山茶花の小説
3000HITリクエストでロスカノ その3
13年前アイオロスは、射手座の本領を発揮して男も女も当たるを幸いに関係を持った。去る者は追わず来る者は拒まずで、相手をした人数は数え切れなかった。まだ14歳とはいえ、180cmを超える逞しい体躯と持ち前の貫禄で実年齢を言い当てられる事は滅多になかったのだ。
聖域を抜け出しては町の盛り場で相手を見つくろって、いかがわしい場所にしけこんだ。
それほどまでに乱れた性生活を送っていたアイオロスなのに、なぜか双児座のサガにだけは食指を伸ばす事はなかった。むしろ親友として一緒に行動することが多いサガこそが、一番の被害者足りえたはずなのにどういうわけだか被害をまぬかれていた。
穏やかな性格、華やかな美貌どれをとっても垂涎の的であるはずなのに、アイオロスには親友以上に進もうとは思えなかった。逆に性豪として名の知れたアイオロスの傍に居る事でサガの身は他の好事家の手から守られていたといえる。
こちらを見詰める眼差し、優しい笑顔。
同じ顔、同じ眼差し、同じ唇。どう見ても同じにしか見えないのに、絶えず違和感がつきまとう。
記憶の中の笑顔とは何度重ねても重ならない。
思えば物知らずな子だった。
蛙に驚き、蝶を追いかけ、花に微笑む。
何にでも興味を示し、くるくると変わる表情。
「あれはなぁに?これは?」
なんでもかんでも不思議で仕方がないようだった。
それがどうだ。
双子座のサガは博識だった。いくら沢山本を読んだからといって、たった数年で一人の人間があれほど変われる物だろうか。
あの運命の日まで、心のどこかで疑っていた。いつも心の一部が冷めていた。だからこそ、サガの反逆をいちはやく察知する事ができたのだと思う。
アテナをお助けして命を落としたことを後悔はしていない。
それがアテナの聖闘士としての本分だろう。
ただ、もう一度だけあの子に会いたかったと思ったのだ。
意識を失う最後の瞬間に脳裏を掠めたのは、アテナのお姿でなくあの子の笑顔だったのは内緒だ。
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