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恋とはどんなものかしら?
*アラロス カーティス×アイリーン
*サイト一萬打記念文
*ギャグなような甘なような…?



〜〜〜〜〜


「プリンセス、」


優しげな声色で私を呼ぶ。
その人は犯罪大国ギルカタールでも稀にしかみられない“殺しの天才”と呼ばれる男。


「何、カーティス=ナイル?」


その声色とは裏腹にカーティスは真面目な顔つきをしているものだから、自然と身体が身構えてしまう。

"嫌な予感がする"

ギャンブルや賭事では全くと言ってもいいほど当てにならない私の直感も、こんなときだけは十中八九当たったりするものだから質(たち)が悪い。
そんな警戒心剥き出しの私を余所に、カーティスは意味のわからない事言い放ったのだった。



恋とはどんなものかしら?



「カーティス、今なんて…?」

「だから、“恋とはどんなものなのか”と尋ねたんですよ」


カーティスの口から飛び出した単語が信じられなくて聞き返せば、呆れたように言葉を返された。(なんだか私が悪いみたいな言い方じゃない、)


「どこかで頭でもぶつけたの?」

「いえ、ぶつけていませんけど?」

「拾い喰いでもした?」

「まさか、そんなコトするわけないじゃないですか」

「それなら、」

「……さっきから何なんですか、貴女は。何か言いたいことがあるなら、はっきりと言えばいいじゃないですか」


回りくどい聞き方が癪に触ったらしく、イライラとした様子でカーティスが突っ掛かってくる。このままでは堂々巡りになるのは火をみるよりも明らかだったし、元より私は貴重な時間をこんなくだらないやりとりに費やすつもりなどさらさらないのだ。


「それじゃ、遠慮なく言わせてもらうわね。気色悪い」

「なっ…?!僕のどこが気色悪いと言うんですか!これでも毎日お風呂には入ってます」

「違うわ、カーティスから恋なんて言葉が出てきたことに対して言ってるのよ。あんたが恋をしているところなんて私には想像できないもの」

「……プリンセス、僕だって人間ですよ?人を好きになることぐらいきっとあります」


心外だと言わんばかりに不服そうな視線。相手が普通の人ならば、確かにこれは私に非があるだろう。


「あんたが普通の人間なら、ね」


しかし相手はかの有名な暗殺者、カーティス=ナイルなのだ。


「僕は普通じゃない、と?」

「ええ。貴方は普通から一番遠い人間でしょう?」


そんな事、言うまでもない。
“普通の暗殺者”なんて、このギルカタールでなくても存在しやしないに決まっているのだから。(普通っぽい暗殺者なら今まさに目の前にいるけれど)


「そう、ですね。僕は普通からあまりにもかけ離れている」

「それなら、どうして…」


どうやらその辺りは本人も理解しているらしい。
あっさりと認めた、その割には妙に何か言いたげな声色に感じたのは確かな違和感。


「普通の人間じゃない。だからこそ、恋とは何なのか知りたいんです」

「……意味がよくわからないのだけど」

「貴女のいう“普通の人”というのは、恋をするのでしょう?」

「えぇ、まぁ、そういう人たちは自然に誰かを好きになるんでしょうね…」


別に普通と恋をイコールする必要もない気もするが(お父さまとお母さまがいい例だ)、これ以上話をこじらせるのも面倒だったのでもはや私はカーティスへのツッコミを放棄した。
しかし、すぐさま私はその事を後悔することとなる。


「だから知りたいんです」

「……あんた、普通になりたいの?」



(更に面倒になった)

鳴呼、どうしよう、ここは何かツッコミを入れるべきか。否、そんなことをすれば後々にもっと面倒が増えてしまうではないか。
いやしかし、このまま流してしまえば賭けに勝って自由になった後にも僕も普通になりますとか何とかで私に付いてくると言いだしかねない。いや、カーティスなら絶対に言い出すに違いない。

(お願いだから付き添いだけは…!!)


「いいえ、そういう訳ではありませんが」



とりあえずセーフ…!!

よかった、これで賭け後の人生(もちろん勝つこと前提で)も安心して普通になれるわ。
そう、ほっと胸を撫で下ろせたのはほんの束の間。


「……でも、少し気にはなりますね」

「え」


まずい。
この状況は非常にまずい。

頭の中に浮かぶのは必死に普通を追い求めて旅をする私と、その隣で涼しい顔のままことごとく普通を潰してゆく凄腕の暗殺者の姿で。(あぁ、なんて笑えない冗談だろう!)


「普通なんてきっとつまらないわよ?!」

「まぁ、そうかもしれませんが……。でもプリンセス?貴女が言ったんですよ“普通がいい”って」

「たっ、確かに言ったけど、それは私自身の価値観の話だわ!カーティスは関係な…」

「いいえ、関係大ありです」

「なっ?!ど、どうして関係あるのよ?!」



互いに譲らないまま、しばしの沈黙がおりる。

(途中、多少墓穴を掘ったのは認めるけれど)やはりどう考えてもおかしな話ではないか。
私の望みがイコールでカーティスの望みになるだなんて、そんなのはただのこじつけで理由にはなりもしないというのに。(それなのに関係大ありだなんて、)

何の音もしない冷たい静寂。先にそれを破ったのはカーティスの方からだった。



「……僕が、貴女の傍にいたいんです」

「…………は?」



私の口から飛び出したのは我ながらなんとも情けのない間抜け声。発せられた言葉の全てが読み込めなくて固まっている私など余所に、カーティスは更に熱を上げて言葉を続けてゆく。



「暗殺者で在る限り、きっと僕は普通にはなれません」

「けれど、暗殺以外の事ならもしかすると普通に近付けるかもしれない。そう思ったんです」

「ちょ、ちょっと待…」

「普通に近づけば、契約が終わった後でも貴女の傍にいられる。だから…」

「ちょっと待てって言ってるだろ」

「なっ、何を怒ってるんですかプリンセス?!」


出来るなら、今すぐにでも目の前の男の口を両手で塞いでしまいたいぐらいだった。
しかし、私とカーティスとではあまりにも力の差が歴然としるので、結局その案はため息と共に封じ込めておくことにした。



「……カーティス」

「……何でしょう?」

「恥ずかしいから、もうそれ以上は言わないで」

「どうして恥ずかしがる事があるんです」


やっぱり貴方に普通なんて無理よ、そんな本音を再び喉奥へと飲み込む。
ここまでくるともはや鈍感なんて可愛いものじゃない、犯罪だ。(まぁ、彼の本業に比べれば対したものではないかもしれないが)



「だから!その言い方だとまるで、」

「まるで?」

「まるで、愛の告白……っ!」



口にしてはっとする。

(私、今なんて…)



「愛の、告白……?」

「なっ、何でもないわ!!今言ったのは忘れて」



(穴があったら大金を払ってでも入りたい…!)

首を傾げて私の失言を復唱するカーティスの姿を前に、もはや頭の中は大パニックだ。

(馬鹿げている、)

恋を知らない男が愛の告白だなんて…



「……あぁ、そうだったのか」

「えっ…?」

「プリンセス!!!」

「はっ、はい?!」


何かぶつぶつ言いだしたかと思うと、いきなり私を呼んだカーティスに思わず肩が大きく揺れる。
怒られるか、馬鹿にされるか、そのどちらかだと思って腹をくくろうとした私の目の前には、そのどちらにもそぐわない満面の笑みを携えた男の顔。

――嫌な、予感がした。




「好きです」

「………は?!!」


カーティスから紡がれたのは予感以上の言葉。いよいよ混乱してきた私とは裏腹に、まるで熱に浮かされたかのように男がまた話しだす。


「あぁ、どうして今まで気付かなかったんだろう…!プリンセス、僕はずっと貴女に恋をしていたんですよ!!」

「おっ、落ち着いてカーティス?!」

「貴女を見ると苦しくなったり、嬉しくなったりするのは、恋をしていたからだったんですね?!」

「そ、それは病気じゃないの…?」

「恋の病、ですね」

「………カーティス。あんた、本気で病院に行くべきだわ」


否、むしろ私が行きたいくらいだ。
勘違いだと否定しようにも、笑顔の奥に垣間見えた真剣な眼差しに不覚にも見惚れている間に言葉をどこかへなくしてしまったようだ。(これでは、もう逃れられそうにない)


楽しげに笑う暗殺者。
非日常に翻弄されるプリンセス。

普通から程遠い状況だけれど、まぁ、こんな人生も悪くないわ、なんて一瞬でも考えてしまった自分に向かって、私は一人盛大にため息をついた。



FIN


[おまけ]

「どうです?恋をしている僕は普通に少しでも近づきしたか?!」

「更にかけ離れたわよ」

「まぁ、普通に近くても近くなくても、もうどうでもいいです」

「どうでもいいの?!」

「ええ。僕はプリンセスを一生離すつもりはありませんから」

「…私に拒否権はなし?」

「拒否、するんですか?」

「…………………しないわ」

「なら、問題ありませんよね?」

「ない、のかしら…?」

「ええ、ありません」

「…………………やっぱり大ありでしょう?!」


END





カーティスの(最早面倒にすら思えるほど)まっすぐな性格が大好きです。
まぁまっすぐの方向性が明らかに間違ってますが、石田ボイスってだけでオールおっけーというね←
プリンセス、超頑張ってください…!!

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あきゅろす。
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