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幸せの法則
*リトエイ 沢×あか
*サイト一萬打記念文
*沢登別人注意報


〜〜〜〜〜


「西くん」


それは、とある日の風紀会議室でのこと。
名前を呼ばれた“西くん”こと私、西村あかりは、それまで睨めっこしていた資料から目線を外し、向かいに座っている人へと移す。


「どうかしたんですか、沢登先輩?」


呼び掛けの意図が掴めずに首を傾ける。
すると、そんな私の様子を見た先輩の口から漏れたのは、やや大げさなほどの深いため息だった。


「…西くん、君はそんな文字ばかりの紙を見ていて楽しいのかい?」



幸せの法則



「たっ、楽しい訳ないじゃないですか!!」


バンッ、と大きな音を立ててゆれるテーブル。怒りを込めた叫び声をあげて、立ち上がる。


「なんだい、そんなに大きな声を出さなくとも僕は耳はいい方なのだか…」


沢登先輩のツッコミが的外れなのはいつものこと。だけど、それを弟のようにサクっと流せるほどの技術をまだ私は習得していない訳で。



「違います、私は怒ってるんですッ!!」

「……西くん、君は怒っているのかい?」

「今言ったじゃないですか!」

「あぁ、それもそうだね。ところで、今の会話のどこに怒る要素があるというのだい?」



敢えて怒りを露(あらわ)にしている私とは対照的。沢登先輩は落ち着いた様子でじっとその様子を見つめている。
先輩は怒りの原因を本当に理解していない。そう悟った私から漏れたのは小さなため息。
もはやこれ以上の攻防戦は馬鹿馬鹿しいだけ。
行き場のない疲労を身体いっぱいに感じながら、仕方なく再び椅子に腰をおろす。


「もう…!沢登先輩が“西くん、去年の風紀委員の予算案を捜したまえ”って言ったんですよ?」

「おや、そうだったかい?…それにしても君には物真似の才能はないようだね、西くん」

「余計なお世話です!」



からかうような口調が悔しくて、怒り最大限アピールで顔をぷいと背ける。
私をこき使った分、少しは困って反省してください!なんて意を込めたつもりだった。
けれど、チラリと横目に見れば、何かを思いついたようなイタズラっぽい瞳。やりと不適に笑う先輩とカチリと視線が重なった。



「それなら、西くんは何をしているときが一番楽しいんだい?」

「一番楽しいとき、ですか?」



突拍子もない問い掛け

だけど、何だか妙にその言葉に惹かれるものを感じて、とりあえず持て余した怒りはほどほどに、私は答えを探すことにした



(楽しいこと、楽しいこと)

(……あっ!)



「やっぱりお父さんとふみとご飯を食べているときです!」



沈黙も瞬間に、すぐに弾き出た答えを満面の笑みで答えてみせる

大好きな家族(ふみは時々いじわるだけど)に、大好きなお父さんの手料理
楽しいし、おいしいし、我ながらいい案だと思った

けれど、嬉々と浮かれる私とは対照的に、沢登先輩の顔が更にいじわるい笑いをもらす


「あぁ、そうなのかい……ほぅ、それはそれは…」

「なっ、何なんですか?!その相づちは……!」


含みの込められた返事に思わず怯む私を余所に、先輩はにんまりと口の端を釣り上げた



「僕といるときよりも、ふーみんといるときの方が君は楽しいのだね?」

「へっ?!」



思いがけない言葉
私が驚いて思わず立ち上がってしまったのを特に気にした様子もなく、更にツラツラと言葉を紡いでいく



「そうかい、僕は西くんといるときが一番楽しいと思っているというのに」

「え、あの、その…」

「なのに君は踊り子の僕ではなく鬼っ子を選ぶ、と…」

「……お、踊り子関係ないですよね?」


私にしては的確だったツッコミを敢えてスルーし、沢登先輩が嘆いたように崩れ堕ちる

まさかこんなコトになるだなんて想定もしなかったものだから、何とか取り繕おうと慌てふためきながら必死に言葉を探そうとした

けれどそんな私の目の前で更には先輩が踊りだしたものだから、ますます私の焦りはピークまっさかり


(ど、どうしよう…)

(この際、私も一緒に踊れば…!)



ぺしっ


「きゃっ?!」

「まったく、冗談に決まっているだろう」

「え、冗談…?」



ふいにこづかれたおでこを両の手で押さえながら、そっと視線を先輩に注ぐ
行動と言動の意味がわからなくて首を傾げれば、クシャリと髪を撫でられた



「誰かと比べるだなんて、そんなことは馬鹿げた事は僕の趣味ではないからね」


してやったり、と満足そうに笑うその人は、もう先程のようにいじわるな顔じゃない

優しい声、髪にふれる温かいぬくもり

こづかれたおでこが、頭が、何だかクラクラする



「幸せ、なんだ…」

「西くん?」

「沢登先輩との時間は私の中の“一番幸せなとき”なんです」



今度は私が笑う番

(理由は今だにわからないけど、)急に耳までも真っ赤になってしまったとても貴重な先輩の姿に、弛む頬と高鳴る鼓動を感じながら、再びこの身に降り掛かる幸せに笑みを零したのだった


(お小言は珍しい先輩に免じて許してあげます!)


END


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