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silent child
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 またもやデジャビュ。
 でも今回は、本当に聞こえなかったんだ。

 さんさんと日光が温かく降り注ぐ中――。



「俺も憲太のこと……、大好きだからーーっ!!」



 大和の声が響き渡った。

――だいすき。
 親愛を表す4文字。


「大和。」
 と、声を掛けた時には遅かった。
 大和は真っ赤な顔したまま、全速力で駆けていく。

 既に大和との距離は、数百m。
 ちっとも止まる気配のない大和の背中は、どんどんと遠ざかっていく。


(大和ばっか、ずるい)
 僕だって、大和に伝えたい。


 僕は、ちゃんと知っているんだ。
 自分の口で紡ぐことが、大切だってこと。
 だから――、後悔しないように……。


――喉に引っ掛かった言の葉を、音に乗せ、君まで飛ばせ!


(僕だって、大和のこと……)



「だいすきーーーーっっ!!!!」



 僕は力の限り叫んだ。
 遠く離れてしまった大和に、確りと届くように。

 言い切ったと同時に……、全力疾走していた大和は、盛大にこけた。
 それを見て、僕も盛大に笑った。真っ赤な顔のまま。


 何事かという顔をして、僕の方を振り返る人達。
 伝えることに夢中で、周りの人達なんか見えちゃいなかった。
 僕に見えていたのは、唯一人……、大好きな大和だけ。


 顔が燃えそうなくらい熱いんだけど、そよそよと吹く適度な風が、すっきりと爽快な気分にさせる。

 不思議と、いつもよりも気持ちがいい。



――少しは新しい僕に、なれたのかな?





第7話 --完--
  





silent child
(中学生編)
― end ―




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