EternalKnight
<休日>
<DREAM>
「ねぇねぇ、どうして僕の名前は翼って言うの?」
小学生か何かの授業で自分の名前は由来は何か?
それを調べてくる宿題が出て、母さんに聞いたことがあった……
「どうしたの? 急にそんな事聞くなんて」
母さんだ――
最近写真も見てなかったのに顔がはっきりとしている。
「うん、学校で先生が聞いて来いって」
「そう、宿題なのね」
幼い俺は大きくうなずく。
「翼って名前を決めたのはお母さんなのよ?」
「そうなの?」
母さんは瞳をゆっくりと閉じる――
昔を思い出しながら話すんだろうか?
「そう、あのね……お兄ちゃんの名前を決めたのはお父さんなのよ」
「ふーん、でもソレって僕の名前に関係あるの?」
「まぁ、あんまり無いけど。それで次に生まれてきた子には私が名前を付けていい?って聞いたらお父さんはいいぞって言ってくれたの」
「それでお母さんは貴方に翼って付けたのよ?」
それは由来じゃないんじゃ……
「――それでね、お兄ちゃんはお父さんの会社を継ぐ、だからお父さんから文字をもらって、今の名前になったの」
「僕の名前の由来は?」
「話はここからよ? お兄ちゃんは会社を継ぐ、それは幸せと言えば幸せだけど、縛られた生き方をするって事でもあるの」
「そうなの?」
「そうなのよ、で……翼には別の幸せを見つけた欲しい、お金とかじゃなくてね」
「――どう言う事?」
「あなたには自由に幸せを探す生き方をして欲しいのよ、だから遠くまで一人で飛び出せるように翼って付けたのよ?」
そうだったっけ……最近ずっと忘れてたな――
「遠くまで一人で飛び出せるように……翼?」
「そうよ、いい名前でしょ?」
「うん!」
そこで意識が消えかけてきた――
目覚めが近いって事か……
そうして俺の意識は光の中に溶け込んでいった――

2/11(金)建国記念の日
<SCENE005>――朝
――目が覚めた、視線の先はいつもの見馴れた天井。
それはそうか、自分の部屋で寝たんだし。
それにしても……懐かしい夢だったな。
母さんも出て来たし……っと物思いに耽ってる場合じゃない。
「さて、今は何時だ?」
誰が居る訳でもないのに、そんな事を言いながら時計を見る。
時間は6時30分……いつもと同じ時間だ。
「休みぐらい……もっと寝るべきかな?」
もはや体がその時間に強制的に起きる様になっている。
「なれって奴もどうかと思うな――」
さて、かなり早いけど準備でもするかな。
今日は制服ではなく私服を着る、まぁ休みだから当然か……
適当にクローゼットから服をチョイスして、それに着替える。
着替え終わった所でふと、疑問が浮かんだ。
そういえば今日はどこに行くんだろうか?
「ソレによって持っていく金額が変わってくるな……」
まぁ、適当に3000円程持って行けば大丈夫か……
さてと、軽く朝飯でも食うかな?
俺はリビング移動して、早速パンをトースターに入れる。
続けてテレビの電源を付ける――
見るのは朝のニュース番組だ。
さて、コーヒーを入れなきゃ……
朝はニュースを見ながらトーストとコーヒー。
ここ三年間ほぼ毎日そうだった。
もはや朝起きると無意識でも準備できる。
そんな事を考えながらニュース番組をボーっと見ていた。
『――地方では月曜日には雪が降りそうです』
月曜は雪……か。どうせなら積もって休校になればなぁ……
まぁ、もう二月だしここじゃ積もらないか――
[チンッ!]
音と共にセットしていたトーストが飛び出す。
案外時間ってすぐ過ぎるもんだなぁ――
そんな事を考えながらカップを片手にトーストを口にした。

<SCENE006>――朝
で、今は集合場所にいる訳ですが――
「どうして俺達しかいないんだ?」
「私に聞かれても困りますけど――」
「だよなぁ……」
俺のケータイによると現在時刻は9時28分。
30分遅刻って……どういうつもりだろうか?
さっきから何度もケータイへ電話をかけているが、まったく出る気配が無い。
寝坊……だろうか?
それにしても……なんだかちょっと気まずい。
いや、俺は何もしてないけど――
「おーい、翼ぁ〜、茜ちゃ〜ん♪」
そこでやっと叶の声が聞こえてきた。
これで居づらさは解消される……よかった。
「遅いぞ……叶」
「ごめんごめん、寝坊しちゃって――」
やっぱり予想通りだった――
しかし、自分から誘っといて寝坊するってどうなんだ……ホント。
「あれ、祐太来てないの?」
「あぁ、まだ来てない。大方お前と同じ寝坊だと思うけど……」
「どうする? 来るまで待つの?」
「さぁそれはお前の決めることだ……所で今日ってどこに行くんだ?」
「――えっと、どこに行こう?」
黙って俺は首を横に振る。人に聞くなよ――
「茜ちゃん、行きたい所ってなにかある?」
「えっと、私この町に来たばっかりだから……それにあんまり遊んだりしないし――」
あんまり遊んだ事が無い? 高校生が?
――何か理由でもあるんだろうか?
「うーん、困ったわね……」
まぁ深く探ることでもないか――
「どうするんだよ……自分から誘ったんなら少しぐらい考えとけよなぁ」
「ソレより翼、ちょっと寒くない?」
「確かに、ちょっと寒いな……」
「とりあえず、祐太が来るまで春音(ハルネ)にでも行かない?」
「そうだな……寒さを凌ぐのにちょうどいいだろうし――」
「えっと、ハルネって何?」
時乃さんが不思議そうに聞いてくる――
「――あぁ、喫茶店の名前。俺の知り合いが経営しててさ」
「それで、いつもたまり場にしてる所よ。ここから遠くないし、祐太もメールを送ればそっちに直接来ると思うわ」
「じゃあ、そうと決まれば早速行こうか」
俺は一歩踏み出す。
「そうね、行きましょ。ほらほら茜ちゃんも早く来て!」
そう言って俺達は春音に向かっった――

<SCENE007>――朝
俺は店のドアを開ける――
[カランカラン]
「いらっしゃいませぇ……って、なんだ翼と叶じゃない」
店のウエイトレス……冬音さんの声だ。
「どうも、じゃまさせてもらいます」
「まぁ、注文してくれるならお客様だから……所で翼、後ろの子は誰?」
「始めまして、時乃 茜といいます」
時乃さんがペコリとお辞儀する。
「あ、私は三瀬……じゃなかった、九門 冬音よ」
「姉さん、立ち話してないで早く席まで連れて行って上げたら?」
そこで店の奥からもう一人のウエイトレス……琴未さんが出てきた。
「そうね、まぁ席はいつもの所でいいわね?」
「はい」
――あぁ時乃さんが何か言いたそうに固まっている。
それはそうか、同じ店に同じ顔の人がいれば驚きもするか。
「うーん、やっぱり驚いてるわねぇ……」
「まぁ、この店に来た人はほとんど驚いてますし……」
「そうよねぇ……っと、茜ちゃん、こっちは私の双子の妹の琴未」
「三瀬 琴未よ。よろしくね、茜さん?」
「えっと……苗字が違うのに双子なんですか?」
「それは私が――「もう結婚してるからな」
ここで店の奥から春樹さんも出てきた。
まぁ、まだ客も来てないし、盛り上がっているからあの人が出てくる事は分かってたけど――
「俺とな――っと、始めまして時乃さん、俺は九門 春樹だ」
「ここの店長だな、所で……春樹さん最近どうです?」
「あぁ……厳しいな、この歳で店持つのは早かったかもしれないと……後悔している所だ」
「っと、まぁそう言う訳だから。たくさん注文してくれればうれしい限りね」
「善処します」
「まぁ、注文が決まったら呼んでくれ」
そう言って春樹さんと琴未さんは店の奥に消えていった。
「あれ、冬音さんは戻らないんですか?」
「まぁ、別にやる事ないしね……他の客もいないし――」
……まぁ時間が時間だし。客が居ないのはしょうがないんだろう。
そんな感じで祐太が来るまで待つ事にした――

<Interlude-祐太->――昼
全力疾走……今の僕の状態はまさしくソレだった。
集合時間が9時なのに起きたら11時20分頃。
大遅刻だなぁ……いや、昨日早く寝なかった僕が悪いんだけど。
兎に角、翼達は春音で待ってるらしいので急がなければ――
で、家から春音までの道を全力疾走する。まぁ部活やってないから遅いんだけど。
そんな事を考えながら走っていると――
[ドン]
何かにぶつかった――
「おい、どこに目つけてんだテメェ?」
まずった……外見が見るからに不良って人達にぶつかってしまった。
「すいません、急いでたんです」
「あぁ? テメェの事なんて知るかよ。ちょっと面かせや」
そう言って不良に連れられて人気の無いところに――
あぁ、ついてない。遅刻タイムがさらに伸びてしまう。
しかも三対一だ……
だけど、ひたすら平謝りしてなくちゃ……さらにひどい目に――
「本当にすいませんでした、完全に僕の不注意です」
「それで?」
不良の一人がずいっと迫ってくる。
「――はい?」
もう一人も同じく迫ってくる。
「いくら出すんだ?」
「いや、今は手持ちがほとんど無くて……」
「――財布を見せてみな」
後ろに居た軽そうな外見の男が明るく言い放つ。
仕方ないか……後で警察にでも届出を出せば大丈夫だろう。
「分かりました」
そう言って財布を取り出して、片方の不良に渡す。
中身は確か……1500円程だったかな。
たいした額じゃなくてよかった――
「ちっ、たった1500ちょっとか」
「けっ……しけてやがるな――」
不良が唾を吐きながら言い捨てた。
まぁ、これで開放されるなら……マシな方だろ。
どうせ警察に届出を出すんだし。
「それじゃあ、僕はこれで――」
そう言ってその場を背にする。
ふぅ、やっと開放され――
「――ちょっと待ちなよ、誰が帰っていいって言った?」
「――はい?」
振り向いた瞬間――
[ドスンッ!]
僕の体は宙に浮いた――

<SCENE008>――昼
……祐太遅っ!!
ケータイを見ると……時間は11時32分。
いくらなんでも寝坊どころじゃないだろ……
先程から店のドアが開くたび、祐太が来たかと思い視線を向けていた――
「遅いね……祐太」
「もう待ってるのもなんだし、三人でどこか行くか?」
「うーん、今日はこのままここで話しとくのもありかな……」
それはさすがに……
「私は別にいいですけど――」
あぁ、そう言う事を言うとマジでこのままここに居る事になるって……
「ここはいくら居てくれてもいいよ? 注文してくれるなら」
「――所で冬音さん、ここで話してて良いんですか?」
昼時なので、俺達意外にもお客は入っている。
「うーん、まぁいいんじゃないかな?」
そんな物なんだろうか?
[カランカラン]
店のドアが開く――
瞬間、祐太じゃ無いと分かりながらも俺達全員の視線がドアに向かう――
視線の先に居たのは……聖五さんだった。
「おーっす」
軽く手を上げながら聖五さんが近づいてくる。
「あら聖五、今日は何か用事?」
「いや、暇つぶしだ。家に居ると姉貴が煩わしくてな……」
「相変わらずだね、西野先生は……」
「まぁな……って、そっちの子は?」
「初めまして、時乃 茜です」
「茜さんだね? 俺は西野 聖五、よろしく」
そう言って二人は互いに軽く会釈した。
聖五さんが来たからしばらく話のネタも尽きないだろう。
ソレにしたって……祐太遅すぎだろ、電話しても出ないし――

<Interlude-祐太->――昼
「なっ……」
宙に殴り飛ばされ……背中を強打する。
壁にぶつかった……のか?
激痛で意識が朦朧とする――
「まさか……――で帰れ――思って――?」
よく聞き取れないけど、この冷たい口調……金巻き上げるとき後ろに居た奴だ。
「ちょっと……こ――不味い――じゃねぇの八神?」
「あぁ? 俺――から――かよ――え?」
「いや、そう―――けじゃ……」
マズイ……意識が……保てないっぽい――
「な―――ってろよ!」
そうして、男の蹴りが迫る――
死ぬかも知れないなぁ……僕。
そこで、意識が途絶えた――

<Interlude-???->――昼
[ドスン]
何の音だ?
町を散歩していると、何かの物音が聞こえた気がした。
「――か……――で帰れると思って――?」
声?
なんか気になるな……ちょっと見に行こうか――
俺は音のするほうに向かって人気の無い場所に入っていく。
その先で見たのは……
男三人と、倒れている少年。
「なら黙ってろよ!」
一人の男が少年に蹴りを入れようと構える。
っ!
「ちょっと待てお前ら!」
そこで、俺が静止の声を上げる。
「――誰だよ? お前」
蹴ろうとしていた男もソレをやめ俺の方を見る。
「ただの通りすがりだ」
「それで、何をしに来たんだい?」
少年を蹴ろうとしていた男。こいつがリーダー格だろうか?
「そこの彼を助けに来た」
俺は壁際で倒れている少年を指差す。
「へぇ……あっそ」
瞬間。男がとてつもない速さで近づいてくる――
普通の人ならついていけない速度だろうけど、俺はあいにく普通じゃない。
若干反応が遅れたが何とかソレをかわす。
「――かわした?」
「そんな……八神の攻撃をかわすなんて――」
後ろに居た男が驚いている。
やっぱり今さっき攻撃してきた男がリーダーか。
それにしても、どうなってるんだ? あの速度は並みの人間の出せる速度じゃない。
ソレこそプロのスプリンターをも超える速度だろう。
「仕方ない、本気で行くか――」
「何?」
全身の感覚を研ぎ澄まし、氣を集中させる。
黒天月を持った時ほどではないが全身に氣があふれている――
外見的な変化こそ無いが、今の身体能力はどれもトップアスリートすら凌駕するほどだ。
「さぁて……こいよ、三人まとめて相手してやる」
三人組の意識は完全に俺に向いている。
これならこいつら全員のしてからあの少年を介抱できる。
「行くぞ、お前ら」
リーダー格の男が言う。
「「……」」
「聞いてるのかい? しっかりやらないと殺しちゃうよ?」
その言葉を聴いてしぶしぶ残った二人も構える。
そして、男達は俺に向かって動き出した――

――to be continued.

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