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16:(君の本音は─、)

パーティーも終盤、未だ三人にプレゼントを渡せずにいるあたしはタイミングが掴めなくて、プレゼントをポケットにしまったまま。どうしようかな。


「愛、ワイン開けますよ」


そんなあたしにかかった声は未成年にする話じゃないだろうと突っ込みを入れたくなるような内容で。…それでも、突っ込まなかったのは何でなのかな──。


「コラ、私の愛を不良の道に引きずり込まないでよ」


「愛を貴方のにしないでください」


「アルコール濃度低いから、愛チャンなら大丈夫だよね」


あたしが悩んでる最中に始まった骸さんと美和の口論。それに重なって聞こえてきたおいで、とあたしを手招きする白蘭さんの声に隣にストンッと腰を下ろしてグラスを受け取る。その反隣では骸さんと美和が睨み合いっこしてるけど気にしない気にしない。


「愛、無理して飲むと倒れるぞ」


「うん、前にも間違えて飲んでるしへーきへーき」


九条君の止めの言葉を聞かずに、グビッといったあたしはこれを飲んで何かを吹っ切りたかったのかもしれない。ていうか前に飲んだとき記憶飛んだっけなあ…なんて思いながら。


「あー愛!」


「ああ、そっちはアルコール濃度が高い方ですよ」


「ヒック、──」


骸さんの言葉が遠くで聞こえた気がした。別に意識が朦朧としてるわけじゃない。ただ、抑えていた感情を止めていたモノが壊れた、みたい──。


「「────」」


明らかに酔っちゃいましたって顔の愛を前にどうすんだよ、とお互いの顔を見合わせる面々に、彼女は気にするでもなく次から次から飲み続けている。


「愛、それ以上飲んだらダメだって!」


「うるひゃいっ」


慌てて止めに入ったツナの手を振り払って、またゴクリと喉をならして飲み干していく愛にツナは冷や汗を流している。


「愛チャンストップ。ほら、水飲んで」


「やあっ」


「そんな事言ってると襲っちゃうよ?」


「ちょっと!真面目に何言ってんのー!つーか既に襲おうとしてんじゃんかー!」


真っ赤な顔して呂律が回っていない彼女に理性が保てなくなってきている白蘭と愛を慌てて引き離した周りは、ワインや酒を彼女の目の届く範囲から隠した。


「愛、水飲みなさい」


「やっ!」


「──…」


いつもより幼く、好き勝手やる愛を可愛く感じる反面、手に負えなくなってきている三人。


「愛、ほら甘えてないで」


「美和あっ……あたしねーっ」


「うん、分かったから水飲んで」


抱きつく愛を抱きしめ返してポンポン背中を叩く美和だが、次の彼女の言葉に場の空気は凍り付く。


「骸さんもツナも、白蘭さんも…バイバイしたくないよーっ…」


「「「?!────」」」

「「「!─────」」」


「離れたくないっ、離れたくないよっ…皆、大好きなのにっ……何で、……何で帰っちゃうのーっ!」


「「「愛(チャン)──」」」


美和は泣き叫ぶ愛を強く抱きしめて、涙を流しながら何度も何度も相づちを打って大丈夫と、囁いていた。


「あたしっ、…あの人にも、まだ…伝えてない、のに───、」


「愛!───、」


「寝てるだけだな……」


ポロポロ涙をこぼして最後に意味深な発言を残して眠りに落ちた愛に、勿論それを聞き逃さなかった全員は戸惑ったような視線を美和に向けていた。


「──、愛が言うまで私からは言わない。…だけど、この娘が本当は強くないって事、誰よりも貴方達を必要としてるって事は分かってあげて──」


涙にぬれた顔で笑った美和に三人は胸が押しつぶされそうな錯覚に陥り、彼女の顔を直視できなかった。それは、九条も同じようで、その場には重たい沈黙という名の空気が流れていた。




....
(引き留めて欲しかったんだ──、)
(それでも僕は君を幸せに出来ないよ)
(僕は何を望んでいるんでしょうか)

(((愛(チャン)──)))


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あきゅろす。
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