Subsequent Descent 9 慶喜は慌ててトンファーをいなした方のグローブの甲を見た。 「――ひ」 「ひ?」 「ひびが入ったぁぁあ!?」 慌ててリングに戻したが見間違いなどではなく、やはりひびが。 焦る彼を尻目に、潤弥はトンファーと長ランをリングに戻した。 しばらくして、慌てていた慶喜の耳に潤弥の声が届く。 「――出て来なよ、リナーシタさん」 「え?」 慶喜は彼の視線の先を見るが誰もいない。 しかし何故か違和感を感じ、少し首を捻った時だった。 木の上からリナーシタが降りてきて、彼らのもとへと向かってきた。 「良く気づいたな潤弥」 「僕の家庭教師が来る時に毎回気配を消すから、気づくようになっただけさ」 「――あいつの前世、スタントマンなんだけどな」 無意識だったのだろう。 そう呟いたリナーシタは、明らかに違和感を感じている時の顔になっていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |