神からの頼み
「何かよく分かんねえけど、そんな事は関係ねえ。オラは悟飯を取り返ぇしに来ただけだかんな」
「孫よ、ガーリックはわたしに任せるが良い。おぬしは息子を探すのだ」
「でもよ…神さま、向こうは不死身になっちまったんだろ?」
悟空は少々不安だった。相手が不死身になってしまった以上、確実にこちらの方が分が悪いからである。
地球の神はピッコロとの戦いにより、一度命を落としかけている。今回は相手が不死身なだけに前回よりもかなり危険な状況だ。
悟空は、もう二度と地球の神を危険な目に遭わせたくなかったのだろう。
「心配は要らん。神がそう簡単にくたばる事はない」
だが、神は優しく微笑み、悟空の背中をポンと叩いた。やはりその手は温かい。
恐らく、神にも色々な思いを抱いているのだろう。
これは、神の座を競い合う者同士が起こした問題であり、その責任を果たすべきなのは当事者である自分だという事を。
悟空も何となくその気持ちを汲み取ったのだろうか、強く頷きグッと親指を立てた。
「そっか!分かった。神さま、わりぃけど頼む!」
「ああ、待て孫!あと一つだけ良いか?」
急いで中へ入ろうとする悟空を、地球の神は慌てて引き止める。
「…うわあっとっとっ!な、なんだよ、まだ何かあんのか!?」
急に呼び止められ、勢い余ってコケそうになるのを必死に踏ん張る悟空。
額から流れ出る汗を拭いながら、振り返った。
「先程連れて行かれた娘も助けてやって欲しいのだ。あやつだけは死なせてはならん」
「ん?別にいいけど…神さま、そいつの事も知ってんのか?あの何とかっちゅう変なヤツのヨメじゃねえって事は分かるけどよ……」
「…いや、知人というべきか…話すと長くなるのでな、全てが終われば本人から直接聞けば良かろう」
「ふーん…とりあえずそいつも一緒に取り返ぇしゃあ良いんだな?」
「…うむ。すまぬが頼んだぞ」
そう言うなり、地球の神は目線をガーリックに向け、杖を握りしめた。
「……相談は終わったようだな。此れ程わたしを退屈させたのだ。存分に楽しませて貰おうか」
ガーリックは待ちくたびれたと言わんばかりに、階段から立ち上がる。
「ガーリックよ、今この場で長年の因縁の決着をつける。覚悟はよいな?」
「覚悟するのは地球の神、お前だ。わたしの手によって世界が支配される時をあの世で見ているが良い!」
「お前の好き勝手にはさせん!」
互いに散らせる火花。とてつもない緊張感が漂っている。
戦いの幕が今、開かれようとしている。
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