………見れる……かな………?」
と言った。

「…大丈夫だ!!!まだ見れる!!まだ見れるぞ!!」
ヒカルの故郷へ行ったことがあるハルキはヒカルを安心させるため、ヒカルに「大丈夫」と掛け続けた。


「良か……っ…た…………」


という言葉を最後にヒカルは息を引きとった。









「……ちくしょう!!!!ちくしょう!!!」
ハルキがこういう言葉を紡ぐのも無理はない。


何せ政府への反対が多い地域だ。
簡単に受け入れてくれるものではない。
そして、この世は『花は桜木人は武士』の世界だ。

位の低い者が高い政府に立ち向かうこともできない。


何も知らなかった俺でも何となくそのことは分かったが、ヒカルを抱きしめ、後悔の気持ちを露にするハルキを誰も止めることはできなかった。















C'est la vie
いつかその世界が変わってほしいと密かに願う。









C'est la vie
title:褥に散る華
配布元:箱庭
管理者:馨様
http://nanos.jp/desertflower/

[*new][old#]

5/10ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!