セルティさんに連絡を入れてから10分。遠くで馬の嘶きが聞こえた。隣にいる竜ヶ峰君にも聞こえたらしく、顔を合わせるとホッとしたように微笑んだ。
しばらくすると、タイヤとアスファルトの擦れる音がした。バイクの音が全くしなかったから、セルティさんかな。
隠れていた物陰からこっそり外の様子を見てみた。するとそこには予想通り、セルティさんがいた。
……よかった。私は安堵して、竜ヶ峰君にセルティさんが来た事を伝えようとした。だけど……
「あら……?あなたは……」
あの女の人が、来てしまった。……どうしよう。
一応、セルティさんが来た事を竜ヶ峰君に話した。あの女の人が来てしまった事も。
「とりあえず、様子を見てみよう」
「はい」
物陰から、セルティさんと女の人の様子を観察した。その間も、罪歌は人への愛を囁き続けていた。けれど、いつもより大人しめだった。
――愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
――でも彼女は何者?愛したいけど愛せない。もう随分前に愛したのかしら?
――でも愛したなら覚えているはず。だって私が愛した人間の事を忘れるはずないもの。
――彼女は何者?彼女は私の『子』?彼女は私の『孫』?彼女は?彼女は彼女は彼女は彼女は
――斬って。斬れば早いわ。斬りましょう。そうよ斬ればいいのよ!さあ彼女を愛しましょう?
――ついでに隣の子も斬りましょう?そうよ、それがいいわ!愛しましょう彼女も隣の子もみんなみんなみんな愛しましょう!
「!!!」
沸き上がる罪歌の言葉を、額縁の外へと追いやる。……飲み込まれちゃいけない。
その時、女の人の声が私の耳に届いた。
「貴方が噂の黒バイクなのね。『母』さんや『姉妹』達から聞いているわ」
……『母』。罪歌……なの?
でも、あの時ちゃんと、先輩の罪歌は私が支配したはず……。
「貴方は化け物だって。そして、私――いいえ、私達 『罪歌』 の敵である、ってね」
……えっ……!!?どういう、事……なの?
罪歌に問い掛けてみたけど、返事がなかった。
じゃあ、あれは一体、何?罪歌も知らない『罪歌』……なの?
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