EternalKnight
<闇に蠢くモノ>
<Interlude-???->――昼
男達が俺に向かって接近してくる。
だが今の俺にはリーダー格の男以外の動きなど愚鈍すぎて相手にするまでも無い。
――故に、まずはリーダー格の男を倒す。
迫る男の拳を最小限の動きで流れるようにかわし――
そのまま顔面に掌底を叩き込み、リーダー格の男を吹き飛ばす。
「ガッ……」
男は壁にぶつかり力なく倒れこむ。
ちょっとやりすぎたかな?
「そんな八神が――」
「やばいぞ、こんなのとやっても俺らがやられるだけだ――」
後ろに居た男達は後ずさっていく。
あいつら相手なら普通にやっても負けないだろう――
そう思い全身にあふれる氣の放出を止めて――
「お前等、ちょっと待て」
「待ってくれ、俺らは何もやってない」
俺の声に慌てた様に片方が叫ぶ。
「――本当か?」
「あぁ、俺等はただソイツがぶつかって来たから脅して財布を――」
「――その財布、置いていって貰おうか?」
俺は男達を睨み付ける――
「……わかった」
そう言って財布を取り出し俺のほうに向かって投げた。
「お前等は見逃してやる……消えろ」
その言葉を聴いて男達はリーダー格の男を置き去りにして走り去って行った。
「さて、この男はどうしようか……警察じゃ逃げ出しそうだし――」
突然、男が目を見開き――
「!?」
俺を蹴り飛ばした。
[ガァン!]
「っぅ……」
どうやら蹴られて壁にぶつかったようだ――
人間を五メートル強もあの体勢で蹴り飛ばすってドンだけの力だよ……
――まさか! この男……氣の使い方を知ってるのか?
それならさっきの速度だって納得できる。
だとすると警察にゃ任してらんねぇ……家のほうで捕まえとかなきゃ――
「いってぇなぁ……まぁ、氣が使えたところで俺の敵じゃねぇな」
「氣? 何の事だ、そりゃ?」
意識を集中させ、全身に氣を纏う様に展開させる。
「知らないのか? まぁ呼び名を知らないだけって事もあるしな」
「何の事だか知らないが……死ね!」
突如男が動き出し、左ストレートを放ってくる。
「――遅いな、お前と俺とじゃ鍛え方が違うんだよ」
あっさりと左ストレートをかわして懐に入り込み、そのまま腹に再び掌底を叩き込む。
「ガッ……」[ボキィィッ!]
だが今度はインパクトの瞬間に全身の五割の氣を腕に集めた一撃。
その手ごたえは確かなモノであり、今までの俺の経験から察すに肋骨数本は確実に折れているだろう。
そのまま五メートルほど先の壁まで男は吹き飛ばされ壁に激突した。
これで今度こそ俺の勝利だろう。
「ふぅ……」
集中を解き全身の力を一気に抜く――
全身を纏っていた氣が薄れて消える。
「さて、じゃあ家に電話かな……」
とりあえず家に報告を入れなければならない。
ケータイのアドレス帳を開き家に電話をかける。
[プルルルル……プルルルル……ガチャ]
『はい、黒崎です。本日はどういった御用件で……』
「あぁ父さん? 俺……武だけど」
『ん? なんだ、武か……それで何のようだ?』
「いや、さっき不良に絡まれてる奴を助けたんだけどさぁ?」
『おぉ、人助けか、お父さんはお前が立派に育ってくれてうれしいぞぉ』
「いや、そう言うのはいいから。それで絡んでた方の一人がなんか知らないけど氣が使えるっぽいんだけど?」
『何?』
「それで警察に突き出すよりは家で捕まえてた方が確実だと思ってさ?」
『うむ、分かった。そちらに何名か迎えに行かせよう』
「助かるよ、父さん。それで場所だけど――」

<Interlude-祐太->――昼
体を誰かに揺すられている。
「うぅん……」
目を開く……目の前には知らない男の人が居た。
誰だろうか?
「あぁ、目が覚めたかい?」
少しずつ意識が覚醒していく……
そういえば不良に絡まれて、気絶させられたんだっけ?
「いっぅ……」
ソレを思い出した瞬間背中に痛みが走った。
「大丈夫かい? 相当こっぴどくやられてたみたいだけど?」
「はい……なんとか。ところで貴方は?」
「あぁ、自己紹介がまだだったね、俺は黒崎 武って言う。君は?」
どこかで聞いた事ある名前だな……思い出せないけど。
「僕は鏡 祐太って言います。それで……なんでここに?」
「あぁ、君が気絶させられてる所を偶然見つけてね。……不良共は追っ払っておいた」
「貴方が助けてくれたんですか……どうもありがとうございます」
「いいって事よ。あぁ……ソレとこれ君の財布だ」
武さんは俺に財布を手渡してくれた。……ってそういえば急いでるんだった!
「すいません、ちょっと用事があるんでこれで……」
そう言ってケータイを取り出して時間を見ると……12時16分。
あれから一時間程経って居る。
「あぁ、ちょっと。その状態じゃ大変そうだから目的地までなら送っていくよ?」
「そんな……迷惑はかけられません」
大遅刻が超大遅刻に――
「いいんだよ、どうせ散歩してただけだし。それで場所は?」
武さんもここまで言ってるし、一緒に来てもらおうか……
「えっと、春音って喫茶店です」
「……あぁ、あそこね。俺もたまに行くよ、俺の居た高校の先輩だった人が経営してる店だ」
「え……? 武さんってウチの出身なんですか?」
「って事は君もか……じゃあ俺の名前は知ってるんじゃないかな?」
――黒崎 武……!? 思い出したぞ。
確かとてつもなく強いのに公式戦に出なかった去年卒業した剣道部の先輩だったはず。
「世の中って狭いですね……」
「まぁ別にその高校のある町じゃ普通じゃないか?」
確かに……それもそうか。

<SCENE009>――昼
[カランカラン]
もう何度目か既に数えていないがドアに視線を移す――
その先には祐太……と、誰だ?
「武!?」
時乃さんが声を上げる……時乃さんの知り合いか?
祐太と武(?)さんが近づいてくる。
「いやぁ……待たせたね」
「「待たせすぎ(だ!)」よ!」
今の時間は……12時31分、集合時間に遅れること3時間31分の大遅刻だった。
「で……その人は?」
「えっと、僕が絡まれてる所を助けてくれた――」
絡まれてる所を助けた?
「黒崎 武だ、よろしく?」
疑問を口にする前に挨拶されてしまったので、ソレを殺して挨拶を返した。
その姿を時乃さんが見ていた……
「えっと、そういえば時乃さんは武さんと知り合いなのか?」
「え……えぇまぁ。ちょっと話があるので武さんを借りていきますね?」
「それは俺じゃなくて武さんに――」
「分かった、ちょっと待っててくれよ?」
そう言い残して二人は店の外に出て行った。
どういう関係なんだろうか? まぁ俺には関係ないか……
さて――
「じゃあ祐太、詳しく説明してもらおうか? 遅刻した理由――」

<Interlude-???->――昼
また強いオーラを持った人が来た。
今この店に居るオーラの強い人はさっきの人を含めて……五人。
特に彼と彼女から感じるオーラ量はものすごい。
少なくとも、よほど訓練でもしない限り……
あれだけのオーラを扱うのは不可能だろう。
これなら……いつ魔獣が出てきてもおかしくない。
幸い魔獣の気配は感じないから出てくることは無いと思うけど……
少しでもバランスが崩れれば日常は崩れ散るだろう。
ただ平穏に……人間として生きたいだけなのに――
そんな事を考えながらも、一切顔に出さずに皆との会話を続けた。

<SCENE010>――昼
なるほど、大体分かった……
「まぁ、結論から言うとだな……寝坊したお前が悪い」
「……翼、お前なら僕の気持ちを分かってくれると思ったのに――」
「ドラマっぽいセリフを言っても……お前が寝坊してその結果絡まれた事は何も正当化できないぞ?」
「うわーん、聖にぃ〜。翼がいじめる〜」
いかにも嘘臭い動きで祐太が聖五さんに抱きつく。
「いや、俺に抱きつかれても……」
「聖五さんも引いてるからいい加減にしろ、祐太」
祐太の服の襟を持ち引っ張る。
「許してくれるのか?」
とたんに俺のほうを向いて言って来るが……
「誰も怒ってないと思うが?」
「そうだっけ?」
……まぁ、こいつは昔からこういう奴だから仕方ないか。
[カランカラン]
店のドアが開き、時乃さんと黒崎さんが店の中に戻ってくる。
「ごめんね、待たせちゃって」
「いや、別に待ってないし。ソレより二人とも座って」
今日はこれだけ知り合いが集まったんだし……ここで話しとくのもいいかな――

<SCENE011>――夜
なんだかんだで時間は過ぎ――
みんなで会話もいい加減ネタが尽きてきた所で……
「ふぅ、そろそろ俺は帰ろうかな……もう七時だし、帰っても姉貴には何も言われないと思うし」
立ち上がりつつ、ケータイの画面を見ながら聖五さんが言った。
ちなみにみんなとは俺、祐太、叶、聖五さん、春樹さん、冬音さん、琴未さん、時乃さん、黒崎さんの九人だ。
ちなみに店には俺達以外は誰も居ない。
「もう帰っちゃうんですか?」
琴未さんが残念そうに言う。
「あぁ、もう帰る事にする。会計は……」
「じゃあ琴未、聖五の分の会計だけ済ましてあげて?」
「あ……うん!」
「じゃあなみんな。ソレと春樹、冬音、翼、明日の事は覚えてるな?」
「あぁ、もちろんだ」「えぇ、もちろんよ」「はい、覚えてます」
「ならいい、じゃあ、また明日……行こうか琴未ちゃん?」
「はい、行きましょう」
そう言って聖五さん達はレジに向かっていった……いやここからでも見えるけど。
「それじゃあ……私も帰ろうかな?」
そう言って時乃さんが立ち上がる。その後を追うように黒崎さんも立ち上がる。
「じゃあ俺も帰る事にするよ……今日は楽しい時間をありがとう」
そう言って時乃さんと黒崎さんがレジに向かっていく。
「琴未〜、茜さんと武さんの会計もお願〜い」
冬音さんがレジのほうを向き言うと「分かった〜」と返ってきた。
「うーん、人が一気に減っていく……話題が……でも――」
叶がぶつぶつとそんな事を言っている。
何かその小声の中に俺の名前があった気がしたけど……ソレがどうしたって言うんだ。
「みんな色々あるんだし仕方ないだろ?」
「それは分かってるけど〜」
「まぁ、まだいつものメンバーは残ってるし、良いんじゃないのか?」
「そういえば翼、さっき聖にぃが言ってた明日の事ってなんだ?」
祐太の質問……答えは、別に言わなくてもいいか……
「あぁ、ちょっと用事があってな。明日は遊べない」
「そうなの翼? せっかく明日も暇だから遊ぼうと思ってたのに……」
叶が残念そうに言う。
「悪いな、どうしても外せないんだ。明後日なら大丈夫だけど?」
「えっと……ごめん、私明後日は駄目なのよ」
まぁ理由は俺も言わないんだし聞くのも野暮かな?
「まぁ……今日はまだ解散じゃないんだし、そう言うのは後でいいじゃんか」
祐太の言うとおりだな……
その後も一時間ほど俺達は春音で談笑を続けた。

<SCENE012>――夜
今日の分の勉強が終わった。時間は11時過ぎ――
「この分だと進学試験は落ちそうにないな」
そう言って、今日やったプリントに再び目を通しながら聖五さんが言った。
「そうですか……で、明日は10時に集合ですよね?」
「あぁ……早いもんだな。もう二年……アイツの三回忌だもんな」
「そうですね……」
そして紅蓮さんが行ってからもう三年と七ヶ月だ。
「紅蓮さんは、いつ戻ってくるんでしょうか?」
「それは俺にも分からないさ。でも、アイツは必ず戻ってくる」
それは、俺にも分かっている。あの人が約束を破るような人じゃない事ぐらい……
「さて、そろそろ帰るかな……」
そう言ってプリントを机の上に置き立ち上がる。
「それじゃあ、また明日」
「おう、遅刻するんじゃねぇぞ?」
「大丈夫ですって、俺は祐太とは違いますから」
「それもそうだな……じゃあ、明日な」
聖五さんはそう言い残して部屋を出て行った。

<Interlude-武->――夜
月が天に輝き、月夜の闇に黒い影が蠢くのを確認……見つけた。
――影の数は四。ただし最下級の人外。
故に、この数が相手でも俺一人で十分と言えるだろう。
自身の腰に挿した得物を抜き放つ。
深く洗礼された美しい黒の刀身、ソレが俺の宝具……《黒天月》。
その力により全身が氣で満たされているのが分かる。
「さて、じゃあ……行こうか?」
《黒天月》に声をかける。
別にそれ自体に意味は無いのだが、何故かいつもそうしている。
学校の屋上の地面を蹴り、黒い外套をなびかせて……跳躍。
そのまま地面に着地して一気に人外のいる地点まで疾風の如く疾走する。
30秒程ですぐに人外の下に到着し、周囲を確認する。
四体全てが別々の姿……どの形状も似たような奴を倒したことがあるので問題ないだろう。
人外も俺に気が付いたらしい。
元々、隙を突かなくても倒せる相手だが……手を抜く気はない。
ゆっくりと《黒天月》を構える。
「オォォォォォォ!!」
人外は一斉に襲い掛かってくる……だが、戦術も何も無い戦いで負ける俺じゃない。
まずは脚部に氣を貯めて……それを弾けさせ、高速で移動し背後に回りこむ。
その勢いのまま一体目を黒い刀身で斬り裂き、ソレを踏み台にしてさらに跳躍――
踏み台にした人外はドス黒い血を噴出させているが……関係ない。
飛び上がって、そこから落ちる勢いに任せて黒い刃を振り下ろし、さらに一体の人外の肉を斬り裂く。
今度は黒い血潮が顔にかかるが、ソレを拭わずにすぐその場を離れる。
「ふぅ……」
顔に浴びた黒い血潮を拭いながら再び《黒天月》を構える。
やはり最下級だったか……一体も俺の動きについて来れていなかった。
と、言うか俺なら宝具を使わなくても……並の得物で勝てるんじゃないんだろうか?
こんなに弱い奴ばかり現れるってのはどう言う事なんだろう……
いや、今は残りの二体を片付けるのが先だな……
俺にとって雑魚でも普通の人達にはとんでもないバケモノに違い無いのだから。

――to be continued.

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