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リコリス
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「あらためまして、竹河白波です。明日の朝には帰ってしまうので、少し観光させてもらおうと小太郎君に案内をお願いしていました」

「観光?そんな深く笠被ってて景色なんか見えてんのかよ」

「その辺は突っ込まないでください」



「別にお前がハゲだろーがヅラだろーが飛びぬけて変な髪型してよーが気にしてやらねーぜ、俺は。ここにこの世で一番クルクルパーな頭している奴がいるからな」

「気にしてもらわなくて結構だそれとも何?みんな高杉君に気にしてほしいと思ってんの?自意識過剰なんじゃねーの高杉君」

「黙れ腐れ天パ」

「天パ馬鹿にすんじゃねえええ!!!」



「また喧嘩が始まった!?血の気多いね君たち!?」

「ヅラじゃない桂だあああ!!」

「小太郎君、君関係ないよねそれ言いたいだけだよねッ!?そして私はハゲでもヅラでもパーでもありません!」

「てめえ今やんわり馬鹿にしただろおいッ!!」


−−−−


そして数分後。

なぜか子供三人に既に良い大人のはずの白波まで混じっての揉み合い掴み合い殴り合い蹴り合いを繰り広げた後。(殴る蹴るはしていない。殴られ蹴られはしたが)

地面に落ちて踏ん付けられた笠を拾い上げた白波は、ぐっしゃぐしゃになった髪をどうしようかと頭の片隅で思った。

白波の灰色の髪は長年の旅の傷みがたまっている。

女に生まれていたならもう少しちゃんとした手入れもしていただろうけれど、男がわざわざリンスの類に金を出すのも気色悪いと思うために、櫛を通す以上のケアはしていないのだ。



「先生もアンタも色薄いくせして、なんでこんなサラッサラなんだよ」

「きちんと毎日乾かしてから寝れば結構違うよ」



老人のような灰色の髪も、あのマイペースな先生やこの少年の影響で、この村ではそこまで珍しくも無いらしい。

実の無い適当な会話をしているうちにお互いの素性もなんとなく分かってきた気がする。



「おまえら似てるな、色だけ」

「色だけな、性格は全く違うようだが」



そんな事を言う黒髪2人。



「そうですか?銀時君の方が透明できれいだと思いますけど」

「つまり白髪って事かよ」

「なら白時君ですか」

「ちげえよなんでそうなんだよ」

「私の名前と似てますねえ」

「聞けよ」



各々好きな事を言う白髪組。(違う)



「冗談ですよ。松陽さんは一番光り輝く人になるだろうって、君の名前を付けたんでしょうね、きっと。」

「頭が一番光るのはハゲ坊主だっつーの」

「ふふ。だって、Ag――『銀』は他のどんな金属よりも一番光の反射率が高いんですよ。もちろん『金』よりも。」



「智の深いロマンチストな松陽さんなら、それぐらいの意味合いと願いをその銀色に持たせて付けているはずです、なにせ我が子の名前ですもん。きっとこう、『誰より魂が明るく輝く人になってくださいね』って」



「エイジイってなんですか」

「銀の原素記号です。」


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