「おかえりー」 やっと帰ってきた三人をお出迎えに出たあたしは、三人を見つけると自然と笑顔になっていた。 「ただいま、」 「ごめん遅くなって」 「道が混んでたんだよ」 三人のそれぞれの反応に、ああ、こんな会話も今日が最後になるのかなんて考えてるあたしって重傷だよね。 「愛、なにしてんの?」 「え、あ、パーティーの準備出来てるんだよ!皆そろったし始めようっ!」 ツナに声をかけられてハッと我に返ったあたしは、不思議がる三人の間をすり抜けて美和や先に帰ってきた九条君と、和磨のいるリビングに戻った。 ダメ、意識すると気分が落ちちゃって涙が出そうになる。あたし、こんなに弱かったっけ…? 「愛に別れの日教えた?」 「言える訳ないでしょう」 「僕も言ってないよ」 三人は顔を見合わせて、愛の走り去っていったリビングの方を見据えたまま複雑な顔をしていた。 「…言ったら何て言うのかな、愛」 答えが分かりきっている問いを投げかけて、二人の答えを待つツナは、悲しそうに顔を歪めていた。 「笑って行ってらっしゃいって言ってくれるよきっと」 「僕らが引き留めてほしいというのはお門違いですよ」 「うんっ……、分かってる」 儚げに笑ってそう口にした白蘭と、そっと目を閉じる骸に、ツナは真っ直ぐに前を見据えて力強く頷いた。 *** 「メリークリスマース!」 パンパンッ───── 無数のクラッカーの音と共に始まったクリスマスパーティー。テーブルに並べられた料理は美和とあたしで頑張った。 もちろん、スイーツは愛チャンスペシャルだけどね。 「はい、愛。プレゼント」 「え、美和……」 「これからも親友宜しく」 美和から貰った高価そうなブレスレットを受け取って、笑顔で差し出された手に涙が浮かぶ。…最近、涙もろくてかなわないよ。 「こちらこそ、一生あたしの親友は美和だよっ」 「わっ!?」 バッターン──! 勢いで飛びついたあたしを支えきれなかった美和と一緒に後ろにひっくり返って、目が合えば二人で笑いあった。 「お前等だけの世界はいってんなよ、愛、颯斗から届けモンだぜ」 「え──?」 呆れたようにあたし達をみて笑ってる和磨があたしに差し出したのは、小さな小包。まさか颯斗からプレゼントがくるなんて思ってもみなかった。 「何々?」 「う、うん」 起きあがった美和とドキドキしながら小包の包装を解いていく。リボンをはずして開いた小箱から出てきたのは、あたしがずっと欲しい欲しい言って颯斗に強請っていたピンキーリングだった。 「覚えてて、くれたんだ…っ」 小箱をギュッと抱きしめて、今度こそ流れる涙を抑えることが出来なかった。…高かったはずなのにっ、あんな文句ばっか言ってたくせにっ。 (Merry Christmas. 大切にしろよ。By颯斗) 「あはは、キザだなー颯斗君」 「愛されすぎだな全く」 美和と和磨に背中やら頭やらをポンポンと叩かれて、よかったね、と優しく宥められた。あたしばっかりズルいよね──。 *** 「タイミング無くしたねー」 「あはは…」 「いいモノはラストにくるものですよ」 「何だよそれ」 微笑ましい三人の光景に、完全に出遅れた四人は、隅でそれを優しく見守っていた。 .... (貴方は何を用意したんですか?) (ん、内緒) (勿体ぶっちゃって、大したモノじゃなかったりしてね) (……大したモンだよ) (((?───))) |