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いざ新歓へ。









青い空に白い雲。
心地の良い風が俺の頬を撫でる。

絶好の行楽日和だ。


今日から俺たち明峰学園御一行は4泊5日の新歓という名の温泉旅行へと出掛けた。


俺たちは今、学園から大分離れた超一流の旅館に向かっている。
てっきり高級車で行くのかと思ったが、今回の目的はあくまでも新入生歓迎会。

飛行機の後にバスで移動だ。
育ちの良いお坊ちゃま達にバスはキツイのではないかと心配したが、意外や意外、めちゃくちゃ楽しんでいた。


「見て見て!あの看板!蟹が動いてる!」
「本当だ!アハッ!変なのー!」
「あっそこの人カッコいい!」
「ハンバーガー食べてみたいねー!」


チワワが景色を見ながらキャッキャッと騒ぐ姿はまるで女子高生のようだ。
なんて可愛らしい。

二ヤける顔を引き締め、ふと隣の列に座るチワワが目に入った。


「あんまり窓から乗り出さない方が良い」

「え、あッ…!し、東雲様…すみません…!」

「ん」


あまりにはしゃぎすぎて窓から身を乗り出していたチワワを持ち上げ、椅子に下ろさせた。
茹で蛸のように顔を真っ赤にするチワワに内心首を傾げながらも俺は自分の席へ戻る。


「…優しいんだな」

「いや…そんなことは無いと思いますけど…」


席に戻った俺にフッと微笑んだのはこの新歓でのペア、二階堂璃人さんだ。
ペアになってから何回かお話をしたが、この人は中々に苦労しているらしい。
会長達が成川くんを追いかけ始めてから仕事という仕事はしないとか。
俺はまだ会った事が無いが、生徒会書記の武村千裕ですら成川くんに依存していて全く仕事にならない、と以前俺に愚痴ってきた。

て、いうか!
いつの間に書記と仲良くなっちゃってんの成川くん!
俺の許可もなしに…!


「僕なんかとペアになって…つまんないと思うけど、仲良くしてくれな?」

「つまんないなんて、とんでもないですよ。俺の周りって濃い人間ばかりだし、璃人さんは一緒に居て心地いいです」

「それは…初めて言われたな……ありがとう」


頬を人差し指で掻きながらはにかむ。
何だこの可愛い生き物。
小春さんとはまた違う癒し系だぞ。


「ちょっと変かと思うかもしれないが…」

「?」


脳内で萌え萌えしていると璃人さんが困った顔をする。


「椿くんとは初めて会った気がしないんだ」


ちょっ…そういう口説き文句は成川くんにお願いします!
とは言っても、なんとなくだけど、俺もそんな感じがしていた。

フラグが俺に立つのはごめんだから絶対に言わないけど。


「…どこかで会いましたっけ?」

「いや……忘れてくれ。妙なことを言って悪いな」


そう言うと眠そうに欠伸をした。
きっと昨日も遅くまで仕事をしていたんだろう。


「寝てていいですよ」

「え?いや、それじゃあ椿くんが」

「着く前に起こします」

「…………………」


ニッコリと笑って促すと、無言で俺の肩へ頭を預けてきた。



え。
何この状況。
ぴしりと固まった俺はすぐそこにある璃人さんの体を起こそうとしたが、規則の良い寝息が聞こえ、出しかけた手を引っ込めた。


寝るの早っ。


「……………………まぁ、良いか」


大分お疲れの様だし、このままにしておこう。

これが成川くんだったらすかさずシャッターを押しまくっていたんだけどなぁ…

そんな事を考えながらぼんやりしていると、段々眠くなり、賑やかな声が遠のいていった。






































第3章

そうだ、温泉に行こう。









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あきゅろす。
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