silent child 10 いつもの帰り道。 背中には、いつもよりも軽い学生鞄。隣には大和。 家族と一緒に、車で帰る人が多いのか、通学路には、いつもよりも人が少なかった。 「あーあ、終わっちまったー。中学も早かったよなぁ。終この間、小学校卒業したばっかな気がすんのにさぁ。」 「うん。何だか……、寂しいよね。」 土手を歩きながら、ちょろちょろと流れる川を眺めれば、何となく寂しさが増してくるような気がした。 小学校中学年から今までずっと、同じクラスで過ごした大和。 4月からは、別々のクラスで過ごすことになる。 「高校も、また一緒に通おうな! クラスが離れたって、学校は同じなんだからさ。 いつの日か憲太が、「この子も一緒に帰っていい?」なーんて、友達連れてきたりしてな。ははは、そうしたら面白いな! うーん、だけどやっぱ、ちょっと寂しいかも。」 笑いながら言ったくせに、最後はちょっと眉を下げて、複雑な顔をする大和。 「僕にそんなこと、出来るのかなぁ。」 (友達か……) 新しい学校に行けば、新しい出会いがある。矢口先生がそう言っていたっけ。 「出来るよ。」 自信たっぷりの大和の声に、ちょっとドキッとした。 大和の笑顔が、太陽よりも眩しく見える。 絶対に出来ると確信しているかのような、力強い言い方。そんな言い方されると……、僕まで、本当に出来ると思えてくるんだから、不思議。 「憲太なら、絶対に出来るよ!」 「ありがとう。僕……、頑張る!」 新しい学校に新しいクラスで――、新しい僕になれるように。 だって――、喋れなかった中学生の僕には“さようなら”をしたんだから。 「応援しているから。 誰よりも近い場所、憲太の隣で。」 こんなこと言ってくれる大和のことが――、大好き。 大好きな人は沢山居るけど……、大和はやっぱり“特別”。 誰よりも早く大好きになって、誰よりも長い間大好きで、誰よりも頻繁に大好きだって思って、それに……、これからもずっと大好きでいる自信だって、こんなにも溢れてくるんだから。 大和は僕の――、一番大好きな人。 「あのさ、その……、前、憲太言ったろ? 俺のこと……、何つーか、その……、えっとさ。」 大和は急に、下を向いてもじもじし出した。 こういう大和は珍しいから、どうしていいのか分からなくなる。 僕はとりあえず、大和をじっと見つめていた。 「だからさ……、そのぉー、言ったろ?俺のこと……、――――だって。」 ぼっと火の吐いたかのように真っ赤になる大和。 最後の方だけ、声が小さすぎて聞き取れなかった。 「え?何?」 [*前へ][次へ#] [戻る] |