チビ時代
今から大分昔、赤部の有名幼なじみは、まだただの可愛い仲良し三人だったそうです
客観的に見れば
【チビ時代】
ええと、まず一人目、黒川大一くんはどうだったんでしょうか
ああ、黒川くんはですね、黒川くんは本当にいい子でしたよ、そのときはみんなからだいちゃんと呼ばれて男の子にも女の子にもいっぱいお友達がいましたねー
人気者のだいちゃんは色んなお友達から遊びに誘われてましたよ
「だいちゃーん野球しよー」
「だいちゃーんドッヂしようよー」
「だいちゃーん・・・あきおくんが僕の事変な役にする・・」
幼稚園での昼寝の後の遊びの時間
寝起き一発目にくらった三人目の友達の台詞は、まだ当時五歳の黒やんにとっては結構キツかった。
「へんなやく・・?」
「あのね、みんなで動物園ごっこするんだけどあきおくんが・・「あーオレのパンダ!!!」
誰か叫びましたね、そうですね二人目はもうあいつ、あ間違えた、あの子ですね
さすがに当時はブロンドじゃなかったそうですよ
まだアキフミさんも美容師じゃなかったですしね
での今との違いは金髪か赤毛かくらいの差ですね
「うわあきおくん来た」
「おいパンダ!早く小屋にもどれ!!」
とても尋常じゃないほどに怯え自分が寝ていた布団に潜り込んで隠れる友達の様子を見て黒やんは色々思う
なぜ自分と同じ歳の坂本なんかにこんなにも怯えているのだろうか
動物園ごっこで、パンダという役はそんなにも嫌な役なんだろうか
「だいちゃーん!パンダ!パンダかえせ!」
「やめろよ・・ようちゃん嫌がってんだろ(なんかよく知らないけど)」
「なんで嫌なんだよーよういちろー!パンダは高級だぞ!」
「うん、よーちゃん、なんでそんなにパンダが嫌なの?(そもそも動物園ごっこって楽しいのだろうか・・)」
掛け布団にくるまったまま、顔も出さずに二人に質問されたようちゃんは、涙声で黒やんだけに耳打ちをする
「違うの、だいちゃん・・みんなは普通にぞうとかキリンとかなのに、僕だけ、あきおくんが「おまえはオレのパンダだって・・」」
「オレのパンダ・・?」
「あきおくんはお金もちの客で、毛皮のマットを作る為に動物園でパンダを買うってせってい・・」
うーん、この頃から黒やんの役所は変わってませんね
「だいちゃん!早くぱんだ」
「変な遊びしてんじゃねえよ!!!」
黒やんは、なんとか坂本からようちゃんを逃がす事に成功したが、もう動物園ごっこに飽きた坂本に昼やすみ中ずっとまとわり付かれる事となった
「だいちゃん、今日帰ったらだいちゃんちでたあちゃん投げて遊ぶ?」
「しないから・・オレのおとーとだっつの」
男の子は全員舎弟、気にいった子はトコトンいじめ抜く坂本のスタイルはこの頃から今までロングセラーお菓子並に変わる事は無かった
「あ!ダイちゃん!よかった!ちょっと来て欲しいの!!」
背中にズルズルと坂本を引きずりながら誘われていた野球に向う途中
黒やんは幼稚園の先生に引き止められる。
まるで、突然病人が出た飛行機の中、名医を発見した時のように待ってました!と
「せんせー?なに?」
「あのね、らんちゃんがまだお昼寝部屋から出てこないの!だいちゃんが起こしに来てくれたら起きるって言ってるから行ってあげてくれないかなあ?」
「えー・・なんでオレが」
「おねがい!だいちゃんはいいこだから!」
三人目もまったく変わってませんね、むしろ年々甘ったれ男に磨きがかかってる彼です
まだこの頃はちっちゃくて半ズボンが似合い守りがいのある姿でしたが
現在はぐんぐん成長し、立派なモデル体系でブランド服を着ては捨てる超ワガママ男です
そんな奴に変わらない調子でこの頃と同じような事を言われても全く可愛げがありません
「らーん、おきて」
先生に言いくるめられ再び昼寝部屋に戻って来た黒やんは、坂本を背中に乗せたまま、広い部屋にまだぽつんと一つ残っている黄色い毛布の固まりを揺すって名前を呼ぶ
呼ばれた毛布の中身は天パーの髪と顔の鼻までを表に出しへらっと黒やんを見て笑った
「だいちゃあん〜うふふ、もう起きてる〜」
黒やんは後悔している、この時代らんはみんなの中で一番ちっちゃくて後ろからひょこひょこ付いてくるヒヨコのような奴だったから十年後自分のはるかに背をこえるまで成長し、ゴールドカードをメンコのように扱い、毎日ケータイで話しながら授業二時間目くらいに教室に入ってくるくそガキになるなんて思いもよらなかった
分かっていれば、この時言ってやったのに、起きてんなら早く起きてこいやアホ!!!
「らん!今日だいちゃんちでたあちゃん投げて遊ぶから」
「うんいいよ〜」
「ああ、もーやだ・・」
あれから三人は同じ小学校に進み、中学は別れたが地元仲間を大切にしていたため関係性は変わらず再び高校生活を共に過ごす事になった。
三人共勉強が出来なかったという理由もあるが
「昔さあ、黒やんよくもーやだって言ってたよね〜」
「アハハハ!!言ってた!一日五回は言ってた!」
らんの家に集まり幼稚園の時のアルバムを見ていたケン坂黒らん
子供時代の自分大好きな坂らんと坂本が見たいケンはそれなりに盛り上がっていたが、今よりさらにパッチリお目目の自分の写真をあまり見られたくなかった黒やんは、話を変えたくて仕方無かった
「そんなに言ってないし・・・」
「言ってたつーの!目ウルウルさせてアーハハハハー!!」←悪魔
「てゆーか黒やん今でも言うよね!オレも聞き覚えあるし!」
「いや、ケンケン!減った方だって〜!あ〜オレまた子供の黒やんに会いた〜い!マメシバみた〜い!」
「あ!じゃあらんマメシバ飼えよ!名前はダイちゃん!アハハー!」
「ケン、久ぶりにこいつ本気で殴りたい、どうしよう
「え!?く、黒やん?(なぜオレに?)リラックス!リラックス!オレのアルバムも見る!オレの超可愛らしい時代の」
「はいはい、おまえはソルトマンだろ」
「坂本!その話はシークレット!」
「あ〜ケンケンはソルトマンだったね!アハハハ!」
「あーソルトマンね」
「えええ!?なんでらんと黒やん何か知ってる風なの!?」
「つーか赤高で知らない奴いないし」
「坂本!!!言うなって言ったじゃん!!」
あれから十二年、赤高に入学した三人は馬鹿を一匹増やして今日も相変わらずであった。
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