星屑の煌めき
(銀魂/銀八)散るは覚悟、落ちるは宿命
「休日出勤とかマジかよ……だりぃな、ガッコのセンセなんて慈善事業かよ」
「おはよ銀八先生。朝からそんな文句言ってんじゃねーよ、教師たるもの生徒の模範的態度でなきゃ駄目だぞー」
「おはようさんザビ子先生、お前はまたそんな前世紀の理論持ち出して……」
「同じ国語科の教師なんだからお前もそれぐらいの情熱を以てしろよ」
「だりぃな、んなもん俺に求めんじゃねーよ」
「あっはは、そーだな。────さて、コレお前んトコのクラスの提出物な。
お前居なかったから私が代わりに受け取っといた」
「おーさんきゅ。助かったわ」
「違うクラスだっつのになんで私に渡すかね、服部先生は。
日本史と国語の因果関係について一回討論したら懐かれたくさいし」
「教師って生き物を全力で謳歌してんなおめーら。よくもまあそんな熱っ苦しく生きてけるわ」
「んーとね、多分銀八先生が情熱無さ過ぎる、の間違いだと思うんだ？
高尚な理念を持って教員免許取ったんじゃねーのかよ」
「そんなもん決まってんだろ、教師って生き物が一番楽そうだったからだ」
「コイツー、なんでこんなのが先生やれんだよー」
「その台詞そのままお前に返したいわ」
「私は、ちゃんと理念を持ち合わせてますー。
学力低下の憂き目を見る現代社会に於いて高等教育の見直しや根本的にある学習システムの問題提起を浮き彫りにしたかったんだもん」
「へー、そーすか」
「テンメ、聞いといてなんだその態度」
「すげー興味なくて」
「コイツいつか殺してやる。てか私そろそろ行くわ、校長か服部先生が呼んでたら図書室に居るっつっといて」
「へいへい、行ってらっしゃーい」
◇ ◇ ◇
「うわ、夢中で資料読み耽っちゃった────……相変わらずこの学校は品揃えが良いよなぁ、マイナーな小説まであるし…………今、うげっ四時！？」
「おん？ なんだ、まだ居たのかザビ子先生」
「銀八先生。今日の当番は銀八先生だったのか」
「そゆこと。あ、因みに校長も服部先生もお呼びなかったから」
「なによりだ。さんきゅな銀八先生、じゃあ私はそろそろ退室すっかな」
「退室の前に、ソレ、片してけよ」
「へ？ ……うわぁ！！ な、なんじゃこの本の山は！？」
「いや恐らくおめーが引っ張り出して積んだ以外にないだろ」
「なん、だと……。全く気付かなかった」
「本棚にあるめぼしいヤツ片っ端から引っ張り出しといてよく言うぜ……孟子の論語か、次の小テストに？」
「おぉ、論語の小テストには丁度良い難易度だし、私が個人的に好きだから」
「現国の俺には馴染みのない世界だなぁ」
「同じ国語科でも分野が違うとなー、仕方ないっちゃね。
そんな銀八先生に私から一つ、孟子の有り難〜い言葉を贈呈しよう」
「なんだ、藪から棒に」
「まあまあ、聞いといて損はないぞ？
『人を見分けるのに、瞳ほど正直なものはない。瞳は心の邪悪をおおい隠せない。心が正しければ瞳も澄んでいる。心が歪んでいれば瞳も濁っている。相手の言うことを聞くと同時に、瞳を見れば、相手はどんなに正体を隠そうとしても、隠しきれるものではない』。
私の一番好きな言葉だよ、コレ、結構人間の本質を穿ってるんだよね」
「おま、それ俺に喧嘩売ってんのか」
「死んだ魚のよーな目ぇしたアンタは性根が腐ってるよって？
んな訳ないじゃん。私はね、銀八先生のその気怠げな眼差しがたまらなく好きなんだから。
確かにアンタは目が濁ってるけど、魂まで濁ってはいないだろ、瞳は暗く光は届かずとも辺りを照らす光に、アンタはなってんだろ」
「…………いつになく詩人だな。砂吐きそうなんだけど、なにこれやだこれ」
「賞賛の唄は有り難く素直に受け取り賜えよ」
「へいへい、有り難ーく頂戴仕りますよって」
「コイツいつか絶対殺してやる。それにしても……お腹減った〜……」
「こんな時間まで集中して資料読み耽った代償だな、ホントお疲れさん」
「解せぬ。……って、あれ？ ふんふん……銀八先生、甘い香りがする、飴かなんか食べてる？」
「生憎いまはペロリンキャンディ切らしてるが、お前嗅覚だけは鋭いよな相変わらず」
「ふんふんふんふん……イチゴ系の、なんか甘い……ホントになんも食べてないのか？ 口許から匂うぞ」
「顔が近い顔が近い。ザビ子顔が近い」
「……リップクリーム？」
「……あー、そーいやこの前坂本に誕生日プレゼントってんでイチゴの匂いしたリップクリーム貰ったわ、俺。
多分、それの匂いでしょーよ、納得したなら離れろ」
「リップクリーム……女子力たけーなオイ。昨今男性の女性化現象が増大してきてるとは聞いていたが、こんな近くでその恩恵を拝む事が出来るとはな……それに反比例し女性の男性化が急増している訳だ。
お前唇トゥルットゥルやないかぃ、私あったかい所に長時間居たもんだからホラめっちゃ乾燥してる」
「肉食系女子と草食系男子ってヤツだよな、でもアレおかしな話だよな、女子って言葉が使えるのは２２までなんだって、知ってっか？」
「私今年で女子使えなくなる。ピンチ！ ……ッてー！！ 唇キレた……痛い」
「あーあー、しゃーねーなぁ。ほらティッシュ。使えよ」
「さんきゅー……うわ、真っ赤。血だァァ！！」
「お前はどこの上様だ。ああコラ唇の皮剥くな余計血ィ出んぞコノヤロー」
「一度剥けた皮は元には戻らないんだぞー、だったら剥くしかないじゃいか」
「お前ホントに女か？ 俺のリップ塗ってやるから、ほら、顔こっち向けろ」
「ん。」
「────────……。なんで、目も閉じるんだお前」
「なんとなく。早く塗ってくれ」
「おー。(……あ、なんかヤバいかも)」
「銀八せんせぇ……？」
「────────」
「ほ？ なにか切れる様な音したけどなにがあっ……んんぅ！？ ちょ、銀八テメなにしてんだコノヤロー！！」
「なにって……リップ、塗ってやってんじゃねーか。まだ塗り足りねェな」
「や、ちょ……！？ ふっ、ぅんん……はァ、だっ、止め……んぁ……っ！？」
「ンん……やっぱ血の味するな、お前ちゃんとケアしろよ……キスが血の味って嫌すぎだから」
「いや、血の味より急に人の唇奪う方が嫌過ぎんだけど。なにしてくれてんの」
「リップ塗ってやっただけだろ、ほれ、このリップお前にやるよ、それ付けとけ」
「要らねーよ！！ これ使う度お前とキスした事思い出して死にたくなるだろ」
「ふぁー？ ノリッノリだったじゃねーか、行為の最中はそりゃも〜う可愛い〜嬌声あげてた癖によォ？」
「消えろ、そして死ね。あ、やっぱコレ片すの手伝ってから死ねよ」
「色気も情緒もねーなお前、普通こういう場合濃厚な口付けの余韻とかよォ〜……。
────蒸気した頬、生理的に流れてくる涙、半開きの唇から零れるどちらかのとも分からない唾液、頼りなく寄りかかってくる身体……みたいな」
「あってたまるか。ていうかこんな時だけ国語の教師っぽいなお前、それを普段にも活かせよその無駄な国語能力」
「そーゆーのは別ベクトルだからな」
「お前やっぱ懲戒免職されろよ」
この学校の国語の先生はちょっと駄目っぽい。
「聖なる学び舎で淫行行為をするなんて教師として示しがつかん」
「淫行って……最後まで行ってねーだろ。最後までされたかったのか？」
「セクハラで懲戒免職なお前」
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