企画 変化(琉夏) 「琉夏くんは十年後、何をしてると思う?」 「わからない。けど名前といる。ひょっとして4,5人くらい家族が増えてるかも」 きっと、高校時代にこの質問を琉夏くんにしていたら、全く違う答えが返ってきたんじゃないかと思う。 私と結婚してから、琉夏くんは今までよりもっと穏やかに笑うようになった。 遠くを見るようにさみしげに浮かべていた微笑じゃなく、毎日が楽しくて仕方がないって感じの生き生きとした笑顔だ。 「大家族だね」 「それにコウも入れたら最強だ」 「私はいいけど琥一くんは“俺は数に入れるな”って怒りそう」 仕事から帰ってきたばかりの琉夏くんは、私が渡した冷たい麦茶を一気飲みし、ぐいと手の甲で口を拭った。 猫のようにキラキラとした瞳が、悪戯っぽく私を見つめてくる。 早く言いたいな。うずうずして口を開こうとすると、先に琉夏くんが口を開いた。 「名前は十年後、何してる?」 琉夏くんの質問に直ぐに返事せず、私は冷蔵庫に麦茶のポットをしまってから琉夏くんに抱きついた。 心臓は、琉夏くんと初めてキスした時以上にドキドキしている。 「何人も産めるかわからないけど、確実に一人は家族が増えてるよ。それも来年には」 「え……コウ、来年ウチに引っ越してくるって?」 「違うよ琉夏くん、琉夏くんがお父さんになるってこと」 「そっちか。………あのさ、名前さっきのもう一回言って?」 「琉夏くんお父さんになるんだよ。私ね、赤ちゃんできたの」 「やった!」 琉夏くんが私の両手を強く握った。何度も雨のように顔中にキスをくれる。 けれど、抱き寄せる腕は優しすぎるくらい優しかった。 まるで触れることを躊躇っているかのように。 「こわいの?」 「大事過ぎて、どう触れていいかわかんないや」 「いつも通りでいいよ」 ふう、と身体中の緊張を吐き出すように、琉夏くんは私を抱きしめてくれる。 十年後、私達は何をしてるだろう。 赤ちゃんは男の子かな、女の子かな。 「でも名前、女の子だったら大変だ」 「なんで?」 「俺とコウ、結婚式できっと泣く」 「ああ……ありそう」 十年どころか、二十年くらい先のことを考えてあれこれ悩んでる琉夏くんを見て安心する。 高校時代は危うい心を無邪気に見える振る舞いの裏に隠してた琉夏くん。いつもそんな琉夏くんを心配していた私。 一生懸命、デートに誘った。だんだん、仲良くなれたね。 それと同時に、琉夏くんのどうにもならない悲しみも知った。 琉夏くんの抱えてきた陰を、私にはどうにもできないけれど、 二人で積み重ねた時間の中に、少しずつ溶け込んでいってたらいいなと思う。 □ルカ。バンビ。娘。コウも続き こちらのリクエストで書かせていただきました〜。 リクエストどうもありがとうございました! 2015/10/20 いがぐり [*前へ][次へ#] [戻る] |