夕闇に包まれようとしている池袋。いつもより人が少ないよりな気がする……。気のせいかな?
街をぶらぶら歩いていると、あるものが目に留まった。細い路地に浮かぶ、見覚えのある人影。
「あれは……」
平和島……静雄。
田中トムが見当たらないところをみると、仕事帰りだろうか?
それよりも驚いたのは、平和島静雄の前に立つ女の存在だった。……まさか、彼女……とか?
どちらも私の視線には気付いていない。……修羅場?ちょっと面白そうなので、遠目から観察することにした。
それにしてもあの女の人、随分目が赤いなぁ……。カラコンかな?
二人は二、三言交わすと、細い路地の奥へと入って行った。
意外だなぁ、と思いつつ死角に隠れる。二人の会話がかろうじて聞こえた。
「久しぶりね……平和島静雄」
「? 久しぶり?初めてだろ?」
「あら、覚えてないの?」
クスクスと可笑しそうに笑う女。どこか不気味な雰囲気を漂わせる。女の態度に平和島静雄はイライラしているようだ。遠くから見てもわかる。
「何言ってんだ?さっきの事もそうだけどよぉ……人違いじゃねぇか?」
「フフッ……貴方の名前を呼んだ時点で人違いじゃないでしょ?」
「…………」
「単刀直入に言うわね。『母』さんを待たせるわけにはいかないし」
「?」
女の右腕がゆっくりと上がっていく。その手には、カッターナイフが握られていた。
「!!? 手前……」
平和島静雄は苦い顔をした。女は相変わらず微笑んでいる。
「さぁ……貴方の体に『罪歌』を植え付けてあげる」
……これって、修羅場だよね?
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