瑠璃真奈 *二世 瑠璃丸と御使い様 *妄想120% *結構な短文です ───── 「ねぇ、御使い様。この文字はどう読むの?」 私を呼ぶ声に、作業の手を止めて振り返る。 紙が無造作に広げられた机に近づいて覗き込めば、ちょうど瑠璃丸くんが眉間に皺を寄せ、大きな瞳を細めて文字の羅列とにらみ合いをしているところだった。 普段の無邪気な笑顔とは違う、真剣で妙に小難しい表情。 軒猿の仕事をしているときは凄く大人びて見えるのに、文字と対峙する瑠璃丸くんはしっかりと年相応の少年に見える。 普段がしっかりしている分、そのギャップが何だか新鮮で可愛くて。問いかける声が、頬が、愛しさに思わず緩んでしまう。 「どの文字?」 「うん、これだよ」 まるでお姉さん気分で、私も同じように文字を目で追いかける。 瑠璃丸くんが指さす言葉をなぞるように一つずつ読み解けば、その度に彼の口から感嘆の納得の相槌がもれる。 『御使いさま、これは何て読むの?』 『それじゃ、その文字は?』 『これならオレでも読めるや!』 好奇心と意欲を浮かべた瞳が私に笑いかける。その嬉しそうな笑顔につられて、私もにっこり瑠璃丸くんに笑みを返した。 読み書きを身に付けるのは瑠璃丸くんの今後にも役立つし、とてもいいことだと思う。 何より、積極的に物事を学ぼうとする姿勢は何事においても重要なことだから。 だから、こうして瑠璃丸くんが自ら進んで文字を学ぼうとしている様子を見るのは嬉しいし、凄く喜ばしい変化に違いない。 だけど、こう、あまりにも熱心に文字の勉強しているものだから──。 「ねぇ瑠璃丸くん、何かあった?」 「何か、って?」 「だって瑠璃丸くん、急に文字の勉強頑張りだしたでしょ?だから、どうしてかなって…」 成長の喜びに交じった、確かな違和感。 数日前まで刀儀さんや翠炎に促されても全く見向きもしなかった勉強に、今日はやけに熱をあげて取り組むものだから。 ただ、純粋に疑問に思ったんだ。 “何が彼のやる気に火をつけたのだろう”と。 プライベートなことだし、お節介かなとも思ったけど、どうしても気になっておずおずと問うてみれば、瑠璃丸くんは特に何を気にするでもなくあっさりと理由をはいた。 「オレ、文を書きたいんだ」 嬉しそうに口角をあげるその姿に、嗚呼成る程と一人相槌をうつ。 文といえば手紙のことで、手紙といえば要するに文字の集合体だ。 それなら、こんなにも瑠璃丸くんが真剣に文字を学んでいた理由にも大いに納得できる。 軒猿とはいえ、瑠璃丸くんはまだ子どもで。この戦国時代では大人と同一に扱われているけれど、きっとまだまだ遊びたい盛りの年頃に違いない。 友達とお喋りしたり、野を駆け回ったり、文を交換しあったり。 そんな、穏やかな遊びに興味を示すのもきっと当たり前のことなんだろう。 普段の大人びた様子に垣間見た純粋な童心に、心がほっこりと温かくなる。 「誰に宛てて書くの?」 「うん、御使い様に」 「私、に…?」 思いがけず出た自分の名前に首を傾げれば、瑠璃丸くんは更に何度か頷いて肯定を示す。 束の間の幼心を見られただけで充分嬉しかったのに、そのうえ手紙まで貰えるだなんて。 目に入れても痛くないっていうのは、このことを言うのかもしれない。 刀儀さんが瑠璃丸くんをよく可愛がる訳が凄くよく分かる。 純粋無垢な心で笑う少年。 嗚呼、きっと弟がいるってこんな感じなんだろう。 「御使い様に、恋文を書くんだよ」 ───前言撤回。 やはり彼は少し、ううん、かなり“大人びた”少年みたいです。 不意討ちラブレター (あれ、御使い様。顔が紅いけど?) ((絶対に確信犯だ…!!)) * ブログから再録した初の二世小説。 瑠璃まなは可愛いのでもっと世間様に広まればいいと思います。 子どもらしく無邪気に攻める瑠璃くんとお姉さん振ろうとするも翻弄される真奈ちゃん萌え! [*前へ][次へ#] |