星屑の煌めき
(銀魂/銀時)降り積もる想いや雪や
「ゆーきー!! 雪だー!!」
「そうだな」
「雪降り止まぬー!!」
「そうだな」
「ふわっふわやぞー!!」
「そうだな」
「オイコラテメ、なんだそのやる気の欠片もない返答は。真っ裸にひん剥いた後雪の塊の中に突っ込んでやろうか」
「いやだって雪なんてそんな物珍しいモンじゃねーだろ」
「あぁ? 雪だぞ? 雪が降ってんねんぞ? テンション上がらねーか、普通?」
「もう雪でハシャぐような年でもねーだろ、お前も俺も」
「ばっかやろ、四季を全力で楽しむのが江戸っ子の心意気ってもんだろーが」
「それよりそこ閉めてくんない? さみーンだけど」
「あ、ごめん。────じゃなくてっ!?
雪降ってるんだよー、外出ようぜー、んでかまくら作ろうぜ、もしくは雪兎でも可っ!!」
「己れの年齢を鑑みろ、もう雪如きでハシャいで良い無邪気な年でもねーだろ、分かったらさっさとそこの戸を早く閉めろ寒い」
「…………ちぇー、つれない奴だな、お前」
「つれない奴結構。こんな雪降るクソさみー外に出てみろ、コールドスリープしてしまう」
「厚着しろよ」
「モコモコして動きづらくなるからいや」
「女子かテメーは」
「着膨れするから冬は嫌いだ」
「女子だテメーは」
「それに引き替え、コタツのなんと素晴らしい事か……」
「……確かに。コタツはあったけーな」
「だろぉ? 分かったンならさっさと襖を閉めてコタツに入れよ、お前寒いの苦手なんだろ?」
「仕方ない、銀さんが外出ないっていうなら私も出ない。
……別に、一緒に遊びたかったとかそんなんじゃねーぞ」
「はいはい、今年最初のツンデレいただきました」
「ちげーよ。……あ、ミカン食べてんの、私にもくれよ」
「んー? ほれよ」
「剥いてー」
「銀さんもう手がミカン剥きすぎて黄色くなったから自分で剥いて下さいねー」
「チ、使えねー天パだな」
「んだとゴラァ」
「ぐわぁぁぁぁミカンの皮を折り曲げるなァァァァ汁が目にいだァァァァァァ!!」
「坂田家のコタツは戦場だ、覚えておけ」
「し、死ぬかと思ったぜ……痛いよ目が痛いよ……うぅ、私もう泣いちゃいそうだ、めげちゃいそうだわ」
「勝手にめげてろしょげてろ」
「ムカッ……良いもん、銀さんにはさっき妙から貰ったハーゲンダッツ一口もあげないんだからねーっだ」
「ミカン何個食べるんださあこの銀さんが手ずから剥いてやろう!!」
「御しやすいなお前。────ハーゲンダッツ、ストロベリーとブラウニーか……。
ふむ、このチョイスを見る限り妙は最初から二人で食えって言ってたのか、女の子コエー」
「ストロベリーあんのか、ならそれ俺に寄越せ」
「あいよ。もとよりそのつもりだし。私イチゴ系好きじゃないからなー」
「この間俺のイチゴ牛乳飲んだの誰だっけな」
「ぅぐッ……!! ……いやホラあれは銀さんがあんまりにも美味そうに飲むからオイシいノカナーって思ったのでしたー」
「責任擦り付けんな。責任転嫁するな」
「ハーゲンダッツうまーい」
「話を露骨に反らすな」
「ブラウニーうまーい」
「……」
「────ごめん、なさい……」
「おし、良く言えマシタ。頭イーコイーコしてやろう」
「バカにすんなよコノヤロー!! あ、お前超手ぇあったかいな!! ちょっと手ェ貸せ、暖取る!!」
「ザビ子は本当に斜め上な反応をとるよな、銀さん時々怖いんだけど」
「コタツってさー、前は暖かいけど後ろ寒いよなー……銀さん、私の袢纏知らない?」
「知らねーな、新八辺りが去年どっかに仕舞ってたのを見た気がしない気もしない」
「新ちゃんか〜、仕方ない、帰ってきたら聞いてみよう」
「そうしとけ、下手に散らかすとアイツうるせえからよぉ」
「ふふっ、全くだな。オカンかおめーはって感じに説教たれるよな新ちゃんてば」
「甲斐性なしとか家主と雇い主に向かって言うかね、言わねーよ普通」
「銀さんは甲斐性なしだけど頼れるぞ、安心しろ、天パ」
「ミカントルネード」
「うが!!?? べっべっ、ミカンの白い筋を投げつけるな!!」
「俺の愛だ甘んじて受け入れろ」
「しょっぺーなアンタの愛」
「甘いだけじゃないんだ大人の愛は」
「どや顔うっぜ。あとなんかくっせェ、銀さんアンタ屁ェぶっ扱いた?」
「お前はほんとーに予想の斜め上を行くよな!? あと銀さんの名誉のために言っとくが俺屁ェしてねぇからな!!」
「アイス食ったらさぶくなってきたわ……銀さん銀さん、ちょっと詰めろ」
「あぁ? んだよ……このコタツ狭ェから詰めたどころで広くはならねーぞ」
「いーから」
「……? よっと……ほらよ、詰めたぞ」
「よーし、おっじゃまー!」
「……なにしてんのお前」
「銀さんの隣に無理やり座りました」
「うん見りゃ分かるよ? そーじゃなくて」
「だってさびぃんだもん」
「理由になってねーよそれ」
「銀さんなんか厚着してるからあったかそーだな〜って思ったのでしたー。
予想通り、銀さんあったかいねー! 子供体温か貴様〜」
「寄り添うな鬱陶しい、お前冷たいぞ」
「低体温症だからな」
「え、凍死するの?」
「笑顔で死ねるよ?」
「え、やだそれ怖い」
「笑顔で死ねるのよ」
「死ぬ大前提なのか」
「んふふ、銀さんの隣で笑って死ねるなら悔いはないかなー」
「お生憎様、薄気味悪い笑顔を浮かべた死体を侍らす趣味は持ってねーよ、俺ぁ」
「銀さんも道連れにして死ぬから問題ないし」
「傍迷惑極まりないなそりゃ。ほれ、ミカン剥いてやったぞ」
「あーん!!」
「…………ほれよ」
「もっふ。あいあひょー、んまいっ」
「あいあい、分かったから黙って食えよ。口の端からミカンの汁溢れてんぞ」
しんしんと静かに積もる雪の様に。
触れれば溶けてしまいそうな微妙な距離感。
つかず離れずが結局一番なのかもしれない。
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