悪魔も喘ぐ夜
*
ほっと安堵しながら中を開いて携帯を探
すといれた場所にちゃんと入っていた。
電源を入れた途端に今まで見たこともな
い数の着信履歴がズラリ。
“お説教は明日たっぷりしてあげます。
逃げ場があると思わないことですね”
昨日兄貴に言われた言葉を思い出す。
…そりゃ言いたくなるよな、これは…。
スクロールしてもしても、まだ兄貴の名
前が並んでいる。
もうここまでくると迷惑の域になるんじ
ゃないかと思うけど、実際に危ない目に遭
っていたんだし兄貴に助けられたのも事実
だから無下にも出来ない。
〜♪
手の中で突然メロディが鳴ってビクッと
体が震えた。
とっさに通話ボタンを押してしまった
が、名前の表示はもちろん…。
『………』
電話の向こうで怒っている。
なんとなくそんな空気が漂ってくる。
「あの…兄貴?ごめん…」
おそるおそる声を出すと電話の向こうで
あからさまな溜息。
『説教してると時間が足りないので率直に
聞きます。簡潔に答えなさい。
まず、そこは何処ですか』
「えっと…確かプリンスオリエンタルホテ
ルって書いてあった、かな…」
『…そのホテル、駅前でしたね。
それで自力で帰れる状況なんですか?
いえ、いいです。迎えに行きますからロ
ビーで待っていなさい』
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