novel
仮面の下はチェーンソー@[ギリ→?マカ]
ここは、とある森の中――――
何で俺がこんな事しなきゃなんねェんだよォ!!
この森の木がよく燃えようが燃えまいが、俺が木こりになる理由があるかよォ!!
「さ、ギリコ様。この木もお願いします。」
「もう散々切っただろォが!!」
「後、もう2、3本お願いします〜。」
「ギリコ様、目立ちますので一応このローブと仮面を…」
「もうお前ら帰れェ!」
「しかしギリコ様…」
「うるせェ!!」
ドボンッ!!
めんどくせェから川に落としてやった。
オラ、木も流してやるぜェ。
せいぜい乾かせや!!
ガサガサドサッ!!
少し遠くで、でかい物が落ちる音がした。
何だァ?でけぇ兎でもいんのかぁ?
そういや何となく腹減ったし、焼いて食うか。
そう思って草を掻き分け進むと、それどころじゃねぇ大物がいた。
「くっ…つ…。」
バカ高い崖下の草むらに、見覚えのある色素の薄い髪を二つに束ねたガキが、
女がよくする、内股を地面にベタッと着けた座り方で、右足首を押さえていた。
まさか、この崖から落ちたのか?それで足首だけ…なかなかやるじゃねェか。
コイツがいるって事は、魔武器や他の仲間がいるかもしれねェ。
戦ってもいいが今はその時じゃねぇし、とりあえず放っておくか。
と、思ったんだケドよぉ―――
「いける…絶対いける…」
ってなバカな事言いながら立ち上がろうとしてるバカなガキが目に映りやがって、妙に気になっちまった。
何故か判らねぇが、周りには他の職人の気配が無いし、暇潰しにからかってくか。
と、持っていた仮面とローブが目に入った。
これで遊んでやるかァ。
「どうかしたのか?お嬢ちゃん。」
ローブを頭から被って、仮面を付けた。
800年仕込みの演技力で、完全に俺だとバレねぇ。バレる訳がねぇ。
「え…?アナタは……鼻の穴のでかい猫……」
あ゛?!何だそりゃ!?
と、コイツのでっかい瞳に映りこんだ自分の姿が見えた。
俺は仮面を逆さまに付けちまってた。
ケド、これを猫と言っちまうのはどうよ。センスの欠片もねェなぁ。
まぁ、丁度いいんで猫って事にしておいてやる。
「あ…ごめんなさい。」
ちょっと空気を読んだらしい。
そういや、コイツ魂感知能力とかいうの持ってるらしいなぁ。
今のところは気付かれてねぇが、油断は出来ねェな。
「ちょっと足を挫いただけなんで…。」
そう言ったコイツの足が、徐々に腫れ上がってきている。
こりゃあ、かなり痛いだろう。
「何か布はあるかい?」
「え?…っと、ハンカチなら。」
そう言ってポケットから出してきたハンカチ。
ガキンチョらしい明るい色の花柄。
こんなモン持って戦ってんのか?死武専ってのは腐ってんなァ。
ブッ潰す相手がこんなじゃ、やる気失せちまうじゃねぇか。しっかりしろよ。
そのハンカチを奪い取って、川があった方へ向かう。
「あ、あのっ?!」
「そこに川があるんで、濡らして来てあげるよ。」
「すっ…すいません…。」
『ありがとう』って言うのかと思った。
それだけに、何かイラつくなァ。
川でさっきのハンカチを濡らしながら、どうにかしてアイツに『ありがとう』と言わしてやろうと考えていた。
媚びへつらうのは糞ほどやってきたが、また『すみません』になっちゃ意味が無ェ。
とりあえず戻るか。
戻ってみると、崖の壁に手を掛け無理矢理立ち上がっているアイツがいた。
「おい!」
と、声を掛けた途端、力が抜けるように座り込んだ。
「痛いんだろ?動かない方がいい。」
濡らしたハンカチを腫れた足首にそっと乗せる。
「んん…っ。」
と、冷たさと痛みを堪える声が、意外に色っぽくて驚いた。
ただのクソガキだと思ってたのになァ…。
「でも…戻らなきゃ…。」
「戻るって、この崖の上かい?」
「うん。多分、誰も気付いてないから…。」
「どういう事だ?」
話を聞くと、死武専の一クラスずつで合宿をしていて、今は自由時間だったらしい。
独りで考え事をしながら歩いていたら崖から落ちたっつぅ、マヌケなオチだった。
「自分でも、マヌケだなって思う。」
……!
苦笑いでそう言った後、急に真剣な眼差しで空を見上げる横顔。
前に戦った時より、少し大人っぽい気がする。
「私、もっと強くなりたいの。一人じゃなくて、二人でだけど。」
二人…あの魔鎌の事か?
ズキン…
何だァ…?この痛みは…
「でも、基礎体力とか筋力ももっとつく方法が無いかなって考えてたら…あのぅー…」
「…っあぁ、聞いてるよ。」
ちっ、俺の方もボ〜っとしちまった。
「…すみません、つまらない話して。」
「いや、つまらなくなんかないよ。」
手を振って否定の動作までやってやる。
つまらねェとか、そうじゃねぇよ。
俺には、一緒に強くなりてェと思った相手なんて…いたっけな?
800年分の記憶にあるのは、怒りだか憎しみだかの殺意だけだ。
ソイツも同じように、一緒に強くなりたいと思ってんのか…?
「あれ?その手袋…」
「ん?」
あァ!!しまった!!
「それ確か…人形技師特有の手袋って…。アナタ、人形技師なの?」
やっちまった…こりゃバレたか?
まぁ一応、誤魔化してみるか。
「まぁな。村のやり方が気に食わなくて飛び出してから大分経つよ。」
取って付けたような理由だなぁ、オイ。
演技力鈍っちまったんじゃねぇか?
「そうなんだ。」
信じんのかよ!まぁ、こっちとしちゃあ楽で良いケドよ。
「人形技師って、皆死武専が嫌いなんだって聞いてたから、驚いちゃった。」
その通りだ、嫌いに決まってんだろ?大体なァ俺だって好きなんて言ってねぇよ。
「これ、本当にありがとう。」
……??
手でハンカチを軽く押さえながらニッコリ笑いかけてきやがった。
素直に笑っていると言わんばかりの笑顔のくせに、手が少しピクッと震えたのは、
痛みのせいなんだろう。
その姿が、心臓の真ん中辺りを焼き焦がそうとしやがった。
コイツ…俺を誘ってんのか?
なんつぅ、冗談はシャレにもなんねェ。
会ったばかりばっかりの仮面付けた黒づくめの人形技師を誘惑するガキなんて、
この世に存在する筈無ぇだろ。
じゃあ、何で俺はこんなにコイツの笑顔が見てェんだよ?
その笑顔から、歪んだ甘い苦痛の顔に変わるのを見てみたいと思ってんだよ?
いやその前に、例えガキに誘惑されたとしても、そうなるのはオカシイだろ?
この、痛みを耐えて笑いかけてきやがる『女』を欲しいと、
何で俺は思ってんだよ?!
…糞ッタレ…
「お前のパートナーは…」
「え?」
あの鎌のガキは…
「本当にお前を必要としてるのか?」
「どういう事?」
お前とどこまでいってんだよ…
「一人で強くなりたいと思ってるんじゃないのか?」
「そんな事ないよ。」
何で即答出来んだよ…
「どうして判るんだ?」
「判るの。」
そのたった一言が、一つの言葉を俺に突き付けた。
『絆』
どこも欠ける事の無い歯車のような仲なんだと、二人で一つなんだと言われた気がした。
「そうか…。」
自分でも驚く程マヌケな音で出た声が、どうコイツに届いただろう。
全部壊したい衝動が沸き上がってくる前触れのような静けさを感じる。
そろそろイライラが来て、それから…
「うん、何ていうか…最高の友達かな!」
「…あ?」
「え?だから、最高の友達!すっごく良い奴なんだっ。」
…友達かよォ〜!!!
それならそうと最初からそう言えよォォ〜!!
誰だよさっき『絆』とかくだらねェ事ほざいてたのはよぉ!!
…俺だけどよ…
「アイツがパートナーで良かったって本当に思ってる!」
「…お前…。」
今まで見た中で一番キラキラした笑顔をしやがった…。
もしかしてコイツ、パートナーの事を好きになりかけてんじゃねェか?
それどころか、ただ気持ちに気付いてないだけか…?
…。
……。
………ブッ壊してェな。
その未完成の感情を、未完成のままでブッ壊してェ…!!!
「あの…こんな事、会ったばかりの人に頼むの悪いと思うんだけど…。」
お?コイツから頼み事してきたぞ、オイ。
早速、チャンス到来かァ?
「この上の東に真っ直ぐ行った所でキャンプしてるんで、そこにいるソウルって男の子を呼んできてもらえませんか?お願い!」
…オイオイオイィ…
歩けないと判断したら、パートナーに頼むだァ?!
ここにもっと頼りがいのある男がいるだろうがよォ!!
何でパシリの方をやらされなきゃなんねェんだよ!!
しかも、俺がそこに行ったらヤベェじゃねぇか!!
俺は、
立ち上がった。
やる事は一つ。
ガシッ!!
「え?きゃっ!」
女の腕を掴んで上に引っ張り上げ、抱きかかえた。
「あの、ちょっと?!」
「近くまで連れていってやる。」
「そんなっ、悪いよっ。」
「別に大した事じゃねェよ。軽いし。」
「…すいません。」
「そこ、謝るとこじゃねェだろォ?」
「…ありがとうっ。」
喋り方を演技し忘れてたけど気にする事なく礼を言ってきたから、
バレてないんだろう。
技使って進む訳にいかないんで、歩いて進む。
まァ、この方が都合がいいケドよ。
「ホントに大きな手袋…」
人形技師専用の手袋に、この女は軽く納まってしまう。
「お前が小さいんだよ。」
「むっ。これから大きくなるんだから…。」
「ならなくていい。」
「なっ、なった方がいいんだからなるよっ。」
ならなくていい。
この手に入って、逃げられないくらいでいい。
小鳥くらいで丁度いい。
「でも…。」
「何だよ?」
「今はこれでいいかなっ。」
「…?!」
またこの女ァ…確信犯かぁ?
そんな訳…ねぇよなァ?
もう、キャンプ場がすぐ見える所まで着ちまった。
ここに来るまで、話すというより、この女の話を一方的に聞いていた。
俺の方は何も話す訳にいかねぇし、コイツも何も聞いて来なかった。
聞いて来なかったのは、俺に興味が湧かなかったって事か?
それとも…
そっと、片足が地に着いてから降ろして、近くにあった手頃そうな太さの木を掴み、
根元辺りを蹴り飛ばして枝を出来るだけ綺麗に折り取った。
「ほらよ。これ、杖に使え。」
「ありがと。…凄くお世話になっちゃったね。」
「そう思うなら、見返りくれよ。」
なんてなァ、冗談だ。
と、言おうとした時だ。
被ってるローブを引っ張りやがって、前屈みになった瞬間。
この女の顔が近付いてきて―――
ちゅっ…
仮面越しに響くリップ音。
ゆっくり離れていく女の顔は、少しだけ頬を朱く染めていた。
「こんなんじゃ、御礼にはならないけど。」
「…ならねェよ…」
全然だ。
全然足りねぇよ。
「私、マカ=アルバーンっていうの。アナタは何て呼んだらいい?」
「俺は…」
色んな名前になってきて、候補は800年分あるっつ〜のに、気の利いた名前が浮かんでこねぇ。
と、この姿の俺を見たこの女の第一声を思い出した。
「ブー猫仮面…」
「え?」
「な、何でもねェ!」
「クスッ、ブー猫仮面ね、判った。」
聞こえてんじゃねぇかよォォォォッ!!!
「ブー猫仮面さん、また会えるかな。」
「…さぁなァ。」
この姿で会うのは、これが最後かもなァ…
「また、ここに来るから。きっと。」
…まさか、俺がここに住んでると思ってんのか?
そりゃそうか。でなきゃこんな森ん中で会うとは思わねェよな。
「そうかい。勝手にしな。」
「…ホントに来るからね。」
「判ったから早く行け。」
「うん…。」
何ガッカリした顔してんだよォ。
掠っちまうぞ、コラ。
おっと、忘れるとこだったぜェ。
「おい、ここで俺に会った事は――」
「うん、誰にも言わない。」
…やっぱりだ。
コイツ、色々考えて俺の素性を聞いてこなかったんだ。
「じゃあね、ありがとう。」
「…アァ…。」
俺の手から、小さな鳥が羽ばたいてった。
「マカ!!どうしたんだ?!」
「あ、ソウル。うん、ちょっと崖から落ちちゃって。」
「崖?!って、とにかく博士に見せに行こうぜ!」
「うん。」
「ほら、肩に掴まれ…って重っ…」
「なっ!軽いって言われたもん!」
「あ?誰にだよ。」
「…おっきな猫に。」
「何だよそれ。それにしても…杖作って一人で帰ってくるなんて、結構サバイバーだったんだな。」
「う、うん…。」
「そうだ、ハンカチ貸してくれよ、後で濡らしてくっから。」
「…あ。」
ブー猫仮面も気付く。
また彼女が来る事になる理由に。
後書き↓
何じゃこりゃああ!!
無駄に長いし、の割に抜いてる部分いっぱいだし、矛盾放置だし…
ツッコミ所満載過ぎて、書くのも怠い…
睡眠不足じゃなきゃもう少しマシに…なっていたと信じたいです…
その割に、連載なニオイぷんぷんさせてます…
ブー猫仮面、いつマカちゃん襲うのか?!
乞うご期待!…出来ない…
ギリマカ難すぃい〜!!!!
こんな駄文を読んで下さり
ありがとうございました。
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