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企画
玉乗り(土方)


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銀魂短編「綱渡り」の続編です。
微妙に性的描写があるようなないような感じですので、苦手な方はご注意を!
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土方十四郎という男は、良くも悪くも仕事一筋の人間だ。
そのおかげで恋人になれたはいいが、私に対する気持ちを実感できたことなどなかった。

「ゃ…も、無理、っ」
「まだイケんだろ。また忘れられちまわねーように、しっかり名前の身体に俺のこと教え込んでおかねーと気が気じゃねェんだよ」

身体を繋げている時にだけ、ああやっと自分だけを見ていてくれると安心できた。
しかしその安心はとても儚いものだった。
引き止めても引き止めても、朝が来るのを待たずに去るぬくもりに涙するうちに、そんな安心なんてどうにもならないのだと、悟ってしまう羽目になるのだから。

「好き、好きよ、十四郎、ぁ、ぁ、」
「んな締めんなって…くそ、名前…っ、く」

言葉で、メールで、態度で、私は十四郎に一生懸命好きだと伝えてきた。
そして私のことを好きになってもらえるよう努力してきた。
けれど、そんな私の頑張りはいつになっても十四郎に届く気配が無くて、メールの返事すら返ってこないそんな空回る自分に疲れてしまった。
きっと、メールなんて打たない方が十四郎は仕事に集中できる。
きっと、私が一方的にしがみついていたから、だから好きになってもらえなかったんだ。
そう思って自分から一切の連絡を絶った。
一ヶ月。一ヶ月だけ待って、十四郎から連絡が来なかったら静かに終わらせようと、じっと十四郎からの連絡を待った。
そしてやはりというかなんというか、十四郎からの連絡は無く、私は諦めた。
そうしたら一気に楽になった。
だって向こうは私に未練などあるはずが無い。
ということは、私が気持ちの整理をつけさえすれば、それで二人は終わるのだから。

「…ねえ、私、明日も仕事だから一回だけだよって言ったよね」
「悪ィ」
「って言いながら何そのやらしい手の動き」
「後戯」
「いや後戯ならぎゅって抱きしめられるだけでじゅうぶん満足なんですけど」
「俺ァまだ足りてねーぞ」

電話番号を変え家を変え、そして髪形も変えた。
そうしているうちに、最後に十四郎を見てから三ヶ月もの月日が経っていた。
次は新しい恋だ。そんなことを考えていた矢先のこと。
偶然とは凄いタイミングで人の隙を着いてくるものだ。
十四郎に会ったのだ。本当にバッタリと。

「この続きは十四郎が次に来た時に」
「だから護衛の仕事で一週間は来れねーって言ってんだろ」
「それは聞いたけど、一週間ならどうってことないじゃない」
「いや、また名前に勝手に別れたことにされちゃたまんねーんだよ」
「もう大丈夫だってば」

久々に見た十四郎はどこか疲れていて、だけど私を見つめる瞳は変わっていなかった。
もう、この人に抱かれることはないんだな、未練がましくそんなことを思いながら、でも顔には出さず会釈だけして通り過ぎようとした。
けれど十四郎は通り過ぎることを許してくれなかった。
しっかりと掴まれた腕、私の言葉に目に見えて狼狽するその姿、そして焦り気味に紡がれた私への気持ちに、一度けじめをつけたはずの感情がいとも簡単に解かれてしまった。

「毎日メールすっからな」
「いやいいよ。だって十四郎のメールって“残業”とか“これから昼食”とかの一言ばっかりなんだもん。しかも朝昼晩送ってくるし」
「おめーが前にメール欲しかったっつーから!」

私達の関係は再会してから少し変わった。
十四郎は相も変わらず仕事一筋の人間で、だけど私に対して自分の気持ちを不器用ながらぎこちなく懸命になって伝えようとしてくるようになった。

「すごく一生懸命だね」
「…たりめーだ。そんだけ惚れてんだよ、名前に。最初っからな」
「前は気付けなかった。ごめんね」
「きちんと伝えようとしなかった俺にも責任はある」

お互い様だね、そう言いながら鼻先を触れ合わせ、そっと微笑みあう。
今は幸せで満たされているけれど、これから先、きっと色々なことで意見が合わない時もあるだろう。喧嘩だってするだろう。
だけど今の気持ちを忘れなければ、きっと乗り越えていけるんだろうと、そう漠然と確信していた。




美空様リクエスト
“土方で「綱渡り」と同じヒロインの話”
でした!
前は軽い感じで恋人達の亀裂を書いていましたが、今回は内情を焦点として書いたので少し重くなってしまったかもしれませんごめんなさい。
しかしこの土方さん、もう必死ですねフフフ。
話を考えているととても楽しくて、一気に書いてしまいました。
リクエストしてくださって本当に嬉しかったです!!
美空様、どうもありがとうございました♪
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
いがぐり

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あきゅろす。
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