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企画
不憫と幸せ紙一重(新名)
「ほら、来週試合あんじゃん?アンタが声援送ってくれたらオレ、スゲー張り切っちゃうんだけどなー」
「がんばれがんばれ」
「今じゃなくて!試合の時に決まってっしょ!旬平くーん愛してるー!ってさ。そんでオレが勝ったらハグして褒めてよ」
「ははは」
「いや笑いを取るために言ったんじゃなく、マジで」
「だって不二山くんに旬平くんの試合見に行くの止められてるんだもん。良い所見せようとしてバカやらかすからって」

彼氏(オレ!このオレ!)の前で平気な顔して他の男の名前を出す名前ちゃんが、俺に向かってにこりと笑う。
大学に入って数ヶ月。名前ちゃんは雰囲気が少し大人びた気がする。
高校生と大学生。たった一年しか年は違わないというのに、すっげー遠いところまで行ってしまった気分だ。

「嵐さんの許可が下りんの待ってたら、オレの引退試合までこれないんじゃね?」
「それは困っちゃうね。旬平くんには頑張ってもらわないと」
「毎日これでもかって程頑張ってるし」
「肉体的な面だけでなく精神的な面でもね」
「…押忍…」

オレと違って名前ちゃんのこの余裕。
なんかいまだに先輩っぽいっつーか、実際先輩なんだけどもっとオレにこう…デレッとしてくれてもいいんじゃないですかね!?

「名前」

心臓バクバクさせながら、まるで小動物のような瞳できょとんと俺を見る名前ちゃんの頬に手を滑らせる。
名前ちゃんは外でこんなことされてるにも関わらず、ゆるやかに微笑むだけで驚いたりはしていないようだ。

「どうしたの?旬平くん。琉夏くんみたいなことしちゃって」

…ああまた他の男の名前。
わかってますよ。
桜井兄弟が名前アンタにとって特別大事な幼馴染っつー存在だということは。
入学した時から有名で、オレもそのことはじゅうぶんわかってて、嫌というほど絆を見せ付けられて、それでも諦め切れなくてアンタに告白した訳ですからね。

けどやっぱ面白くねーよなー…。
オレの俯きがちになる曇り顔を、ひょこっと大きな瞳が覗き込んでくる。
何も言わないけど、オレをじっと見つめてくる名前ちゃんは、呆れ混じりの微笑を浮かべ“もう”と薄く色の乗った唇だけを動かした。
そしてオレの考えを全て見通したかのように笑い、また少し顔を寄せてきた。
オレは引き寄せられるままにその唇にオレの唇をちょんと重ねる。
緊張も照れも無い、ごく普通の挨拶みたいなキス。
けどやっぱその柔らかさが離れた瞬間湧き上がってくる浅ましい飢えにも似た名前ちゃんへの欲望。
それに気付かれたくなくて、オレは顔を見られないように名前ちゃんをぎゅうぎゅうに抱きしめた。

「…唇を許すのはオレだけにしてよ」

オレの背にするりと細い腕が回される。
くすくすと楽しげに笑い声を漏らしながら、名前ちゃんは「当たり前じゃない」と言った。
信じていないわけじゃない。
ただ、自分の情けなさに劣等感を持っているだけだ。
だって名前ちゃんの周りは眩しい存在がいっぱい居るし。
嵐さんにはいつまでも敵わない。
桜井兄弟との絆に勝てるとも思えない。
こんなオレでもいいのかって、時々ミジメになるんだよな。

「…っと、俺ってカッコワリィ」
「そうだね」
「そこは恋人として否定するとこっしょ!」
「でもそういうところも好きだよ」

名前ちゃんの言葉に泣きそうになった。
ああ神様、オレこの人の傍にずっと居たいです。
好きという気持ちは誰にも負けないつもりなんで、ひとつよろしく見守っててください。
ついでに名前ちゃんを狙うヤロー共がこれ以上増えませんように。
神様。そこんとこマジでよろしく。



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せいや様リクエスト“恋人設定、冷静なバンビと不憫かわいい新名”でした!
もっとチクチク追いつめた方が良かったですかねフフフ。
彼ならもっと耐えてくれそうでしたが、今回はほどほどに不憫でちょっと幸せな新名くんで。
今回は。←!?
可愛くなっているかどうかはちょっと自信ないのですが、楽しんでいただけたら嬉しいです♪
せいや様、今回も楽しいリクエストをどうもありがとうございました!
いがぐり

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あきゅろす。
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