EternalKnight
<転校生>
<Interlude-???->
どれだけ長い間……ここにいただろうか?
一時間にも満たない時間に思えたが、十年以上にも思えた。
深淵の闇の中に居る様に暗く……何も見えない。
一つを除いて何も感じない。
本当に……何も感じない。
地面を踏みしめる感触も、どちらが上で下か、右か左なのかも。
そして、自身の鼓動さえも――
感じない。ある一つを除いて五感も完全に機能せず停止している。
ソレよりも……ここは一体どこなのだろうか?
これが《死》と呼ばれるものなのだろうか?
何せ、唯一感じる《何か》が何かが呼ぶような声なのだから――
それも呼びかけが始まったのは先程からだ……
完全に何も感じない空間で長時間よく意識が狂わなかったものだな……僕も。
まぁ聞こえてくるソレが地獄からの声でも天国からの声でも、どっちでもいい事だ……
そんな最初は上手く聞き取れなかった声も、だいぶ聞き取れるようになってきた。
【お――は、――らを――むか?】
それでもよくわからない……
【わ――は、どうか――えに――たなち――をあた――もの】
まぁそんな事はどうでもいい。
しっかりと聞こえたところでどうこうなる訳じゃない……

<DREAM>
「紅蓮さん。俺は……必ずあんたみたいに強く生きてみせる――」
「だから、いつかまた、見に還って来てください!」
「当たり前だよ! 俺は約束を破るような男じゃないからな!」
そう言い残して、紅蓮さんは扉の向こうに消えていった……
最後まで振り返らずに……
――――夢。
コレは夢だ。
俺が四年程前に見た光景でしかない。
あの時の約束――――
紅蓮さんのように強い生き方をすると決めた。
―――――ソレが俺の誓い。
紅蓮さんは、そして俺は、あの時の約束を果たせるのだろうか……
紅蓮さんは果たせると思う、根拠はないけどなんとなく分かる。
だけど、俺は果たせるんだろうか。
――あんなに強く生きられるだろうか?

2/10(木)
<SCENE001>――朝
「――なさい、――えないの? つ――くん!」
夢は終わり、誰かの声が聞こえた気がした――
「起きろといってるでしょーがぁ!」
[スパァーン!]
「いってぇ!」
脳に直接響くような一撃……こんなことするのは一人しかいない……
「痛いじゃねぇか! あんたそれでも教員か!?」
予想通り顔を上げると、そこにはハリセンを持った翔ねぇがいた。
「へっへーん、高校は義務教育じゃないから体罰はありなんですよーだ」
「いや、そういう問題じゃねぇだろ?」
「……まぁ、気にしちゃだめだって、翼♪」
「まぁ……いいけど。所でさぁ……翔子先生?」
顔を上げた時から視界に入ってて気になってたんだが……
「なーに?」
「あのぉ……ドアの近くにいる子は誰?」
「へ? ……あぁ! 忘れてた……えっと時乃(ときの)さん、入って」
その声を聞いて教室の外、つまるところ廊下にいた少女が教室に入ってきた。
はじめに目に付いた腰まで伸びた髪は綺麗な黒をしていた――
きれいな黒髪だなぁ……それにしても、あの長さのストレートは結構珍しいよな?
実際テレビ以外に覚えてる範囲でそんなに髪の長い女性は見たこと無い……
そんなどうでもいい事を考えていると――
翔ねぇが教壇に立ち、時乃さんと呼ばれた少女もその横に立った――
ひょっとしてこのノリは……
「今日からこのクラスで勉強することになった時乃 茜(あかね)さんです」
やっぱりか……それにしても――
「ちょっと待った、翔ねぇ!」
離れた席に座っている祐太が挙手する。
何が言いたいかは俺もさっき思ったのでわかっているが……
「この時期に転校っておかしくないか?」
そう、ソレだ……今は仮にも二月、そして俺達は三年――
ぶっちゃけ、今編入してくるぐらいなら、別に大学に入る時でもいいと思うんだが……
いくらエスカレーター式だからって今入ってこなくてもいいのに……
「うーん、それは私も思ったんだけどねぇ?」
翔ねぇが祐太の元に歩み寄る……これも理由はわかるけど。
「じゃあどうして?」
今だに祐太は気がついていない……哀れだ。
「それ以前に……翔ねぇって学校で言うなぁぁ!!」
[スパァーン!]
「ギャース!」
ハリセンで叩きつけられ机に突っ伏したまま、祐太の動きが止まった……自業自得だな。
「それで、西野先生〜、結局理由って何なんですか?」
今度は叶(かなえ)が質問する。
「ソレがねぇ、聖(ひじり)さん――」
「なんでも校長先生が強引に入れるように手続きしたんだって?」
「ふーん、そうなんだぁ……」
「はい、じゃあちょっと時乃さんに挨拶してもらうから静かに〜」
数秒で教室が静まり返る――
「はい、じゃあ時乃さんお願い」
「はい、先程ご説明にあがりました、時乃 茜です。今後ともよろしく」
[ぱちぱちぱち]
そんなこんなで、うちのクラスに時期はずれの転校生が来たのだった……
「えっと、あいてる席は……翼の隣だね、あそこにでも座っといて」
翔ねぇが俺の左隣……窓際の最後尾を指差しながら言った。
「あ、はい……わかりました」
何でまた……俺の隣なんだ?
まぁ、近くで見るとやっぱり結構かわいいし隣なのは儲けモンかな?

<SCENE002>――昼
転校生……時乃茜は休み時間に質問攻めにあっていた。
まぁ、適当に隙を見つけて声をかければいいだろう、席は隣だし。
「おーい、翼。学食行くぞぉ〜」
そんな事を考えていると、祐太の声が聞こえてきた――
「おう、わかった」
返事をして席を立つ。
――と、そこで時乃さんとちょうど目が合った……
気がしたけど気のせいだよな……
俺はすぐに向き直りそのまま祐太の元に移動した。
「どうしたんだ、一瞬止まってたみたいだけど?」
「なんでもない、叶はどうした?」
「転校生のところに集ってる、席近くなんだし見たろ?」
「……ぼーっとしてたから気づかなかった」
「大丈夫か? まさか、転校生に一目ぼれか?」
「そんなんじゃねぇよ」
「ふーん?」
なんでそうなるんだか……確かにかわいいとは思ったけど――
一目ぼれする程かわいいと思ったわけじゃない。
「まったく……それよりさっさと学食に行こうぜ」
「そうだったな、腹減ったしいこうか」
「話を広げたのはお前だろうが」
「まぁまぁ、気にすんなって」
「お前、やっぱその性格直したほうがいいって。」
そんな事を話しながら俺達は教室を後にした。

<SCENE003>――昼
「連絡は以上! 明日から三連休だけど、それとなく勉強しておく事」
HRも終わり、今日はこれでもう帰ることができる。
しかも明日から三連休だ……予定なんて無いけど。
去年からやっと私学であるこの高校も土曜が半日から通常の休日になった。
まぁ特に予定の無い俺は暇な休日が増えただけだが……
それでも、この三連休の土曜は……用事もある。
まぁ、暇でも休めるに越したことないんだけど――
勉強……エスカレーター式とは言うけど一応大学に上がるには試験を受ける必要があるらしい。
就職組みはもう就職が決定していて学校には来ていない。
と……言ってもそんな奴は内のクラスには三人しか居なかったが……
「そんじゃ、みんな解散。また月曜日に会おうね!」
試験は聖五さん曰く簡単らしいから大丈夫だろう……
まぁ……冬音さんも受けて落ちてるらしいから不安だけど……
実際、今の俺の成績なら問題ではないだろう。うん、たぶん――
成績がそこそこを保ててるのは聖五さんに教えてもらっているからだが……
「おーい、どうした翼、さっきからなんか考え込んで?」
「いや、休みどうしようかと思ってさ」
クラスの奴らはドアになだれ込んでいく。
まぁ、みんな出て行った後にゆったりと出ればいい、いつもそうだし。
「ってことは予定なしか?」
「そう、暇なんだよ、お前は?」
「僕? 僕は家でだらだらする予定だけど?」
それは予定とは言わないと思うが……
「おーい、翼ぁ〜。ついでに祐太〜」
この声は叶か。何か用だろうか?
とりあえず振り返ると、歩み寄ってくる叶の隣に時乃さんが居た。
……なんでだ?
「どうしたんだ、叶?」
「えっと、二人とも明日は暇?」
「俺はまぁ……暇だけど?」
「僕は暇じゃないよ〜?」
「えっ? そうなの? それなら別に構わないけど」
……おい。
「黙れ祐太。家でだらだらしてるのは予定とは言わん」
「……なんだ、予定ないんだ。だったらさ、明日は茜ちゃんとどこか行かない?」
茜? あぁ、時乃さんか――
それにしても叶……転校生とこんなに早く仲良くなるとは……
「まぁ、俺は別に行ってもいいけど。祐太はどうする?」
「うーん、そう言う事なら僕もいこうかなぁ」
「じゃあ決定ね。明日は……朝九時に駅前集合ね?」
「了解〜、じゃあそろそろ帰るか」
「そうだねぇ……じゃあ、また明日」
「明日九時よ? 忘れないでねぇ〜」
「何度も言わなくてもわかってるって」
俺達はそう言って教室を出た。

<SCENE004>――夜
「今日はとりあえずここまでだ、質問は?」
俺はその問いに首を横に振り、机の上の本とノートを閉じる。
「なら今日は終わりだな、さて俺もそろそろ帰るかな――」
「待った。お茶入れてくるから座っててくれよ、なぁ先生?」
「わかった、別に急いでる訳じゃないしな、ソレとその呼び方やめろって――」
「はいはい、じゃあ、ちょっと待ってろよ? 聖五さん」
そう言って俺は自分の部屋を出てお茶を入れにリビングに向かった。
――で、お茶を入れて自分の部屋に戻って来た。
「はいよ、茶菓子もセットだ」
お盆に乗せていたお茶と饅頭を聖五さんに渡す。
「ありがと、それで……明日はどうする?」
そう言いながら聖五さん饅頭の包みを開けていく。
「明日は祐太とかと遊びに行く予定なんで、今日と同じ時間でお願いします」
「わかった、俺は……明日も暇なんだよなぁ。家に居ると姉貴にいろいろ言われるし……」
「たいへんなんだなぁ……聖五さんも」
「まぁ、お前もあんな姉貴が居ればわかると思うぞ?」
「いや……担任ってだけでも大変なのに姉弟は考えられない」
「まぁそうだろうな……さて、そんじゃ俺はそろそろ帰ろうかな……」
そう言って聖五さんが立ち上がる。
「明日もよろしく頼みます、先生」
「だから、それはやめろって――」
そう言って聖五さんは部屋のドアを開け、外に出る。
俺もソレに続いて玄関まで二人で移動する。
「じゃあ、またな」
そう言って聖五さんは玄関のドアを開けて出て行った。

<Interlude-???->――夜
頭上には月が輝く、ここで明かりが存在するとすればそれだけ。
まぁ、こんな山の頂上では、街灯などはもちろん存在しないんだけど。
――気配が一つ近づいてくる。
「……ずいぶん遅かったわね?」
目の前に黒い外套を纏った黒髪の青年が現れる。
その他の特徴は……暗くてよくわからない。
「……遅れたのは悪かった」
「それで、どうして《私が》あなた達の管理するこの町まで引っ張り出されて来たのかしら?」
単純に指令を聞いてから気になっていた事を聞いてみた。
「いや、《強く無い》んだが……なぜか通常の三倍強も《人外》が出現しているんだ」
《強く無い》ねぇ……
「なるほど、見習いの私をあえて呼んだ理由はそこね?」
どうりで、指令を詳しく教えてもらえない筈なわけね。
お前にぴったりの雑魚の始末だ、行って来い。
――と言われて気分のいい人等居ないだろう。
「そんな事を俺に言うなって、俺もまだ見習いだっての……」
「そうなの?」
意外だった……
彼は私と同じくらいの歳だと思う。
しかし、女に比べ男の退魔師は早く引き継ぐモノだと聞かされていた。
「そうだ、こいつの使用許可もらったのも二年前だぜ?」
黒い外套を纏った青年は腰に挿した宝具を指差しながら言った。
「そうなんだ……私はかなり前からかな。まだ使いこなせないんだけどね……」
「まぁ、俺も使いこなせてないけどな」
「そうだ、これからしばらく一緒に戦う事になるんだから――」
「連絡を取れるようにして置こう、えっとケータイは……」
ケータイを青年がケータイを探している。
ソレをみて私もポケットからケータイを取り出す。
「それと自己紹介しない? 黒崎の退魔師さん?」
「あぁ、そうだったな。俺は黒崎 武、宝具《黒天月(こくてんげつ)》の所持者だ。君は?」
「私は宝具《流刻剣(りゅうこくけん)》の所持者、時乃 茜よ。よろしくね?」
そう言って、私は手を差し出す。
「こちらこそ、よろしく」
武と名乗った青年は差し出した手を握り返した。

――to be continued.

/<Next>

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