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覚醒、そこには何もなかった【ダンウォ・キョウアラ・!!】
発端は数時間前に遡る。



「俺、ちょっと行ってくるぜ」
「ん?ああ!行ってらっしゃい!!」

俺が少しアラタから目を離した隙だった。



「〜♪〜♪」
俺は早くキョウジが帰ってくることを願いながら鼻歌を歌っていた。

その時だった。



「…!!んぐっ!!」
何者かに口をハンカチで塞がれる。
そのハンカチからは薬物の匂いが漂った。
「………んっ…」
意識が遠のいて逝く。

「……う」
やがて俺は意識を手放した。






次に目を醒ましたときには外に佇んでいた。
胸に違和感を感じる。
見てみると何か装置が付けられていた。


脳内には常に「眼前の人間は排除せよ」という指令が駆け巡る。
俺はその指令に逆らう力はなかった。
その力は排除する方向に使われたからだ。



「……ラ…タ!!アラタ!!!」
誰か自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。

その声には見覚えがあったが、思い出すことはできない。


「アラタ!!俺だ!!!キョウジだ!!」
ああ、そんな奴いたな。

「キョ…ウジ?」
「そうだ、キョウジだ」

「早く……戻ろう、ここにいると危ない」
手をさしのべられる。
しかし俺の手はその手を振り払う。

「…アラタ!?」
「……戻りはしない」
「……なぜならお前を排除するからだ」
「なぜだ!!!どうしたんだお前は!!!」
「…別にどうもしないが」
「そんな訳がない!!お前は騙されてるんだ!!!」
「……騙されてなどいない」

「アラタ…胸の装置をはずすぞ」



キョウジが近付く。


排除するんだ。
キョウジを。


俺の身体はその意思を従事した。
キョウジを突き飛ばし、ポケットに忍ばしていたランスを引き伸ばしてキョウジの身体を突く。

「!!うわあぁ!!」
相手は態勢を崩す。
しかし倒れはしなかった。


「……なぜだ…」
「……あ…らた…」
キョウジにその名を呼んで欲しくなかった。
2度と呼ばなくなるようにランスやナギナタで容赦なくキョウジの身体を切り刻む。


「…煩い煩い煩い!!!黙れ!!!!」
「…ぐ!…あ!…う”」

切り刻んでも切り刻んでも切り刻んでも相手は崩れない。

何故だ…何故だ…何故だ…何故だ…何故だ…。




困惑とキョウジと指令が交ざり合っていく。
何をしたらいいかわからなくなってきた。

「…何故だ…何故倒れない!?」
「………んぐっ!…あ”!!」
「何故だ!!!!」
「………」


がしっ
キョウジを切り刻んでいた右腕を掴まれる。

それも強く。

「…!?離せ!!!!離せぇ!!!!」
「…離さねぇよ」

「…お前は俺が助ける」

キョウジの手が胸に伸びる。
自分の全てを司っていた装置を外しにかかる。

「うわあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!!!!」
身体や脳内までもが電気を発し、激痛が襲い掛かる。


「…アラタ…」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

頑丈な造りをしていたが、どこにそんな力があったのだろうか。
キョウジに装置を外された。


「……あ……あぁ……」
装置が外され、全身の力を抜かれた俺は意識を手放した。
「……アラタ…戻ってよかった」
そんな俺の頭をキョウジは撫でた。












覚醒、そこには何もなかった
title:催眠状態10題
配布元:神威(kamuy)
管理者:キョーカ様
http://alkanost.web.fc2.com/odai.html

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あきゅろす。
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