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「俺は。冬至に、兄さんの代わりになってもらいたいわけじゃない。」
「ぁ、」
「俺にはちゃんと兄さんがいるし、もう仲直りもした。もう兄さんはいらない。」
冬至の瞳が揺れる。
「だから。だから、冬至の本当を教えてほしい。」
「......さくら、ば」
口元がもごもごと動く。何か言葉を探しているのか、だけれどそれはなかなかでてこない。
「お、......おれは、」
「ごめん。もう行く。また後で聞くから。」
「は............?」
「早く会長を追いかけないと。」
「は、あ、ちょっ」
後ろから聞こえてくる声を無視して、ドアに走る。
ぶつかる勢いでそれを押しやって、冬至が走ってくる前に、ドアを思いっきり閉めた。
「おいっ! 桜庭っ! お前ほんとにっ。」
「そうだよ! 俺は会長が好きなんだ!」
あれこれ考えるのはもうやめる。
会長が泣いていた。
会長が泣いていたんだ。
あの日みた夢みたいに。
嫌われたって、避けられたって。俺はそんな会長を放ってはおけない。
「じゃあちゃんと考えといてよ!」
ドア越しにそう叫んで、右、左。
左右の廊下を確認する。
だが、やはり。もう会長の姿は見えない。
いったいどこへいったのか。
無難なところと言えば生徒会室だけど、あの会長があんな顔で生徒会室に行くだろうか。ここからは渡り廊下を使わないといけないし、誰かに見られる可能性もある。
となると、生徒会室より遠い寮はないだろうし。
それならば、一体どこに。
と。
「ぁっ。」
視界の端で、何かが揺れた。
さっき風紀室へ来るときに見た大きな木。
あれはなんの木だっただろうか。
もう花は散っていて。
「会長......。」
足を動かす。走りだす。
ここで考えていても仕方ない。
早く、早く見つけ出さなければ。
この手が届くならすぐに。
彼は、泣いていたのだから。
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