星屑の煌めき
(無双/Empires)去年の夏凛々の橘仰ぎ待つ
「ザビ子殿。我が国もそろそろ、人事異動をするべきかと思いますが?」
「え、なにを急に……人事異動もなにも、お前には西涼の太守を任せてるじゃないか、鐘会」
「だからこそですよザビ子殿。左遷変動があって然るべきなんじゃないですか?」
「え、ちょっ、本気で意味が分からない……つまる所、西涼の太守じゃ不満っていう事か?」
「あの様に辺鄙な土地では私の才が腐ると言うもの。この英才教育の誉れ高き鐘士季に相応しき地位というものがあるでしょう」
「……ぅぇー、相変わらず厄介だなぁコイツ……ゴホン、西涼を辺鄙な土地だなんて滅多な事言うんじゃありません。
名馬の生産率は随一だし、それを収入源に我が国は潤っているんだ。
大事で貴重な収入源である西涼は英才教育の誉れ高い鍾会にしか任せられないと思ったから、わたしは貴方をその土地の太守に任命したのですよ」
「っ……な、成る程。それは確かに一理ありますね。
良いでしょう、この私に全幅の信頼を寄せる貴女の期待を裏切る訳にはいきませんからね、精々立派に務めあげてご覧に入れましょう。
────────では失礼致します、また後ほど」
「あいはい、宜しくね鍾会。────ッだああああ、アイツめんどくせぇ!!
誰だアレ引き抜いたの、わたしだ!! 馬鹿かわたしは馬鹿だわたしは!!」
「どうかしたのかい、そんなに声を荒げて。珍しい事もあるもんだ」
「……徐庶か。聞いてくれ、鍾会が無理難癖つけてくるんだ。
……出世欲があるのは良い事だけど大概だなアレは」
「ああ、あれは確かに行き過ぎてる感じは否めないな……然しまた同時に羨ましく思えるよ」
「自信家で野心的なのは、まあ確かにわたしも羨ましく思えるけど、国を背負う者としてソレらはあった方がいい。
然し身の丈に合わない野心はその身を滅ぼすと分からんのかね〜、鍾会殿は……あーもー頭痛い」
「はは、お疲れ様。……ここら辺で仕事に一区切りを、と思ったんだがどうにもそうは行かないようだ」
「ん? それってどういう────……」
「ちょっとザビ子ー! あたしの政策却下とか意味分かんないんですけどっ!?」
「────────台風が、来た」
「あれ? 軍師さんも居たの?」
「一応、俺はザビ子殿の補佐役だからね」
「ふーん、まあその辺はどうでも良いんで。あたしの政策却下の話、ちゃんと説明してよねっ」
「鮑三娘、落ち着こう。落ち着こう真面目に。どう考えても臨時徴収は駄目だから」
「なんで? アンタお金がないって喚いてたじゃん、なら手っ取り早く民から絞り取った方が早くない?」
「短絡的過ぎやしないか三娘、わたしは一応『民を第一に』を信条にしてるんだ?
そんな悪逆が上がる策実行出来ないから、常識的に考えて」
「えー? アンタそういう考え方する人だったっけぇ? 旗揚げした時はそりゃもうギラギラしてたって話じゃん」
「え、そうなのかザビ子」
「違う、違う違う!! 嘘を教えないで三娘!! その話誰に聞いたの!?」
「郭嘉からだけど?」
「……っのやろ!! 三娘、関索と一緒に南中の様子を巡察してきてもらえる?」
「え、関索と一緒にっ!? やった〜! じゃあ早速関索に伝えてくるっ! じゃあねザビ子!」
「────────嵐が、去った」
「……色々な意味で、お疲れ、ザビ子」
「この軍、大丈夫かな……わたし、君主だよね一応この国で一番偉いんだよね徐庶……」
「ええと、一応もなにも、普通に君が一番偉いんだが……」
「何故わたしはこうも部下に舐められてんのかな、なんでかな徐庶……」
「それはその、君が年端も行かない女の子だから、かな?」
「うわーん、参謀ですらわたしをバカにするー!! もうこんな軍滅んでしまえよー」
「あ、いや、俺はそういう意味で言った訳じゃ……ええと、なんて言うか」
「徐庶? いつも以上にしどろもどろだけど、どうした」
「……ええと、その…………つまり、俺は君を支える為に引き抜きに応じたんだ。
これだけは信じてほしい、なにも持たない俺が持つただ1つの誠だ」
「っ……そ、そうか……なんか調子狂うな。いつも頼りなさ気な感じなのに時たま急にシュッとするから困る……。
ありがとう徐庶。でもその賛辞を手放しで喜ぶ訳にはいかないね、もっとこう頼られるような強い武将にならなくちゃ」
「いや、君は今のままでも十分強いと思うんだけど」
「まだまだだよ。一方的に支えられるんじゃなくて、わたしも徐庶や、他の誰かを支える様にならなくちゃだよ」
「────────本当に君は。魅力的な人だよ」
「不特定多数の誰かを助ける為にわたしはこの乱世に産まれたんだよ。
なら、一刻も早く国を強く大きくしなくちゃ、だもんねっ?
その為にはまず、不穏分子というか輪を乱す不埒な大都督を誅する事から始めよう、徐庶、あの馬鹿をここに呼んで来てくれるかな?」
「ぉ、仰せのままに……今宵こそ人死にが出る」
天地開闢の綺羅星の如く
「郭嘉、自分が何故ここに呼ばれたか分かるよな?」
「それは勿論、逢瀬の為でしょう、ザビ子殿?」
「違う!! 分かってる癖に誤解を生むような事言うな!! お前の所為でわたしの婚期が遅れてんだぞきっと!」
「それはこちらとしては願ったり叶ったりですよザビ子殿、貴女と過ごせる時間が増えたという事だ」
「止めて下さい死んでしまいます。わたしは知略の人とは一緒になりません」
「えっ」
「え、どうしたの徐庶」
「い、いやなんでも……」
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