NARUTO
三
それからはシカマルと二人で駅で待ち合わせして通学するようになり、彼が言った通り一人の時を狙っていたのか、痴漢をされる事は無くなった。
きっともうされない。
ナルトの中にその言葉が生まれた。
けれどナルトは知らない。
そう言うのは駆け引きと同じで、知略されている事を。
二週間が過ぎた頃。
『・・・珍しい』
ナルトは携帯を見て呟いていた。
メール画面には、シカマルが寝坊したと打たれていて、ナルトは一人電車に乗った。
定位置になっている最後尾の角。
痴漢される前の頃に戻ったようで、ナルトの気分は清々しかった。
混雑してきても、揺れで爪先を踏まれようとも、ナルトは気にしない。
カーブに入り身体が揺れ、壁に手をついて逸れを支えた時。
ナルトの目は見開かれた。
(・・・なんで?)
尻に感じる、手の感触に。
揉まれ、摘まれナルトは身じろごうとするが上手く出来なかった。
忘れていたものが、箱から飛び出してきたかのように身体が震えてきた。
『・・・・・・っ』
俯きナルトは唇を噛み締める。平気だと思ったものが、また再びされる事が業腹で。
ナルトは背後の相手を見ようと、この時初めて硝子越しに見ようとした。
『・・・・・・』
映ったのは、フードを深く被った自分よりも大きい男。
微かに見えた前髪の毛の色は黒。
『・・・っ!』
するり、と初めて服の中に入ってきた手。
しかも今日は緩いカーゴパンツ。
性器を触れられるのだけは嫌で、手を掴もうとするより早くそこに到達された。
『やっ、だ・・・っ』
小さな囁き声は、男には届かない。
やわやわと柔らかな性器に触れて、それを揉まれる。
『・・・やだ』
相手の手を掴んで爪先を踏んでやろうとしたら、耳元に風が吹く。
「・・・指入れられたいか?」
『・・・っ!』
耳元で囁かれ尻を強く揉まれると、掴んだ手が一瞬怯んだ。
なぜこんな事をされなければならないのか。
悔しくてナルトの瞳が潤んだ。
『・・・っ、ふぅ・・・っ』
熱を持っていなかった性器が、徐々に膨らみ始めてしまい、ナルトは頬が熱くなる。
嫌なのに反応を示す自身のものに。
「・・・やらし」
『ちがっ、ちがう・・・っ』
力無く頭を振るが、頭の隅にはそうなのかも知れない。と感じた。
車掌のアナウンスが流れ降りる駅に近付いた。
『・・・っ』
解放される。ナルトは素直に早く着けと念仏のように心の中で唱えた。
『・・・っ、ん』
するり、と手は抜かれ身体の強張りも取れて扉が開くのを待った。
開いた瞬間ナルトはそこに向かい降りるが、突然腕を引かれる。
『・・・やっ!』
あの、フードを被った男に捕まれナルトは脚に力を入れる。
入れるが相手の引く力も強く引きずられ体勢が崩れそのまま進んでしまった。
『やだ・・・離せ・・・』
何処に連れて行かれるのか解らない恐怖に、ナルトの声は震えた。
『やだってば・・・はな、はなせ・・・っ』
その恐怖に耐え切れず涙がぽろりと一滴落ちる。
背後から明るい声が聞こえた。
「ちょっと、喧嘩なら少し話ぐらい聞きなさいよー?」
『・・・っ、あ・・・っ』
銀色の髪の毛と、マスクをした成人男性がその手を掴んでた。
ナルトは安堵して、また涙を流す。
「ほらー泣いちゃって可愛そうにねえ・・・」
よしよし、優しい眼差しで頭を撫でられると、手が軽くなった。
『・・・あ』
「行っちゃったねえ、邪魔しちゃったかな?」
困った顔を浮かべる男性に、ナルトは被りを振る。
助かった。
本当に良かった、と。
『あの、ありがとうございました。』
「いいえー、でも仲直りするんだよ。」
じゃあね。と手を振って別れた。
『仲直りって・・・』
相手は痴漢です。だなんて言える訳がない。
もしあのままだったらどうなっていたのだろうか。
考えるだけでぞくりとして、肩を震わせた。
完全では無かったが、自身の熱も収まりナルトは学校へと向かった。
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