忘れてはいけないこと 「……鬼じゃない女の子っているんですね!!」 「はい!?」 何を言い出すのかと思いきや、鬼って…。悠くんは目を輝かして私を見つめてくる。 そんなに鬼(女)が恐ろしいのか? 「感動ですっ!!」 「意味が分からないから!」 なんかズレてるよ、この人!! そして悠くんは突然立ち上がり、私の両手を掴んできた。 「なっ…!」 「これからもよろしくお願いします!!」 よろしくって…仮カップルとして? 「…こちらこそ」 そうだ、私たちは偽物のカップル。 中身のない形だけの関係。それを忘れちゃいけないんだ。 「掃除…しよっ」 私は袖をまくり、床に落ちた砂糖を手でかき集め始めた。 そして、一歩後ろに下がった瞬間── 「…い゙っだぁッ!!」 右足に尖った何かが食い込んだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |