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リコリス
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そんなこんなで、夜は小太郎君のお宅にお邪魔させていただき。

この季節は冬に備えてあれこれしなくてはならないからと理由をつけて、朝一に帰ろうと考えていた。

だから鶏も寝静まる明け方、隣町を目指して村の出口に立った。



そしてもう一度彼と顔を合わせたのは、数日後、京都近くに作られた空飛ぶ船の波止場でだった。



「白波さん。小太郎の家をもう出てしまったと聞いて、慌てましたよ。お土産を渡していなかったのに」

「あの時は朝早くに起こすのもどうかと思いまして」

「大変だったんですからね、関所近くへ向かう飛脚に貴方が来たら足止めしておいてくれって頼むの」

「関所で持ち物検査が長引いてるのそのせいでしたか」



つまりは空港のような場所だった。

込み合っているので荷物検査には一日かかるとか言われたために今日は宿泊の予定だったのだ。

ガラス張りの展望台に作られた食事処で休んでいたところへ現れた松陽先生には、白波は思わず大声をあげて驚いた。



騒いだところで自分たち以外の客も数えるほどしかいない食事処で追い出される訳でも無く、一度落ち着こうと白波は席に座って適当な飲み物を松陽の分も含めて注文する。

頼んだ飲み物が運ばれてくるまでの待ち時間の会話は溜息から始まった。



「おかしいとは思ったんですよ。江戸ならともかく、特に貿易もしていないそれほど込み入る筈の無い空港で荷物検査に一日時間がいるなんて」

「あれもこれも興味深い建物ですねえ。実は私、一度ここに来てみたかったんですよ」

「それが本音ですか。私が空港を使わずに歩いて帰っていたら無駄足になるだけなのに、なんだってこんなところまで追いかけてきたんだと思ったら」


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