素直なアマノジャク【連載中】
3
…一瞬、聞き違いだと思った。
だから、
「え??」
咄嗟に聞き返してみたら、
「『好き。』って言った。」
また笑顔でそう返された。
もしかしたら、あたしに向かって言ったんじゃないのかも…。
と、まわりをキョロキョロしてみたけど…、
まわりのお客さんは各々に雑談したり携帯をいじったりしていて、こちらを向いてる人なんていない。
そして何より、
「『ちいちゃん』って呼んでいい?」
彼はニッコリ笑った大きな目を逸らすことなく真っ直ぐにこっちを見つめていたから、
間違いなくさっきの言葉は自分に向けられたものなんだと思わざるを得なかった。
でも、あたしはこの彼のことを『顔』しか知らない。
そして逆を言えば、この子もあたしのことをせいぜい顔と名前くらいしか知らないはず。
となれば、たどり着く答えは…、
「からかわないでください。」
遊ばれてるとしか思えないあたしは、これ以上ないくらいの営業スマイルでそう彼に返した。
きっとこの『告白』は、『賭け』とか『罰ゲーム』とか、そんなのだろう。
名前も知らない整った顔した男の子が平凡なあたしにわざわざ告白してくる理由なんてそれ以外に見当たらない。
そして、そういう遊びに自分が巻き込まれて気分がよくなる人はあまりいないだろう。
たいていの人は、よく知りもしない相手から遊びの告白の標的になんてされたら、イヤミの一つも言いたくなると思う。
もちろん、あたしもそのうちの一人で。
少しばかり、
…いや。
結構イラッときたあたしは、
「そういうのは、ホントに好きな人に言ってあげてくださいね。」
怒りが顔に出ないように笑顔を必死に作ってそう言ってあげた。
のに―…、
「好きな人に言ってるよ。」
彼は、かわいい笑顔を崩すことなくサラっとそう返してきた。
…ありえない。
ホントいい加減にしてほしい。
罰ゲームは告白するまでじゃないわけ?
ターゲットをオトすまでが罰ゲーム?
あたしがYESと言うまでこれはずっと続くの?
冗談じゃない…!
カッとなったあたしは、つい。
「バカにしないでよ!」
仕事中の店内だってことを忘れて机に手の平を叩きつけ、盛大に叫んでしまっていた。
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