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悪魔も喘ぐ夜
*


 クロードはそんな俺が見ている前で携

帯に耳をあてる。

 きっとその耳には兄貴の声が届いただろう。


「もしもし?

 誰か知らへんけど、駆を迎えにこんでえ

 えよ?

 駆は俺がこれからずっと可愛がるさかい

 な」


 ピッ


 無情なほどにあっさりクロードの指先が

通話終了のボタンを押した。

 さらに押しっぱなしにされて電源まで落

としてしまう。


「ちょ…っ!!待てよ!返せってばっ!」

「駆がちゃんと俺の話聞いてくれたら返し

 たるよ?」


 クロードが腕の力を緩めたのですかさず

振り返って携帯に手を伸ばすが、それより

高い位置にあっさり携帯を握った手を遠ざ

けてしまう。


「こんなことする奴の言う事なんか聞きた

 くない!信用できない!

 さっさっと返せってば!!」 


 手を伸ばしてもどうしても届かないの

で、意地悪く笑うクロードの胸を掌で叩き

ながら睨む。


「話を聞いてくれたら返すって言うてんの

 に…。せっかちやなぁ、駆は。

 ちょっと落ち着いて話そうや、いろんな

 事。

 ようやく二人きりになれたんやし」


 これだけ俺の気持ちを無視して何が話し

合いなのか。

 二人きりだとか言われてもちっとも嬉し

くない。

 このままだと一方的にクロードの言う言

葉を聞かされて、その言葉に全部“うん”

と言わなければきっと帰してもらえなくな

る。





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あきゅろす。
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