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企画
それは変わらない(長編銀子さん)
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※デコボッコ教の話です
※軽い百合的な文章がございます。苦手な方はお気をつけください。
この話とちょっと繋がってます。
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過激な布教活動で広域指名手配中のデコボッコ教。
その教団が開発したホルモンを逆転させてしまうウイルスにより、かぶき町の人々は皆男女が逆転してしまう悲劇に見舞われた。


その日、名前は志村妙のもとへ遊びに行っていた。
のんびりと茶菓子をつまみながら、年下の可愛らしくもたくましい女友達とおしゃべりをする楽しい時間を過ごしていたのだが、
「今日はゴリラも出なくて平和だわ」なんてお妙が笑ったその時、
突然つけていたテレビが中継に変わり、かぶき町が大パニックになっているとのニュース速報が入った。
どこのテレビ局も同じだった。かぶき町で大変なことが起こっている。
名前とお妙は絶句して目を合わせると、一度頷きすぐさま万事屋へ向かったのである。

幸運にもすぐに、男になった九兵衛、神楽、定春、眼鏡の柄の部分があろうことかピンクになってしまった新八、
そして女性化した銀時と会うことが出来た。

「銀さん……」

豊かになった胸、悩ましげにくびれるウエストライン、きゅっと引き締まった太ももに、ロングブーツが映えている。
心なしか、しなやかになったような髪は相変わらず天然パーマだが、毛先の跳ねた部分が可愛らしい。
長い睫の下の憂いを帯びたような瞳は、落ち着いてはいるが自身の変化に少々戸惑っているように見えた。

「怪我がなくてよかった」
「名前、俺さ、……女になっても超イケてるって思わねえ?」
「ふふ、うん。銀さんは男性でも女性でも素敵なんだね」

名前の返答と笑顔にほっと安堵の息を吐いた銀時は、自分のものとは思えないような細腕で名前をおそるおそる抱き寄せる。
下着をつけていない、柔らかく、それでいて張りがある銀時の胸が、名前の着物に隠れた胸に当たる。
ふに、と柔らかくぶつかりあう初めての感触。
今までは、筋肉の乗った硬い男の胸にその柔らかさを受け止めていたが、今は全然違った。

「オッパイって、自分についてると案外邪魔なんだな」
「とても綺麗だよ、銀さん」

銀時が、名前の言葉にゆっくり微笑み名前の唇に唇を重ねる。名前が漏らす吐息は、いつものように甘かった。

「ちょっと、あんたらこんな道の往来でやめてくださいよ!」
「いいじゃねーかぱっつぁん、みんな自分の性別が変わってまだワーワー騒いでやがるし、女同士のキスなんざ珍しいモンでもねェから目立ちゃしねーよ」
「目立つわ! つーか少しは恥じらいを持てェェェェ!!!」

そう突っ込みつつ、新八は少し安心していた。
女性になっても銀時は銀時で、名前は女性になってしまった銀時達を、さして驚いた様子を見せず普通に受け入れている。
普段はほわんと微笑んで、どこまでも優しく自分達を柔らかな雰囲気で包んでくれる名前だが、この胆の据わり方はさすがだ。

名前がそっと銀時の手を取る。銀時は名前に笑いかけながら、その手を握り返す。
二人の笑顔には、無理したところもぎこちなさも全く無い。あるのは愛情、それだけだった。

「新八君、妙ちゃんも落ち着きたいだろうし、ここは場所を変えないか」

九兵衛の提案に、全員でレストランへと向かった。
それから、色っぽい姿になった近藤と会い、なんやかんやで真選組や月詠、猿飛らと共にこの騒ぎを収めるため動いたが、
結局地下にいた自分達以外の人間達が元に戻っただけという結果に終わってしまった。

銀時たちは、元に戻るあてのないまま、日常へと戻らざるをえなくなったのである。



女同士の交わりは、挿入し、出したら終わりという一定の目安はないが、
そっと優しく愛撫しあい、ゆるりとした快感の波を漂っていく、
その身体が溶けて二人でひとつになっていく感覚も、なかなかいいと銀時は思った。
名前を求めてしまう心は、女になっても変わらない。

「しっかし、この俺が女になっちまうたァ、人生何が起こるかわかんねーもんだな」

上半身だけ起こした銀時は、くたりと横たわる名前に手を伸ばし、汗で張り付いた髪を指で掬った。
女らしい仕草などできない銀時は、何も身に付けていない状態で大股開きで布団の上に座る。
そして決意を秘めた目で名前を見つめた。瞳に、心に名前の顔を深く刻み付けるように。
すると眠っていると思った名前の瞳がゆっくりと開く。

「ねえ銀さん、いつ発つの?」

その言葉に銀時は驚く。名前はわかっていたのだ。
銀時が、誰にも言わず、まだ名前が眠っている早朝にでもここを発とうと思っていたことを。
全ては、自分を、自分達を取り戻すために。
いつ戻ってこれるかわからない。危険な旅になるかもしれない。名前は安全な場所に居てほしかった。

「私も行くからね」
「……名前、おめー、」
「迷ったよ。私がついて行っても、きっと銀さんの足手まといにしかならないって。でも、」
「俺と一緒にきてくれんのか?」
「うん。留守を守るのは得意だけど、たまにはついていったっていいでしょう」
「ああ、そーだな」

いま離れたらいけない気がして、という名前の呟きに、銀時も頷いた。
胸に満たされていく熱い気持ちのままに、名前に口付ける。

「お前さんがいりゃ俺はいつだってどんな姿だって坂田銀時でいられるよ」

銀時の言葉に微笑み、名前は銀時の左手を取る。
あの光のせいで、性別はおろか、服装や、身に付けていた結婚指輪まで変化した身体のサイズぴったりになっていた。

「病める時も、健やかなる時も、楽しい時も、悲しい時も、女性でも、男性でも、私は銀さんを愛してる。それは変わらない」

名前はゆっくりそう言うと、銀時の薬指の指輪を指先で撫ぜた。


そして銀時は、近しい人々に自分捜しに行くなどと適当に告げ、
デコボッコ教団の動向を探り自分の身体を取り戻すため、
ついでに名前と新婚旅行気分も味わっちゃおっかなーなどと思いつつ、
銀時はどこまでも銀時らしい表情で、名前を連れて地球を旅立っていった。




□長編ヒロインで、凸凹編のお話

紅葉さまリクエストで銀子さん夢書かせていただきましたー!
銀子さんってものっすごく可愛いですよね!中身はマダオなのにあんなフレッシュな笑顔まぶしすぎます!
デコボッコ絡みの話はいつか書きたいと思っていたので、リクエストいただけてとても嬉しかったです。
本当にありがとうございました!

2015/11/15
いがぐり

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