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萌えの館。




「…すみません」

「いや、先に寝たのは僕だし…」


着いたら起こす、と自分で言っておきながら俺が寝てしまい、ついさっき起こされた。

何で寝ちまうのかなー…
成川くん達がバスでイチャラブする様子を観察しないなんてまだまだだな、俺も。


「すっっっっげーーー!!!」


一番早くバスを降りた成川くんが興奮気味な声で叫んだ。
周りの生徒もどこか浮足立つ様子だ。

そして俺もバスから降り、目の前を見上げる。


「……………確かに、すげぇとしか言えないな…」


さすが超一流。
例えるなら銀閣寺のデカイ版とでも言うのだろうか。
殿様の城みたいだ。


「うーっし、各自ペアと一緒に部屋に行けー」

「やっと二人っきりになれるな雫。嬉しいだろ」

「嬉しくねぇし!!バカか!」


あーもう、お前ら結婚しろバカ。
バカップルめ。


「とりあえず今日は6時まで自由だ。問題は起こすんじゃねぇぞーんじゃ、解散」

「やったー!」
「ね、どこ行く!?」
「買い物しよー!」


6時か…
今はちょうど昼くらいだから最初に昼飯でも食うかな。


「昼行くか?」

「そうですね、お腹減りま…」

「つーばーきーくーんっ!!」


俺が璃人さんの言葉に頷きかけた時、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。

というかすごい勢いで近付いてきてんだけど…


「久しぶりぃ椿くん!!ぁああ、イイ身体〜〜!!腰細いねぇ!!はぁはぁ…!」

「ひぃ…!!――…ッッきもいんだよぉぉおお!!!!」


変態という名の小島由虎が俺にタックルをかまし、身体中を高速で触り始める。

0.1秒で鳥肌が全身に回り、気が付けば俺は小島に背負い投げをかけていた。


小島は綺麗な放物線を描きながら近くにあった蟹の看板に突っ込んでいった。


「………………」

「……………器物損害は罪だぞ武」

「だから何で俺なんだぁ!!」




こうして、萌えの塊になるであろう新歓が始まるのだった。
























「……………何、してんだ…?」


案内された部屋はだだっ広い和室。
荷物を置いて璃人さんと昼飯を食べようと部屋を出ると何故か武と成川くんが部屋の前でスタンバっていた。


「飯、行くぞ」

「細かいコト言わねぇで行こうぜ椿、璃人!」


いやいやいや。
ペアで行動しないとマズイんじゃないか?

え、璃人?

ナチュラルに呼び捨てで呼ばれた璃人さんを見ると、にこやかに笑っている。

あ。
これはちょっと怒ってる…


「…成川くん。仮にも僕は先輩だからな?というか呼び捨てを許可した覚えは無いんだけど…?」

「え、だって俺らもう友達じゃん!」

「友達とかそれ以前に、目上の者に対する敬語は当たり前なんだよ」


まぁ確かに。
成川くんが誰かに敬語を使っている所を見た事ないな。

王道だからね。


「だめだなーもっと柔軟な考え方しねぇと!友達だから良いんだよ!な!璃人!」

「……………」


すごいや、俺ここまで言葉が通じない人間初めて見たかも。
さすが王道!

そんな俺の心情を知るよしもない成川くんは飯飯〜、と鼻歌まじりで歩き出す。
その後ろ姿を死んだ魚のような目で見つめている璃人さんの肩にポン、と手を乗せた。

力なく顔を向けた璃人さんに労りの視線を送る。


「…………できる事なら変わって欲しいよ…」


それは勘弁して下さい。






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あきゅろす。
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