悪魔も喘ぐ夜 Character Episode
*
絶望した世界で、唯一綺麗なものが目の
前にあった。
手を伸ばせば触れられる場所にあった。
全てに絶望し、世界なんて滅びてしまえ
と呪った。
そんな自分の為だけに、流される涙。
ふっと心から溢れ出そうとしていた闇
が、その光に吸い込まれて軽くなる。
あの時、組み敷かれて強張った心もゆ
るりとほどけていく。
“助けて”“怖いよ”そんな言葉たち
もその涙に吸い込まれて溶けていく。
触れたかった。
癒されたかった。
抱き締めたかった。
…救われたかった。
自分に促されて階段を上りきり、目の前
に座った駆を両腕を広げて抱き締めた。
体も、心も、この清浄なあたたかいもの
で満たされたかった。
二人を隔てる体がこんなにも邪魔だと思
ったのは初めてで。
このぬくもりを守りたいと思った。
このぬくもりがあるなら、生きていけ
る。
全てに絶望せずに、全てを投げ出さず、
全てを呪わずに、生きていける。
だから叶うなら、ずっと一緒にいてほ
しい。
そのあたたかなものをもったまま。
この一瞬が永遠になればいいのに…そ
う思いながら、ずっと駆を抱きしめてい
た。
［*前］［次#］
[小説ﾅﾋﾞ|小説大賞]
無料HPエムペ！
携帯モード]
[
URL送信]
