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novel
聖ゲオルギウスの祝日[キッド×マカ]
色々捏造しています;





朝、7時半という虫酸が走るような時間に家を出た俺は、前までは不機嫌な面持ちで死武専へ向かっていたところだが、ウキウキしている。
リズとパティはまだ準備をしているようだった。
特にリズは化粧に時間をかけていた。

その二人を置いてまで最近、俺はつい早く死武専に行ってしまう。
それというのも、俺の…シンメトリーな恋人、マカに会いたいが故。

恋人と言ってしまうのがまだ恥ずかしく、しかし高揚感でニヤけてしまう程の時間しか経過していない。

が、れっきとした恋人だ。

ラ…ラブラブカップルだはっ!!!

む…いかん…こんな事ではキッチリカッチリしたマカの彼氏として格好がつかん!!

誰かに見られていなかったか辺りを見渡すと、マカとよく訪れる書店の前だった。

マカと、よく…

また顔がニヤける!!だからいかんというのに!!

と、窓に貼ってあるポスターが視界に入った。


「サン=ジョルディの日…?」





「おはよう、キッド。もしかして、待っててくれたの?」


俺は下駄箱の所でマカを待ち伏せ…ゴホンッ!待っていた。
微笑むマカが朝から眩しく気持ちいい。
彼女の方も、ソウルを置いて早く来るようになった。
ソウルには申し訳ないが、かなり嬉しい。


「おはようマカ。教室に行く前に、渡したい物があってな。」

「え?渡したい物って?」

「まぁ、ここでは何だし、中庭に行かないか。荷物は俺が持とう。」

「え、でもキッドも鞄持ってるし…」


俺はマカの荷物を軽く奪うように取り、片手を繋ぎ早足で中庭を目指した。


「ちょ、ちょっとキッドっ。」


中庭に着く頃には、マカの顔は不機嫌な色を見せ始めていた。

これは早々に用事を済ませねば。

校舎から死角になる中庭の、
端にある大きな木の影に入ってから繋いでいた手を緩めると、
少しだけ乱暴に彼女は離した。


「もう何っ?!いきなりっ。誰かに見られたらどうするの?!」


あぁ…そうだった、一応付き合っている事は内緒だったな。

彼女の顔が朱くなっている。
怒りと恥ずかしさが混ざっているようだ。


「あぁ、すまない。まぁ幸い誰ともすれ違わなかったし、許してくれ。」

「もうっ…。」


マカはすぐに許してくれる。
俺だからなのだと気付いた時は、本当に嬉しかった…。
それに、二人きりになると、皆と居る時よりも柔らかい表情になる。
いつも頑張ろうという気持ちが前に出ていて、友人達に頼ろうとしない。
けれど、俺にだけは気を許し、寄り掛かってくれているのだ。

俺だけに……


「キッドっ。」

「は!す、すまん…。」

「また一人の世界に入ってたろっ。」

「う…。」


口調は男前だが、グリーンのクリッとした瞳が不安そうにしている。

そうか…こんな所まで連れて来ておいて、俺が用件を言わないから彼女を不安にしてしまったんだな。

それは、俺の事が好きだから出る表情で。
不謹慎だが嬉しすぎる。

その不安げな表情に向けて俺はニヤけないよう微笑み、彼女の頭を撫でた。


「本当にすまない。愛しいマカを目の前にしているというのにな。」

「なっ…!むぅぅ…。」


そんな風に言われたら怒れない、
と、さっきより顔を真っ赤にして俯く彼女が、可愛くて仕方がない。

おっと、そろそろ本題に入らねば皆が登校してくる。


「マカ、渡したい物というのは…」


言いながら、鞄の中に入れていた包みを取り出す。


「これだ。」

「何?これ…リボンまで付いてるけど…。」

「あぁ、プレゼントだからな。」

「え?でも誕生日じゃないし…」

「今日はサン=ジョルディの日と言って、親しい人と本を贈り合う風習があるそうだ。だから、な。」

「キッド…。」

「受け取ってくれるだろう?」


差し出したプレゼントを見て、マカの表情が曇ってしまった。
一体どうしたといいのだ?


「私…何も用意してないよ…。」


しまった!!渡す事に夢中で、マカに気を使わせてしまった!!


「いいんだぞ!!マカは知らなかったんだろう?俺が勝手にあげたいと思っただけだ!だからマカが気に病む事は無い!」

「でも…」

「そうだ!スペインでは女性が男性に本を、男性が女性にバラを贈るそうだから、
逆になってしまうが、俺が本を渡して、マカは花をくれないか?」

「花…って言っても…。」


確かに、辺りを見回し咲いている花を見ても、プレゼントにするような一輪と呼べる花が無い。

どうしたものか…

あ。

プレゼントを持った手を彼女の腰に回し、もう片方の手で顔を引き寄せ、唇を重ね合わせた。


「んっ…ふぁっ、キキっキッド…?」

「こういう花もアリだろう?」

「っ…、馬鹿っ。」


ついに耳まで真っ赤になり、ぎゅっと俺の服を掴む可愛らしい彼女を、そっと抱きしめながら頭を撫でる。

マカも、心も、温かい…。


「ねぇ。」

「ん?」

「やっぱり、私も本を贈りたいよ。」


そう言葉にしながら俺の背中に腕を回して抱き着いてくるから、
きっと今、俺の顔も真っ赤だろう。

早まる鼓動さえも心地良い。


「そうか…では、帰りにいつもの書店に寄ろう。それならいいだろう?」

「うんっ!」


彼女の抱き着く力が強くなり、更に密着する。
う…嬉しいんだが…


「マ、マカ。」

「何っ?」


無邪気な笑顔で俺を見上げる。
あぁ…無防備過ぎるぞ…。

彼女の耳に唇を寄せて、囁くように声を出す。


「そんなに可愛いと、ここで襲うぞ。」


ビクッ!!と跳び上がりそうな程、マカの体が反応した。

もう、否定しようが無いくらい彼女が好きだ。


「もうっ!!早く教室行こっ!」


俺を引きはがし、先に行こうとするマカの腕を掴んだ。

またビクッと反応する。
ふふっ…まるで小動物だな。


「プレゼントを忘れているぞ。」

「あっ…。」


恥ずかしそうに受け取り、ありがとうと呟いたマカは、いそいそとプレゼントを荷物に混ぜていく。
そんな彼女の姿を見つつ、自分の鞄を持ってから片手を差し出す。


「さ、行こう。」


マカはゆっくり俺の手を掴み―――

かけたのに、サッと引き、


「だから!皆には内緒なのに手繋いで教室行ける訳無いだろっ!バカぁ!」


と、怒られた。

チッ。

早く皆に知らしめたいのに。
マカは俺のモノだとな。

まぁ、今は朱くなっている彼女を見て我慢してやろう。




この日、帰りに寄った書店でサン=ジョルディのポスターを見たマカに、
これを見たんでしょと突っ込まれ、少々格好悪い思いをしたのは、いただけないが。








後書き↓

思っていたより長くなりました…。
あれ…キスの予定なかったんですが…

最後とかキッドが何か凄い事になってしまった気がしますが、こういうしたたかなのも好きです。

荷物とか鞄とか中庭とか……
はスルーをお願いします;

題名が『聖ゲオルギウスの祝日』としたのは、
聖ゲオルギウスのカタルニア語表記がサン=ジョルディだというだけです、はい、無意味ですみません。

実は誰でも知ってたりして??




こんな駄文を読んでくださり、
ありがとうございました。

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あきゅろす。
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