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雅恋祭り其の三
*雅恋 壱と参号
*壱号、恋に気付くステップシリーズ其の三


〜〜〜〜〜

「うわぁ、綺麗!」

「あんなの、ただ重いだけだろ」


正直な感想を述べた僕を、参号が大きな瞳を吊り上げて睨み付ける。
ただ事実を述べただけで、こんな風に睨まれるような覚えはない。
まぁそもそも、参号に睨まれたところで全く怖くもなんともないけど。



「いいなぁー」

「お前、あれが着たいのか?」

「そっ、そんなんじゃないよ!?第一、私なんかが着ても絶対似合わないもん…!!」


拗ねたように尖らせていた口を今度は大きく開閉して、慌てたように参号が首を横に振った。
どうやら僕の後輩は忙しない上に、嘘が下手らしい。似合わない、似合わないと繰り返し呟くその顔には羨望と諦めの色が滲んでいる。

僕は全く共感できないけど、参号には"あれ"──どこぞの姫君が着るような豪華絢爛な着物が随分と魅力的に見えるようだ。
動きにくそうだし、重そうだし、無駄にきらびやかだし、あんな着物のどこに憧れるのだろうか。正直、理解に苦しむ。
それなら、控えめなのにどこか上品で、柔らかく身軽そうな今の参号の衣服の方がよっぽど…。


……よっぽど?


「あっ、でも、一回くらいなら着てみたいかも」

「別に、お前はそのままでいい」

「へっ…?」


未だ羨望の眼差しで遠くを見つめる参号の腕を強引に掴んで、邸への道のりを急ぐ。引いた手から伝わる戸惑いを覆うように握り込めば、更に控えめに手を握り返された。
触れた部分から全身へと広がる熱に驚いて思わず立ち止まると、すぐ後ろで参号が笑っていた。とても、とても、嬉しそうに。


「うん、私もやっぱり今このままでいいや!」


上機嫌で繋いだ手をぶんぶん振りながら、今度は参号が僕の手をひいて歩きだす。さっきまで驚いていたのに、かと思えば急に喜んだり、本当に忙しいやつだ。
ほんの一言で拗ねたり笑ったりコロコロと変わる表情。その横顔を見つめながら歩き、そして感じたのは確かな"優越感"。
僕が参号の心を揺り動かしている。心に影響を与えている。そう思えば思うほど淡い喜びがじわじわと胸を満たしていく。あいつを変えるのは僕だけでありたいと、無意識に願ってしまう。

僕の言葉に一喜一憂する参号と、参号の変化に敏感に反応してしまう僕。

"単純だな"なんて、僕自身案外あいつに言えた義理じゃないのかもしれない。
そう思うとなんだか少しだけ自分の頬が綻んだ気がした。


僕と後輩と単純思考

(私も、そのままの壱号くんが好きだよ!)

(誰も好きだとは言ってない!!)




シリーズ其の三までくると壱の好きな子に対する独占欲が顕著に現れるようになってきたね!というのをイメージして書いてみました。
頑張れ壱号、君の初恋はもうすぐそこに!

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あきゅろす。
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