夢小説【イナイレ】
誓い(亜風炉照美24)
「理緒、今度の日曜日暇かな?」
僕は理緒にそう電話をかけてみた。
ここ一年ぐらい会ってなかったから、会いたいな、と思って。
僕は彼女のこと好きだけど、彼女はどうなんだろうか。
彼女とは10年前からの付き合いだ。
自分で言うのもなんだが、彼女とは友達以上恋人未満の関係……というものだと思う。
告白はしてないし、されていないけど、一緒に遊びに行ったり、お互いの家を行き来したり、クリスマスを一緒に過ごしたり……。
出会ってから色々話をしているうちに、いつの間にか仲良くなってね。
『ん?暇だけど。』
電話から彼女の声がする。
そういえば電話をするのも久しぶりかもしれない。
「どこか一緒に出かけないか?」
いきなり言っても駄目……かな。
『いいよ。何処行く?』
断られるかもしれない不安とは裏腹に、理緒はさらっと了解してくれた。
「理緒はどこか行きたいとこあるかい?」
『特にないけど……買い物に行きたいかなぁ。あ、でも私の買い物に付き合わすのは……。照美は行きたいとこある?』
「僕も特にないし、理緒が買い物に行きたいならそうしようか。」
『いいの?』
「あぁ。じゃあ今度の日曜日、13時に東京駅の動輪の広場待ち合わせで。」
『わかった。』
電話を切る。
理緒と会えるのが楽しみだ。
日曜日。
時計を見ると待ち合わせ時間の30分前だ。
早く着きすぎたかな。
しばらく待たないと……
「照美?」
後ろから声をかけられ、振り向くと理緒が立っていた。
会っていない一年の間にまた綺麗になった気がする。
「久しぶりだね。急に電話がかかってきてびっくりしたよ。」
理緒の弾んだ声。
「ごめん……迷惑だったかな?」
「全然!凄く嬉しかった。私も会いたかったしね。」
無邪気な笑顔で彼女はそう答えてくれた。
会いたかった……って。
「照美?どうかした?」
「あ……いや何でもないよ。行こうか。」
そう言って笑う。
考えすぎかな。
彼女の言葉にそんな深い意味はないだろう。
「うん。」
不思議そうな顔をしたが、彼女はすぐに笑顔に戻り、頷いた。
理緒と一緒に色んな店をまわる。
雑貨を見たり、服を見たり……。
楽しそうにしている彼女を見ると幸せな気持ちになる。
何と言うか……言葉にすると難しいんだけど、居場所がここにあるような感じ。
理緒は僕といて何を感じているんだろう。
何も感じていないのかもしれないけど……。
今の関係以上を求めて壊れてしまうのが怖いから、何も聞けないんだ。
買い物が終わってからは、カフェでずっと話していた。
話題は尽きず、楽しい時間は過ぎていくのが早い。
「夕食、ここで食べる?移動するのも面倒かなと……。」
「もうそんな時間か。」
外を見ると気が付けば、空は暗く、星が輝いていた。
「そうしようか。」
「照美、帰りにちょっと寄りたいところがあるんだけど……。」
早めの夕食を食べながら、おもむろに理緒がそう遠慮がちに言った。
「わかった。」
何処に行くつもりだろう……。
聞いても"行けばわかる"と答えてくれなかった。
夕食が終わり、店を出て二人で歩く。
理緒は足早に僕の前を歩き、時々振り返って僕がついてきているかを確認していた。
「理緒、そんなに心配しなくてもいなくなったりしないよ。」
「何があるかわからないから……人多いしはぐれそうだし。」
不安そうな表情を浮かべる。
無意識に僕はそう言った彼女の手を掴んだ。
「こうすれば、はぐれないですむよ。」
そうは言ったけど、我ながら大胆なことをした……。
でも理緒は笑って頷いてくれたからいいんじゃないだろうか。
手をつないでしばらく歩く。
人はまばらになってきて、最終的に人がいない静かな広場に出た。
「着いたよ。ここからの夜景、照美と見たかったんだ。」
前にある手すりの向こうには、素晴らしいと言わざるをえない景色があった。
「凄い……。綺麗だね。」
「うん。……やっぱり一緒に見ると一人で見るより綺麗に見える。」
少しの間、お互い無言で前の夜景を眺めていた。
「照美。」
「何?」
名前を呼ばれて横にいた理緒を見る。
彼女は前を向いたままどこか遠くを見つめているようだった。
「照美は私といて楽しい?」
「あぁ。楽しいし、それに落ち着く。理緒は?」
顔には出さないけれど、内心ドキドキだ。
聞いてきたのだから聞き返してもおかしくはないだろう。
「同じだよ。」
やわらかい声。
僕の心を揺らす。
「私、しばらく会わない間にわかったことがあるんだ。」
……え?
理緒はちらっと僕を見た。
「照美がいないと何だか自分がかけたような気がする。」
それって……
自惚れてもいいのだろうか。
「それでね……何て言うか……照美は私のこと、どう思っているのかなって……その、私達の関係は友達……なんだろうけど……。えーと……それ以上、恋人未満かなぁと思う時もあって……でも……恋人同士にはなれないのかな、と……。」
理緒は続ける。
「今は今で楽しいけど……やっぱり私は照美が好きだから……その……」
必死に言葉をつなげようとしている姿が可愛らしい。
「あっ!?」
思わず抱きしめていた。
理緒は抵抗することなく、大人しく僕の腕の中におさまる。
彼女も僕と同じように悩んで、想っていてくれた。
そしてそれを伝えようとしてくれた。
それに対して僕は、自分が傷つくのが怖いから、今の関係を壊すのが怖いって言い訳をして、彼女から逃げていたんだ。
そう思うと、自分がとても情けなくなった。
「ごめん……。」
「え?」
謝罪の言葉。
理緒は訳がわからず、困惑しているようだった。
「理緒、僕も同じ気持ちなんだ。だけど、自分が傷つくのが怖くて言えなくて……。」
理緒は黙って僕の言葉に耳を傾けてくれる。
「情けないよね……。君のこと、大好きなのに……逃げてたんだ。」
「いいよ、そんなこと。私だって随分逃げてたんだから。」
そう言って僕を真っ直ぐ見て、微笑んでくれた。
「それに、この続きは言ってくれるんでしょ?」
僕は頷く。
そして……
「僕と付き合ってくれませんか?」
「もちろん。」
自然と唇が重なり合った。
僕はこの瞬間に誓う。
もう逃げることはしない。
この先は絶対君を守っていくから。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!