8 「桜庭っ!!」 視線をドアの方へ向けたまま。 そのままの体勢で走りだそうとして、背後から聞こえた声に足をとめる。 振り返って見えた冬至の姿に、全部知っていたんだ。と、一人納得する。 だからあんな話し方をしていたんだろう。大きく声を張って、説明するみたいに。 「冬至。」 「......まだ話しは終わっていない。」 「終わったよ。俺は会長を追いかける。」 「桜庭っ!」 至近距離で睨まれる。 胸ぐらを掴まれないだけましだろうか。 まるであの時みたいだ。 冬至がこんなに本気で怒って、本気で焦っているのはあの時以来こと。 「冬至、ごめん。俺は会長を追いかける。はやく行かないと」 「駄目だといっているだろう!」 「俺はっ!!」 冬至の顔を睨み返す。 すごく久しぶりにこんな大声を出した気がする。 [*前へ][次へ#] [戻る] |