[通常モード] [URL送信]

悪魔も喘ぐ夜
*


 居場所だけ聞くとまるで俺のことは信用

ならないみたいな言い方で電話を切ろうと

する兄貴に一言言ってやりたかったけど、

それよりも優先しなきゃならないことを思

い出して慌てて引き止めた。


「兄貴!ちょっと待って!」


『なんですか?

 さすがに僕が迎えに行くまでの身の安全

 は自分で守ってもらわないと困ります

 よ?』


 相変わらず一言多い!


 兄貴の小馬鹿にしたような口調に、心中

で苛立ちを覚えつつもここは逆らったらダ

メだというのは長年の経験から嫌と言うほ

ど知っている。


「そうじゃなくてっ…来るなら、その…着

 替え、持ってきて欲しいんだけど…。

 さすがにこのまま外には出歩けないし」


 いつの間にか着せられていたバスローブ

の端を摘んで溜息が出る。

 こんな姿を見られたら、それこそどんな

嫌味を言われるのか…考えたくもない。


『着替え…?

 まさか裸に剥かれて身動きとれないんじ

 ゃないですよね?』


 電話口の声にあからさまなトゲが混じ

る。

 でも、それも昨日の今日のことだからと

大きく深呼吸して気持ちを落ち着けた。


「違うけど、着てた服はどこにあるのかは

 わからないから…」

「…なぁ、誰と喋ってるん?」

「ひゃッ…!?」


 腰に腕が回り込み、耳に囁き声が響いた

瞬間、心臓がすくみ上って変な声が喉から

出た。

 抱き締められた体がビクッと震えて、今

の今まで微塵も空気を揺るがさなかった体

温を信じられないような目で振り返る。


『駆!?駆ッ!?返事をしなさいっ!!』


 兄貴の声が響く携帯は手の中から滑り落

ちそうで、今までベッドの中ですやすや眠

っていたはずのクロードの手の中にあっさ

り落ちた。


「あっ!携帯返せっ…!!」


 慌てて手を伸ばすが、もともと身長差が

ある上に体を捻られてしまっては届かな

い。





[*前][次#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!